この恋は無双

ぽめた

文字の大きさ
63 / 231
三章

SS メリークリスマス!

しおりを挟む
「二人とも、クリスマスって聞いた事あるかい?」

「ううん。なに?それ」

「あれだろ。黒い服着た爺さんに灰の袋で殴られる日」

「えっなんで?いきなり知らない人に殴られるの!?」

「それは悪い子の場合だろ。
 いい子にしていた子どもの家には、サンタクロースっていう、赤い衣装を着た白ひげのお爺さんが贈り物を届けてくれるんだって」

「そういうお祭りがあるんだね。びっくりした……
 でもどうして急にそんな話するの、ルーナ」

「うん、遠い国では今夜がちょうどクリスマスなんだって。旅の人が話してたのを聞いたんだ。
 せっかくだから、わたしたちもやろうよ。なんだか楽しそうだ」

「やるって?」

「ええとね、家の中にもみの木の鉢を置いて飾り付けをして。皆で美味しい物を食べて、ベッドの枕元に靴下を吊るして眠るんだって。
 そうやってお祝いしたら、良い子の所には、次の日の朝になると靴下に贈り物が入ってるんだ」

「……今から準備できねえだろ、そんなに」

「うーん、もみの木はこの辺に生えてないもんね。
 出来るとすればご馳走と贈り物くらいかな」

「靴下に物入れるとか俺は嫌だぞ」

「じゃあ夜に、贈り物の交換をするのはどう?
 ちょうど月に一度の市が立つ日だし」

「サークとルーナにプレゼントかあ。そういうのは楽しそう。
 ね、やってみようよ」

「……仕方ねえな……んじゃ二人分ずつ買ってくるか」

「中身は開けるまで秘密にしようね。その方がわくわくするし」

「それいいかも。じゃあ順番にお店に行こう。
 うん、僕も楽しくなってきた」

「それじゃあわたしから行ってくるね」




 それから三人で街へ出かけた僕たちは、贈り物をそれぞれ揃えて、ご馳走の材料を買ってきた。

 鶏の骨付きのもも肉が売っていたのでオーブンで焼いて。他にもサラダやカナッペを作ったり、綺麗に飾りつけたケーキも用意した。
 少しいいワインも出して、三人で乾杯する。

 普段より豪華な食卓は、確かにそれだけで浮き立つ気持ちになれた。

 楽しみにしていたプレゼントの内容は、ルーナには大きなくまのぬいぐるみと、髪に映える桃色のリボン。
 サークには赤い石のカフスと、大ぶりの金色の髪留め。
 僕は金属で出来た羽根の形の栞と、横髪を留める大きさの紫色のバレッタだ。

