【完結】 魔導書の守護者は悪役王子を護りたい

Shizukuru

文字の大きさ
41 / 81

40攻略対象①

しおりを挟む
 第一王子テオドール殿下との関係は、平行線のままだ。真面目な王子は、神殿の魔導書を理解しないと、王家に伝わる魔導書を使用するのは無理だと決めつけて来た。こんな分厚い本を、ニ回も読むよりは、一度で済ませたいのに時間の無駄過ぎて嫌になる。

「ちょっと、王宮から借りてきてくれれば済む話じゃん」

 守護者ガーディアン付きの魔導書が、手に入れば読まなくていいのに。テオドールは一線を引いて距離を縮める気配がない。だいたい、悪役王子レライエが絡んで来ない。

「くそ。お邪魔虫がいないから、嫉妬しないんだろうな。でも……何で?」

 顔は二葉の顔だ。美人よりの可愛い顔で、この世界で神子として扱われる黒髪、黒目で召喚までして呼び出された存在。神官長は忙しく動いていて、神子の予言した場所に神官を浄化に向かわせている。ただ神子の魔法の能力の問題で、浄化同行は危険と判断されてしまった。テオドールと一緒に浄化に行くことを提案したが、王妃から許可が降りなかったそうだ。

 成人祝賀会で、悪役王子レライエに会ってから落ち着かない。ゲームの中では、心を開かず一匹狼みたいな悪役だったのに、ディードと現れた時は、まるで隠しキャラのような隣国の王子のような枠で身惚れた。招待した令息や令嬢が、レライエに注目している。だが、王妃派に遠慮してか、誰も声をかけることが出来ないようだ。傍にいるのは、ディードだけでこちらも攻略対象らしく、美形で視線が集まっている。

(せめてディードは、欲しいな。俺の護衛騎士に出来ないかな)

 神子とのダンスなら断らないと思ったのに、全て召喚の時のテオドールとの会話のせいだった。
 攻略対象者と上手くいかないから、守護者ガーディアン付き魔導書が手に入らないし、能力も上がらない。課金は出来ないままで、近くにいる攻略対象者では先に進めそうにない。

 なら狙いを変えるべきではないかと思うようになった頃、テオドールが頻繁に護衛を振り切り外出しているのを知った。

 誰に会っているのか気になって、追いかけると第二王子の離宮を密かに覗いている。切なそうな悔しそうな顔をする理由がわからない。

 神官達に確認を取ると、離宮に美人なメイドがいるらしい。だがメイドには会うのはそんなに難しくはないみたいなので、彼女ではないようだ。ただ結界が強過ぎて、離宮内に影が入り込むのは難しいらしく、そもそも魔法が習えず苦労するはずなのに、魔力過多の悩みも聞こえてこない。

「最初から色々おかしいんだよ」




 とりあえず日課の神殿で祈りを捧げた後、なんとなく遠回りをした先、王宮の片隅でテオドールとレライエが話をしていた。珍しいなと、思って隠れて様子を伺っていると、テオドールがレライエに食ってかかっている。

「あの人を閉じ込めているのか?」
「誰も閉じ込めていません」
「離宮から出入りしている人物で該当者がいない」
「──また、監視でも始めたのですか?第一王子殿下と関わらないと言ってるのに、そちらから絡んで来るのやめて下さい」

「そうじゃない」
「嫌な者は押し付けて、気になる者は、私から取り上げようと言うことですか?なんでも、持っているのに?こんな廃墟はなれまで、私から奪いたいのですね」

「──違う。そうじゃないんだ。レライエから奪うつもりはない」
「第一王子殿下にも、神子様や神殿に関わる方々に、私から関わる気は一切ありません。私のことを大切にしてくれる人達だけを護り、静かに暮らせたらそれでいいのです。成人したら、王国ここから彼らと共に出ていきます。心配しなくても、殿下を兄と思った事などありませんから。失礼します」

「──レライエ」
 レライエが、足早に去っていく。向こうにディードを待たせていたようで、そのまま振り返る事なく行ってしまった。



(なんだこれ)

 離宮に誰かいるのか?それも、二人の王子が気にするくらいの存在。
 もしかしたら、ゲームを邪魔をしている何かではないかと、二葉は調べることにした。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

過労死転生した悪役令息Ωは、冷徹な隣国皇帝陛下の運命の番でした~婚約破棄と断罪からのざまぁ、そして始まる激甘な溺愛生活~

水凪しおん
BL
過労死した平凡な会社員が目を覚ますと、そこは愛読していたBL小説の世界。よりにもよって、義理の家族に虐げられ、最後は婚約者に断罪される「悪役令息」リオンに転生してしまった! 「出来損ないのΩ」と罵られ、食事もろくに与えられない絶望的な日々。破滅フラグしかない運命に抗うため、前世の知識を頼りに生き延びる決意をするリオン。 そんな彼の前に現れたのは、隣国から訪れた「冷徹皇帝」カイゼル。誰もが恐れる圧倒的カリスマを持つ彼に、なぜかリオンは助けられてしまう。カイゼルに触れられた瞬間、走る甘い痺れ。それは、αとΩを引き合わせる「運命の番」の兆しだった。 「お前がいいんだ、リオン」――まっすぐな求婚、惜しみない溺愛。 孤独だった悪役令息が、運命の番である皇帝に見出され、破滅の運命を覆していく。巧妙な罠、仕組まれた断罪劇、そして華麗なるざまぁ。絶望の淵から始まる、極上の逆転シンデレラストーリー!

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

婚約破棄されて追放された僕、実は森羅万象に愛される【寵愛者】でした。冷酷なはずの公爵様から、身も心も蕩けるほど溺愛されています

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男アレンは、「魔力なし」を理由に婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡され、社交界の笑い者となる。家族からも見放され、全てを失った彼の元に舞い込んだのは、王国最強と謳われる『氷の貴公子』ルシウス公爵からの縁談だった。 「政略結婚」――そう割り切っていたアレンを待っていたのは、噂とはかけ離れたルシウスの異常なまでの甘やかしと、執着に満ちた熱い眼差しだった。 「君は私の至宝だ。誰にも傷つけさせはしない」 戸惑いながらも、その不器用で真っ直ぐな愛情に、アレンの凍てついた心は少しずつ溶かされていく。 そんな中、領地を襲った魔物の大群を前に、アレンは己に秘められた本当の力を解放する。それは、森羅万象の精霊に愛される【全属性の寵愛者】という、規格外のチート能力。 なぜ彼は、自分にこれほど執着するのか? その答えは、二人の魂を繋ぐ、遥か古代からの約束にあった――。 これは、どん底に突き落とされた心優しき少年が、魂の番である最強の騎士に見出され、世界一の愛と最強の力を手に入れる、甘く劇的なシンデレラストーリー。

白金の花嫁は将軍の希望の花

葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。 ※個人ブログにも投稿済みです。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。 魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。

前世が教師だった少年は辺境で愛される

結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。 ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。 雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。

処理中です...