【完結】 魔導書の守護者は悪役王子を護りたい

Shizukuru

文字の大きさ
65 / 81

64魔力同調③微※

しおりを挟む
 セバスにこの離宮の説明を丸投げしたレライエに手を引っ張られて、挨拶もそこそこにサロンを後にした。
 ディードとメグが手を振ってくれて、二人で何かを話しているのが少し気になるのに、レライエは止まってくれない。

「部屋に行く」
「公務に戻らなくていいの?」
「陛下からの命令に乗じてここに来たのなら、あの二人の面倒を見るのも公務の一部だ」

 ズンズンと長い足で進むから、半ば引きずられそうになる。
「レイ待って」
 ピタリと止まったレライエが、気まずそうにして、手を離し次の瞬間に立てに抱きかかえられた。
「悪い……」
 そう言って、また無言のまま進んで行く。

 部屋に着いたあとは、そっとベッドの上に運ばれたのだが、なぜか目は合わせてくれない。

「レイ? 」

 この離宮の部屋の配置は頭に入っている。どの部屋に案内させたのか、魔力の流れで分かるので、あの二人はここからは離れた部屋を案内されていた。決して嫌がらせではない。陽当たりも、窓から見える景観も良い。落ち着いた高級な家具も配置しているので、レライエなりの王太子殿下への気遣いを感じてしまう。

「素直じゃないんだから。かなり素敵な部屋だったよね」
 前世庶民の星七からするとかなり広い部屋だ。キリエが魔導書内に戻って休むにしても、そのままで居たとしても問題のない広さで、ベッドもキングサイズで大きい。繋ぎ部屋にも寝室はある。テオドール殿下の部屋に比べたら狭いかも知れないが、今の殿下は文句を言いそうな人に見えない。

 世話好きなキリエといたら、良い影響を受けるような気がする。

「──仲良くなれそう」

 キリエとテオドール殿下が……そんな意味合いだったのだけれど、ジャケットを脱いでこちらに戻ってきたレライエにいきなりキスをされた。

 長いキスには慣れてきたけれど、いつもよりずっと激しくて、体を反らしてしまう。

「ん……ぅ」
 口内を動き絡めてくる舌の性急さに追いつかなくて、体の力が抜けて行くのと同時に押し倒された。唇が離れると服を脱がされ始めて、まだ明るい陽の差す時間に羞恥の方が上回わり慌ててその手を掴んだ。

「レ、レイ? どうしたの?誰か訪ねて来るかも知れない……から」

 簡単に外された手は行き場を失う。レライエの手が止まらず、シャツの前は開かれて、両手でぎゅむっと薄いピンクの乳首を摘まれた。

「あッ……んん」

 色白で筋肉のつかない貧相な体を見られるのは、恥ずかしい。

 両方とも──弾かれ、摘まれ、そして美形の顔が薄い体に近付いて胸の先端を、甘噛みするように咥えジュッと強めに吸い付き舌で転がされる。甘い行為ではなく、急ぎ体に痕を刻み込もうとしているのか、薄い皮膚には内出血の痕が散っていく。

「いっ……たぃ」

 その声が届いたのか顔を上げたレライエと視線が合うと、ただ辛そうで何がそんな悲しい顔にさせているのかと、胸が締めつけられていく。
  両手を伸ばして頬を挟むと、少し唇を噛んで今度は視線を逸そうとする。そのまま引き寄せて胸の中に頭を抱え込み、抱きしめた。

「 レイ。何が不安なのか教えて」
「──セーレを」

 そのまま口を閉ざしてしまう。

「僕?」
「キリエにも……テオドールにも……」

 ただ黙って、背中をさすりながら言葉の続きを待っている。

「セーレを取られたくないんだ」

 さすっていた手を止め、思わずギューっとしがみつくように抱きついた。

「セーレ?」

「──全部、覚悟してレイの傍にいるのに。どうしたら……伝わるのかな……」
 起き上がりそうになるレライエを羽交締めするみたいに強く抱きつき、泣きそうになる顔を見せないよう抵抗する。

(他の人を選んだりしないよ)

