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12セーレの決意
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魔導書の中にいるとはいえ、セーレの方からはレイが丸見えだった。
『──本当に可愛い。推しのレイの子供姿を見られるなんて……神さまありがとう』
思わず両手を合わせて拝んでしまうのは、元日本人だからかも知れない。
それに、魔導書を抱きしめられてるだけなのに……レイに抱きしめられてるみたいでお得感満載だ。
レイの年齢を教えてもらって、正直十三歳と聞いて驚いた。痩せすぎていたからだ。セラフィーレは華奢だが、この国の人たちは、騎士はともかく神官でも背が高い人が多かった。第一王子より歳下なのだから小柄でもおかしくはない。
それでも痩せすぎの体は、毒見係がいないせいだと思う。きっと、死ぬほどじゃないにしろ、毒を口にしたはず。それだけで胸が苦しくなる。
(誰にも頼れず、苦しくて怖かっただろうな)
第一王子は二歳上で神子も同い年の設定なので、メインの二人は十五歳で間違いない。ゲームスタートは三年後なので、それまでに準備をしないといけない。
守護者であるセラフィーレは、魔導書の力で成長が止まっていて、十八歳の姿のまま存在している。
魔導書から足まで出てしまえば、精霊のような幽霊のような存在だ。離れすぎたらさらに薄く透明になるみたいで、戻れなくなるのも怖い。魔導書を媒介にしてないと、レイ触るのは駄目みたいで少しばかり残念に思う。
(撫でたり可愛がりたい。弟って欲しかったんだよね)
『うーん。契約してレイの色を纏えるようになったんだから……レイが魔法の能力が上がればもう少し本から離れられるかもしれない。一緒に並んで出かけるとかやりたいよね。そう簡単じゃないけど』
レイの寝顔を見つめながら……これが現実なのかと、興奮が中々冷めなくて、独り言をいっぱい呟いてしまう。レイの寝息は一定のリズムで静かに聞こえてきたので、起こさないように口を閉じた。
星七は、本当に死んでしまったのだ。そして推しのレイが、存在している世界にいる。
『母さん。六花姉。寂しがらないでね。僕の願いが一つ叶っているなら、きっともう一つも神様は、叶えてくれているはずだから。幸せになってね』
僕の生まれつきの身体のせいで、父親は、母の責任だと責め立てた。そんな訳ないのに。苦労して育ててくれたのに、親孝行出来ないまま、ここに来てしまった。
『──くよくよするな。今出来ることは、レイを幸せにすること。あの神子も神官長も王妃もいる。それに……もうゲームじゃないから、やり直しなんて簡単に出来ない。きっと生命の危険だってある。レイがレイであることを、諦めないように傍にいて支える』
──こんな、いい子いないんだよ。
無能呼ばわりなんて、僕は絶対に許さない。教えて貰ってないだけだ。レイには、魔法を使う力があるんだから。
だから心に決めた。
──ねぇ。レイ。君が一人にならないように幸せになれるパートナー見つけてあげたいな。
『まだ、十三歳だもんね……生活魔法からだね。ふふLv1から頑張ろうね』
ギュッとレイの魔導書を抱きしめる力が込められた気がした。
本当に魔法が習えることを、楽しみにしてくれている。
王妃たちからは、レイがこれ以上目を付けられないようにしよう。何となく、目を瞑ると夜の闇に落ちていくような感覚になる。人ではないのだから、眠る必要はないはずなのに。酷く、疲れているのはなぜだろう?
