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しおりを挟む「──っ、! そうか、エリザベート・ルドラン……! エリシャ・ルドランが接触を図る可能性がある……!」
リドルの言葉にぱっ、と表情を輝かせたマーベリックはエリザベートを利用し、エリシャを捕らえる事を決めた。
「エリシャ・ルドランが母親を助ける為に会いにくる可能性は極めて高そうだな……。その際に王城で捕らえたままでは侵入が容易では無い……。接触しやすい為、他の場所に移すか……」
他の場所。
マーベリックから放たれた言葉にアイーシャがぴくりと反応すると、唇を開いた。
「殿下、発言をしてもよろしいでしょうか?」
「ルドラン嬢? もちろんだ。何か良い案を思い付いたか?」
アイーシャの言葉にぱっ、と顔を上げたマーベリックが優しく話しかけるとアイーシャは自分の考えを告げた。
「お義母様を……ルドラン子爵邸に戻すのは、如何でしょうか? 邸内でしたら、私も……お父様も内部を把握しております。……もし可能でしたら、王城の騎士の方を派遣して下されば、お義母様の部屋の隣などに騎士様に控えて頂ければ、エリシャがやって来た時に直ぐに対応が出来るかと……」
「なるほど……。確かに邸の内部を良く知っている者がいる場所でエリザベート・ルドランを監視していた方が良いな……。だが、そうするとウィルバート殿が生きていた、と言う事が邸の使用人達に知られてしまうな。……城の諜報部隊を使用人として使おう。ルドラン子爵邸の使用人達には少しの間だけ休暇をやってくれ」
「──かしこまりました。殿下の仰る通り、邸の使用人に私が生きていた事……そして変わらぬ姿を見られてしまう事はまだ早いですね。……信用のおける使用人のみ、数人だけあの邸に残してもよろしいでしょうか?」
ウィルバートの言葉にマーベリックは頷き、「数人だけにしてくれ」と言葉を返した。
エリザベートをルドラン子爵邸に戻し、接触を図るであろうエリシャを捕らえる。
言葉にすれば端的で単純ではあるが、捕縛には恐らく骨が折れるであろう事は分かる。
マーベリックはアイーシャとウィルバートに順に視線を向け、口を開いた。
「エリシャ・ルドランは精神干渉の魔法を使用してくる可能性がある。その為、諜報部隊は干渉魔法に耐性がある程度ある者と──確か、クォンツとリドル二人はエリシャ・ルドランの信用魔法には惑わされなかったな? 二人も干渉魔法に高い耐性がある。二人も協力してもらっても良いだろうか? クラウディオ殿はユルドラーク侯爵邸にて、ユルドラーク侯爵の補佐をお願いしたい」
的確に指示を飛ばして行くマーベリックに、アイーシャ達は「かしこまりました」と返事を返すと、それぞれ動き出したのだった。
地下牢から出た後、アイーシャとウィルバート、クォンツは当面三人で行動する事となった。
闇魔法の使い手であるウィルバートの魔力が切れた時、アイーシャ一人だけでは有事の際に対応し切れない可能性がある。
その為に、単独で討伐に向かう程の力のあるクォンツをアイーシャとウィルバートに付け、リドルは後ほど諜報部隊を伴い、ルドラン子爵邸にやって来る事となった。
王城の廊下を三人で進みながら、クォンツが口を開く。
「エリザベート・ルドランだが……あの二人が脱獄する際に放っておかれた事を鑑みて、殿下はあの女は一連の騒動とは無関係だ、と結果を出した。よって邸内では監視付きの軟禁状態で解放する。……合ってるよな? アイーシャ嬢」
「ええ、クォンツ様の仰る通りです。合ってます、大丈夫です」
マーベリックは、事の次第の説明をさせる為クォンツに一時的ではあるが今回の事件の調査官の肩書きを与えた。
調査官と言う肩書きがあれば他家への滞在も可能であるし、事件の調査の為エリザベートに対する質問──尋問も可能だ。
そして、調査対象であるエリザベートに接触を図る為に近付いて来た人物を捕らえる権限を与えた。
「殿下の指示は的確で……有難いが……。それだけ責任が重い……」
「ですが、殿下は任せる事が出来ない者にはそのように過分なお役目を託さないかと。殿下に信用されているのですよ」
「それ、は……嬉しいがな……」
何の気負い無く、むしろ笑顔さえ見せてクォンツと会話をするアイーシャを、二人から一歩程後ろから眺めていたウィルバートは何とも言えない表情を浮かべていた。
娘が笑顔を浮かべているのは嬉しい。
だが、その笑顔を向けている相手が自分ではなく、クォンツと言う事が若干気に食わない。
ウィルバートは頭に被ったフードを目深に被り直して二人から視線を外した。
ウィルバートの顔を、エリザベートに見られて騒がれても困る。
十年前、数回しか顔を合わせた事は無いがエリザベートがウィルバートを覚えていて王城で騒ぎ出したら困るのだ。
その為、ウィルバートは調査官補佐と言う体でエリザベートの元へ向かう。
(──さて……あの義妹は僕の事を覚えているかどうか……アイーシャが姿を見せたらどんな反応をするか……確認しておかねば)
そうして、エリザベートが軟禁されている王城の一室に辿り着き、クォンツ、アイーシャ、ウィルバートが室内に入るなり直ぐ。
「──お前っ、! お前のせいで、私がこんな目に!!」
怒り狂った様子でエリザベートはアイーシャに向かって硝子の花瓶を投げ付けて来た。
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