「プレゼントを選ぶのって、迷うけど楽しいね。
 僕は二人とも髪留めになっちゃったけど……」

「俺もタリュスには髪留めになったしいいんじゃねえの。あげたいもん考えたら偶然同じになっただけだろ」

 疲れて先に眠ってしまったルーナをベッドに連れていき、戻ってきたサークとラグを敷いた床の上に並んで座る。

 お酒を飲めるようになったので、ワインを少しずつ飲んでいたけど、意識がふわふわしてきていた。

「大丈夫か?」

「んー……うん。おいしい」

「無理すんなよ」

 可笑しそうに笑うサークから、僕は慌てて目を逸らした。
 似合うと思って髪留めをあげたのを、今更後悔する。

 長い髪を一つにまとめられるように、大きな物を選んだんだけど。さっそく使ってくれたのは、すごく嬉しいんだけど。

 高く髪を結んだサークが余りにも格好良すぎて、目のやり場に困るほどだった。
 うなじが特にまずい気がする。

「なんで目逸らすんだよ」

「え、ええと、なんのこと?」

「誤魔化すな」

 くいっと顎を掴まれて、背けた顔を戻される。

 悪戯げに笑うサークの目元も、酔っているせいでほんのりと赤く色づいていて。
 その大人の色気に僕の心臓は落ち着かなくどきどきし始める。

 すっとサークの手が僕の耳元に伸ばされた。

「やっぱこれにして正解だったな。普段隠れてる顔が良く見える」

「あ……えと、いつもより周りがよく見えるし、嬉しいんだけど。
 耳が出ちゃうから、家の中でだけ使わせてもらうね。ありがとう、サーク」

「そうしろ。これを見れるのは俺だけでいいからな」

 つい、と長い指が僕の耳たぶに触れる。

 くすぐったさに身をすくめると、また可笑しそうに笑った。

「また耳が下がってんぞ。これまじで可愛いな」

「……もう……恥ずかしいよ……」

 お酒のせいもあって、頬が熱い。

 これ以上は飲むのをやめた方がいいかな。

 そう思って空になったグラスを置きに行くために立ち上がろうとしたら、膝が立たなくてぐらりと上体が傾いた。

「あれ」

「っぶね」

 バランスが取れずに、そのままサークの腕の中に飛び込んでしまった。

「ご、ごめん!なんか、うまく、たてなくて」

「飲みすぎだな。まあ祝いの日らしいし、少しくらい羽目外してもいいんじゃねえ?」

「う、うん……そうだ、グラス割れてないかな」

「ラグの上に落ちたから大丈夫だ」

「あ、よかったぁ」

 ほっと息をついて座り直そうとするけれど、支えてくれたサークの手の力が緩まなくて戸惑う。

「……えと、サーク?」

 不思議に思って目を上げると、思っていたよりお互いの顔が近くて、またどきりと心臓が跳ねる。

「……可愛いな」

 艶を帯びた言葉に動けなくなる。

 サークは傍らに手を伸ばして、ふわりと僕の首に何かをかけた。

「……これ、リボン……?」

 それはルーナが貰っていた大きなぬいぐるみを飾っていた、赤いリボンだった。

「確か、いい子の所にはプレゼントが届くんだよな」

「う、うん……」

 それで、なんで僕にリボンをかけたんだろう。

「俺の欲しいものが届いたんだ。
 クリスマスってのも案外悪くねえ」

「あの、それって」

「んじゃあ遠慮なく貰うとするか」

 サークの金色の瞳が、まるで貪欲な獣のように光る。
 強い力で腰を引き寄せられ、空いた右手が僕の服のボタンを器用に外し始めた。

「ま、って、何してるの」

「菓子とか贈り物とか、こういうもんは包装を剥がす時が一番楽しいよな」

「それは、わかるけど」

理解わかったんなら、いいだろ?」

 愉しそうに唇に弧を描いて笑うサークは、ぐいっと僕の肩を押して体重をかけてきた。

 酔いが廻っているせいで、身体に力が入らない僕は、抵抗出来ずに床に置いていたクッションの上へと背中から倒れてしまう。

 長い腕が伸びてきて、僕の両手首を頭の上で捕まえたサークが覆い被さってくる。何度も落ちてくるキスに息が出来なくて、けれど幸せすぎて目眩がした。
 服を脱がされ、肌を撫でる大きな掌。そのいつもと違う触れ方にびくりと身体が跳ねて、甘い吐息が漏れた。

 そのまま、薄く開いた唇が胸元に近づいてきて……




「…………ぅうわ…………」

 ばちっと目を開いた僕は、一人ベッドの上で、か細い声量ながらも心からの悲鳴を上げた。

「信じられない……なに今の……!」

 上掛けを抱き込んでじたばたする。

 あれは夢だ。しかも、ものすごく恥ずかしい夢。

 ……サークの事、好きすぎてあんな夢を見たのかな……
 欲求不満、ていうんだっけ、こういうの……

 あまりにも都合のいい夢に、逆に自己嫌悪に陥る。

 ひとしきり一人で暴れた僕は、盛大にため息をついてからのろのろと起き上がり、服を着替えて自室から下の階へと降りていく。

 顔でも洗って……反省しようかな……
 勝手にあんな夢みて、ごめんねサーク……
 ちょっとだけ、夢で残念とか。
 思ってないよ。うん……

「遅ようタリュス。
 どうしたの、すごいしょんぼりして」

「あ、おはよルーナ……えと、気にしないで。
 ちょっと反省してるだけだから……」

「よくわからないけど?」

「いいから、気にしないで」

「あー……眠ぃ……珍しいな、タリュスが起きるの遅いとか」

「サークも遅よう。
 君はそろそろ生活リズムを整えた方がいいんじゃないか、もうお昼になるよ」

「……るせ。仕事してたんだ」

「全く、魔術師ギルドってのは夜中に働かせる職場なのか?
 コーヒー煎れてあげるから座りなよ」

「……ああ」

 さっきまで見ていた夢を思い返してしまい、熱くなった頬で立ち尽くす僕を、横目でサークは見つめてくる。

 そして少し気まずそうに、ふいっと顔を逸らして呟いた。

「悪かった」

 ……え?

 謝られた意味がわからずに見上げると、サークの耳が赤くなっているのに気がついた。

 そこへふわりとコーヒーのいい香りがして、カップを三人分トレイに載せて戻ってきたルーナがにこやかに告げる。

「あのさ。真面目に働いている君に、提案があるんだけど」

「……んだよ」

「二人とも、クリスマスって聞いた事あるかい?」




 ……果たして、さっき見た夢は何だったのか。

 この後、僕たちが夢の通りになって、続きを知る事が出来るかどうか。

 いい子になら、サンタクロースが教えてくれるのかもしれない。









 □□□□□□□□




 もうちょっと先の時間軸のおはなしです。

 パーティー会場は二人が住んでいる家ですね。

 タリュス君がこの世界の成人、十五歳を迎えているのでお酒を飲めています。

 大人同士なので、もう色々とOKなのです。

 まんまと我慢できなくなった、よくない大人がいましたね。後から起きてきたので、タリュス君より長く夢を堪能してきたんでしょう。

 リアル世界と同じタイミングでイベントに乗っかるとか。

 一度やってみたかったんです……!(わぁい)(へそ天)

 ありがとうございました!


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヒメ様が賊にさらわれました!

はやしかわともえ
BL
BLです。 11月のBL大賞用の作品です。 10/31に全話公開予定です。 宜しくお願いします。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)
BL
たとえ、君が覚えていなくても。たとえ、僕がすべてを忘れてしまっても。それでもまた、君に会いに行こう。きっと、きっと…… 帯刀を許された武士である弥生は宴の席で美しい面差しを持ちながら人形のようである〝ゆきや〟に出会い、彼を自分の屋敷へ引き取った。 生きる事、愛されること、あらゆる感情を教え込んだ時、雪也は弥生の屋敷から出て小さな庵に住まうことになる。 そこに集まったのは、雪也と同じ人の愛情に餓えた者たちだった。 そして彼らを見守る弥生たちにも、時代の変化は襲い掛かり……。 もう一度会いに行こう。時を超え、時代を超えて。 「男子大学生たちの愉快なルームシェア」に出てくる彼らの過去のお話です。詳しくはタグをご覧くださいませ!

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。 豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。 昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、 母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。 そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。

腐男子♥異世界転生

よしの と こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。 目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。 トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、カクヨムさん、Caitaさんでも掲載しています。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

処理中です...