『セラフィーレに──汚れがついたからかな。今はゆっくり休みなさい』
誰かの優しい声が聞こえて、体の中から温かい気持ちになっていく。
『はい』
深く深く青い世界に、セラフィーレは沈んでいくけれど全く怖くはない。レライエの綺麗な紺色が、セラフィーレの魔導書の色を変えた。守護者は、大切な人に触れられて力を増す。
強く護りたいと思うのは、守護者だからかな?星七の時と同じで、必要とされて、存在していいって言われたいのかもしれない。
──レイ。明日から、頑張ろうね。
『──本当に可愛い。推しのレイの子供姿を見られるなんて……神さまありがとう』
思わず両手を合わせて拝んでしまうのは、元日本人だからかも知れない。
それに、魔導書を抱きしめられてるだけなのに……レイに抱きしめられてるみたいでお得感満載だ。
レイの年齢を教えてもらって、正直十三歳と聞いて驚いた。痩せすぎていたからだ。セラフィーレは華奢だが、この国の人たちは、騎士はともかく神官でも背が高い人が多かった。第一王子より歳下なのだから小柄でもおかしくはない。
それでも痩せすぎの体は、毒見係がいないせいだと思う。きっと、死ぬほどじゃないにしろ、毒を口にしたはず。それだけで胸が苦しくなる。
(誰にも頼れず、苦しくて怖かっただろうな)
第一王子は二歳上で神子も同い年の設定なので、メインの二人は十五歳で間違いない。ゲームスタートは三年後なので、それまでに準備をしないといけない。
守護者であるセラフィーレは、魔導書の力で成長が止まっていて、十八歳の姿のまま存在している。
魔導書から足まで出てしまえば、精霊のような幽霊のような存在だ。離れすぎたらさらに薄く透明になるみたいで、戻れなくなるのも怖い。魔導書を媒介にしてないと、レイ触るのは駄目みたいで少しばかり残念に思う。
(撫でたり可愛がりたい。弟って欲しかったんだよね)
『うーん。契約してレイの色を纏えるようになったんだから……レイが魔法の能力が上がればもう少し本から離れられるかもしれない。一緒に並んで出かけるとかやりたいよね。そう簡単じゃないけど』
レイの寝顔を見つめながら……これが現実なのかと、興奮が中々冷めなくて、独り言をいっぱい呟いてしまう。レイの寝息は一定のリズムで静かに聞こえてきたので、起こさないように口を閉じた。
星七は、本当に死んでしまったのだ。そして推しのレイが、存在している世界にいる。
『母さん。六花姉。寂しがらないでね。僕の願いが一つ叶っているなら、きっともう一つも神様は、叶えてくれているはずだから。幸せになってね』
僕の生まれつきの身体のせいで、父親は、母の責任だと責め立てた。そんな訳ないのに。苦労して育ててくれたのに、親孝行出来ないまま、ここに来てしまった。
『──くよくよするな。今出来ることは、レイを幸せにすること。あの神子も神官長も王妃もいる。それに……もうゲームじゃないから、やり直しなんて簡単に出来ない。きっと生命の危険だってある。レイがレイであることを、諦めないように傍にいて支える』
──こんな、いい子いないんだよ。
無能呼ばわりなんて、僕は絶対に許さない。教えて貰ってないだけだ。レイには、魔法を使う力があるんだから。
だから心に決めた。
──ねぇ。レイ。君が一人にならないように幸せになれるパートナー見つけてあげたいな。
『まだ、十三歳だもんね……生活魔法からだね。ふふLv1から頑張ろうね』
ギュッとレイの魔導書を抱きしめる力が込められた気がした。
本当に魔法が習えることを、楽しみにしてくれている。
王妃たちからは、レイがこれ以上目を付けられないようにしよう。何となく、目を瞑ると夜の闇に落ちていくような感覚になる。人ではないのだから、眠る必要はないはずなのに。酷く、疲れているのはなぜだろう?
『セラフィーレに──汚れがついたからかな。今はゆっくり休みなさい』
誰かの優しい声が聞こえて、体の中から温かい気持ちになっていく。
『はい』
深く深く青い世界に、セラフィーレは沈んでいくけれど全く怖くはない。レライエの綺麗な紺色が、セラフィーレの魔導書の色を変えた。守護者は、大切な人に触れられて力を増す。
強く護りたいと思うのは、守護者だからかな?星七の時と同じで、必要とされて、存在していいって言われたいのかもしれない。
──レイ。明日から、頑張ろうね。
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