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しおりを挟む別室に移動したクリスタ達は、シヴァラが連れて来た魔法士の魔法で、全身を調べてもらう。
別室に移動したのは、クリスタとギルフィード、魔法士二人とマルゲルタ。
そして、拘束魔法をされたままのヒドゥリオンだ。
もし。万が一。
クリスタの子が流れてしまっていたら。
その子の父親は間違いなくヒドゥリオンだ。
彼にも聞く権利は、ある。
その為にヒドゥリオンも同席していたのだが、彼の目はじっと真っ直ぐ、クリスタを見つめ続けていた。
その瞳には熱い熱が宿っており、ギルフィードは何とも言えない感情を抱く。
(あれだけ、長い期間クリスタ様を邪険に扱ってきたくせに……。忌み者に、惚れ込んでいたくせに)
こんな風にあっさりと手のひらを返し、クリスタを見つめるヒドゥリオンにギルフィードは不快感を抱く。
「──私の方で、確認は終わりました」
「そうっ、ありがとう!」
クリスタに魔法をかけ、調べていた魔法士が確認の終了を口にする。
だが、その結果を口にするより早く、魔法士が言葉を続けた。
「確認に齟齬があってはいけませんので、もう一人の魔法士に同じように確認をしていただきます。もう暫しお待ちください、クリスタ様」
「そっ、そうよね……。分かったわ、お願いするわね」
確かに魔法士の言う言葉はもっともだ。
クリスタのこの確認結果は、今後の国を左右する。
子が望めないのであれば、後継者の選定方法を考えねばならない。
子が望めるのであれば、継承権は自ずとクリスタが産んだ子に移る。
皆がじっと緊張感に満ちた室内で待つこと、暫し。
クリスタの体をしっかりと確認した二人目の魔法士も、魔法を解除して「終わりました」と告げた。
ベッドに横になっていたクリスタは、急いで上半身を起こす。
クリスタの背に手を添えて起き上がるのを手伝っていたギルフィードの手に、クリスタの手が触れた。
クリスタは、まるで縋るようにギルフィードの手を握り、不安そうな顔をしている。
ギルフィードは、クリスタを安心させるように握られた手を優しく握り返し、クリスタの細い肩に手を回して抱き寄せた。
まるで二人はこうあるのが当然と言うように自然に体を寄せ合い、じっと魔法士の答えを待つ。
後方で待っていたマルゲルタも、ごくりと喉を鳴らした。
「クリスタ様のお体に、魔力が奪われた事を除けば、どこにも異常はございません。子を成す事も可能だと思いますよ。……それと、クリスタ様がお子様を流してしまった事実は無かったと思われます」
「私も、同意見でございます。奪われた魔力は、原因が排除されたため、自然と回復なさるでしょう。子を流してしまった事実は認められず、妊娠は可能です」
魔法士二人の言葉を聞いたクリスタの表情は、ぱっと明るく輝き。
拘束魔法で縛られたヒドゥリオンは、絶望に染まる。
「──まっ、待て! だが、クリスタを以前診た医師は……っ!」
ヒドゥリオンの言葉に、魔法士は落ち着いた口調で言葉を返す。
「治癒魔法使いか何かに調べていただいた、と聞き及んでおります。医学の知識は無いから、しっかり医学の知識のある者に再度確認してもらった方がいい、とクリスタ様は助言を」
「だっ、だが──」
「恐らくその治癒魔法使いも確証が持てなかったのでしょう。大量出血により、体内の魔力が乱れ、腹の辺りの乱れを流産と誤認したのかもしれません」
つらつらと魔法士は詳しく説明をしてくれる。
「ですが、医学知識のある私と……もう一人の魔法士の意見が一致いたしました。間違いなくクリスタ様はお子様を流されておりませんし、今後妊娠も可能です」
良かったですね、と笑顔を向けられたクリスタは、嬉しさで自分の顔を覆う。
「クリスタ様……」
「ギルっ、ギル! 私、子を授かれるって……! 私、あなたとの未来を夢見てもいいの!?」
「ええ、もちろんです。俺と一緒に国を立て直しましょう、クリスタ様」
「──ええっ、ええっ! 良かった、本当に良かったわ! これで、あなたとの子も──」
「──っ」
そこまで口にしたクリスタは、口走ってしまった言葉の恥ずかしさに、羞恥心で顔を真っ赤に染める。
ギルフィードもクリスタの言葉に、大袈裟に顔を染め、クリスタから視線を逸らした。
幸せそうに照れ笑いを浮かべるクリスタとギルフィード。
だが、この部屋でただ一人だけ、その事実に納得いっていない男がいた。
「ふっ、ふざけるな! クリスタは長年不妊だったのだぞ! 今後も子を望めるなどっ、有り得ない! 殆ど夢のような話だろう!!」
ヒドゥリオンの叫び声に、室内がしん、と静まり返る。
どこか気まずそうに彼から顔を逸らすクリスタやギルフィード。
そして、どこか憐れむような視線を自身に向ける魔法士二名に、ヒドゥリオンは訳が分からない、といった表情をする。
だが、この場でマルゲルタだけはヒドゥリオンに情け容赦なく、現実をつきつけた。
「──聞いたでしょう? クリスタは健康なのよ。……長年子が出来なかったのは、クリスタが不妊なんかじゃなくて……」
「ま、まさか──」
ちらり、とマルゲルタに視線を向けられたヒドゥリオンの顔色が真っ青に変わる。
だが、マルゲルタははっきりと言い切った。
「ヒドゥリオン元国王。あなたに問題があったって事よ。ようは、不妊はあなたって事」
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