「セーレ、顔が見たい」
「──嫌だ」
   グズっ……と鼻をすする音を立ててしまう。
「セーレ」

  セミのように抱きついているので、結局簡単に抱き起こされて向かい合わせで、ベッドに座る形になった。

   上手く伝えられ無い気持ちに、泣きそうになるので顔を見られたくない。慰めるどころか、逆になってきてなのに情けない。

   今度は、先程とは逆で背中を撫でられている。顔を隠そうとしていると、耳をパクっと食まれた。

「あ、ちょっと……まっ」

   舌が耳の中へと入ってきて、ぶるりと震えが来た。いやらしい水音が、脳内に直に伝わって体を離そうとしてもビクともしない。

「はぁ。あ……ん」
恥ずかしすぎる声がもれて、思わず口を手で塞ぐと、二人に隙間が出来る。

  真っ赤な顔と先程の涙目のまま、少しだけ睨み付けてみた。

「やっと顔を見せてくれた」
「レイが、僕の覚悟を信じてくれないから」
「──悪かった」

「ひ、人になれない僕が、どれだけ……不安か」
「俺も、他は失ってもセーレだけは奪われたくなくて……あの二人に嫉妬した」

  触れる指が、前髪をかきあげて顔を覗き込んできた。涙がぽろ、ぽろと溢れてこぼれ落ちていく。それを口付けて拭き取ろうとする顔は、ひどく優しい。

「愛している」
  口付けられて、温かなレライエの魔力が流れ込んできた。





 






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

過労死転生した悪役令息Ωは、冷徹な隣国皇帝陛下の運命の番でした~婚約破棄と断罪からのざまぁ、そして始まる激甘な溺愛生活~

水凪しおん
BL
過労死した平凡な会社員が目を覚ますと、そこは愛読していたBL小説の世界。よりにもよって、義理の家族に虐げられ、最後は婚約者に断罪される「悪役令息」リオンに転生してしまった! 「出来損ないのΩ」と罵られ、食事もろくに与えられない絶望的な日々。破滅フラグしかない運命に抗うため、前世の知識を頼りに生き延びる決意をするリオン。 そんな彼の前に現れたのは、隣国から訪れた「冷徹皇帝」カイゼル。誰もが恐れる圧倒的カリスマを持つ彼に、なぜかリオンは助けられてしまう。カイゼルに触れられた瞬間、走る甘い痺れ。それは、αとΩを引き合わせる「運命の番」の兆しだった。 「お前がいいんだ、リオン」――まっすぐな求婚、惜しみない溺愛。 孤独だった悪役令息が、運命の番である皇帝に見出され、破滅の運命を覆していく。巧妙な罠、仕組まれた断罪劇、そして華麗なるざまぁ。絶望の淵から始まる、極上の逆転シンデレラストーリー!

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

前世が教師だった少年は辺境で愛される

結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。 ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。 雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

婚約破棄されて追放された僕、実は森羅万象に愛される【寵愛者】でした。冷酷なはずの公爵様から、身も心も蕩けるほど溺愛されています

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男アレンは、「魔力なし」を理由に婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡され、社交界の笑い者となる。家族からも見放され、全てを失った彼の元に舞い込んだのは、王国最強と謳われる『氷の貴公子』ルシウス公爵からの縁談だった。 「政略結婚」――そう割り切っていたアレンを待っていたのは、噂とはかけ離れたルシウスの異常なまでの甘やかしと、執着に満ちた熱い眼差しだった。 「君は私の至宝だ。誰にも傷つけさせはしない」 戸惑いながらも、その不器用で真っ直ぐな愛情に、アレンの凍てついた心は少しずつ溶かされていく。 そんな中、領地を襲った魔物の大群を前に、アレンは己に秘められた本当の力を解放する。それは、森羅万象の精霊に愛される【全属性の寵愛者】という、規格外のチート能力。 なぜ彼は、自分にこれほど執着するのか? その答えは、二人の魂を繋ぐ、遥か古代からの約束にあった――。 これは、どん底に突き落とされた心優しき少年が、魂の番である最強の騎士に見出され、世界一の愛と最強の力を手に入れる、甘く劇的なシンデレラストーリー。

白金の花嫁は将軍の希望の花

葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。 ※個人ブログにも投稿済みです。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

処理中です...