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◇◆◇
ウィルバート・ルドランと言う男は、貴族男性にしては珍しくとても子煩悩で子供好きな人間だった。
領内にある孤児院に寄付をして、普通であれば当主夫人やその娘が足を運ぶ所を当主自ら足を運び、子供達の様子を眺める事が好きだった。
身重の妻が孤児院に訪れる事が出来なくなっても、誰か代わりの者をやるのではなくて自らが孤児院へ足を運び続けた。
そして、待望の子供が生まれた後は。
貴族の子供は通常乳母に任せ、子供部屋も階を分けるのが普通であるにも関わらず、二人は子育てに積極的に関わった。
ウィルバートも、妻イライアも自分の子であるアイーシャを可愛がり、乳母と一緒に手助けをしてもらいながらアイーシャに沢山の愛情をかけながら育てた。
だからこそ、自分の弟であるケネブとエリザベートの間にも女の子が生まれた時には大層喜んだ。
将来、大きくなったら従姉妹同士、遊ばせてやりたい等と思っていたのだ。
だが。
◇◆◇
ウィルバートは、今自分の目の前に居るエリシャ・ルドランに憎しみしか感じない。
弟のケネブは愛する妻を殺し。
姪のエリシャは、愛する娘アイーシャを虐げ続けて来た。
怒りや憎しみ、憎悪、嫌悪、怨嗟──。
様々な負の感情が胸中を激しく荒らしている。
ウィルバートは無意識に足元にいるエリシャを見下ろして、腕を伸ばした。
──殺してしまっても良いのでは無いだろうか。
──イライアは、あのような辛い目にあったのだから、弟が愛する娘を自分の手で。
何処か遠くから自分の名前を叫ばれているような気がするが、何処か膜を張ったかのようにそれは不明瞭で。
ウィルバートはぼうっと思考が霞がかったような不思議な感覚に陥りながらそうしてしまおうか、と考えた瞬間。
「──お父様っ!!」
「……っ、」
突然背後から自分の腕をしっかりと掴まれたと思ったら愛する娘アイーシャの声が聞こえて、ウィルバートははっと目を見開いた。
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