【完結】 魔導書の守護者は悪役王子を護りたい

Shizukuru

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75.惹かれるのは。

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 応接室のような部屋に案内されて、それぞれがソファに腰掛ける。
 ナキア様から個室を与えられていた。その部屋と温室、テラス位しか移動をしていなかった為こんな部屋があったのかと星七も驚いた。


 まだ歩くことが出来ないので、バランスを整える為かクッションを用意してくれている。座りやすい位置にナキア様が、調節してくれた後に頭を撫でられる。その一連の流れをニコニコと見ているメイシアと、全く笑わないレイがいる。

 ──恥ずかしい。

「も、大丈夫ですから。あのにお茶とか……あ、ごめんなさい。準備も出来ないのに」

「いいよ」
 隣りに座ったナキア様が、テーブルの表面を指でトンっと叩く。

 ティーセットが用意され、色んな種類のケーキがテーブルに並んだ。

「私が、お茶をいれますね」
 そう言ってメイド姿のメイシアが、ティーポットから注いでいく。

 ふわふわと湯気が揺れて、カップを目の前に置いた後に、優しく笑いかけられた。

「あ、りがとうございます」
「無事……で良かったです」

「僕のこと……知ってるんですか?」
 その言葉にすぐに反応したのは、向かい側にいるレイだ。

「メイシア……いったい」
「レライエ様。生きているだけでも良いと、言ったではありませんか」

「だが……」

 そう言った後、レイが口をつぐむ。

 一口だけ飲んだカップをテーブルに置いたナキア様が、背もたれに背を預けてメイシアの方に視線を送った。

「メイシア、王国の浄化は終わった?」
「ナキア様……浄化は、のおかげで上手く行きました」

「そうか。今回の厄災は終わったんだな?」
「そうですね」

「なら、私にもにも、もう何も関係ないだろう?」

「関係がない? そんな訳ない!皆を救ったセーレだけ消えるとか!一人だけ犠牲になるなんて!!」

 拳を握りしめたまま、レイが大きな声を出した。悲痛な叫びを聞かされても、ナキア様は何も変わらない。

「──神子が王国にいて、王家も無事で世界が平和になった。魔導書グリモアール守護者ガーディアンも王太子を選び、皆が幸せになったんだ。何の問題がある?」

 浄化……?神子?

 分かりそうで、分からなくて。ただ、黙って話を聞くことしか出来ない。ザワつく心だけがある。

魔導書グリモアール守護者ガーディアン……って、何?

「セーレを返してください」

   綺麗な顔には、似合わない隈が出来ている。伸びた髪が無造作に後ろに結ばれていて、外見を気にする暇もなかったようにも見えた。

「元々あの子は、護る方になりたかったのだから。本望だったんじゃないかな? 魔導書は灰になり、君のセーレは消えたんだ。役目を終えたんだよ」

「ずっと探して、ここまで来たんだ」
「君たちの記憶がない。連れ出してどうする? それに、ここから出るのは無理だ」

 三人の会話に入ることが出来ない。それでも、必死なレイを見ていると、苦しくてたまらない。

「なら、ここに残ります」
「──何を馬鹿なこと」

「ここに居ます。俺は、王国にも未練なんてない。セーレを連れて帰れないのなら、ここに居させて下さい」

「だいたい……私がそれを許すと思うのか?」
「──ナキア様。星七を泣かさないで下さい」

「泣かす?」

 ナキア様が振り向くより前に、レイが星七に近寄り抱き締めた。
 ぽろぽろと落ちていく涙。何故?こんなにも苦しいのか星七には分からない。

   抱き寄せられても、嫌な気持ちにならなくて、温かな体温に身を寄せたくなっていく。

「セーレごめん。いや今は、と呼ばれているのか」

「──レ、イさん。ごめんなさい。僕は本当に貴方が言うセーレかどうかも分からない。けど……変……ですよね? 知っている気がするんです」

「変じゃない。記憶を失したとしても、きっと忘れずに心においてくれているんだ」

──でも、役目を終えたとナキア様が言っている。

魔導書は灰になったのだと。

「大丈夫だ。ここから出られないなら、俺もここに残る」

 ここは神域で、ナキア様が許すとは到底思えない。星七だけでも迷惑をかけている。

   思わず、駄目だと首を横に振った。
人がいていい所では、ないかもしれないから。


「勝手なことを」
「惹かれ合う二人を引き離すなんて無理ですよ」

「メイシア……お前まで勝手なことを。星七の回復には時間がかかる」
「回復を早めたいなら、魔力の相性のいい二人が一緒の方がいい。ナキア様も、星七が早く回復して欲しいでしょ?」

「メイシア」
「ナキア様。あれだけの魔力消失の中で、星七を助けてくれたことは感謝しかない。俺は間に合わなかったし、それでも人の恋路を邪魔するならウマニケラレテシンデシマエって……やつですわよ」
ふわりと笑う。

「メイシア……さん。やっぱり男の人?」

? 俺のことは何か、思い出したりしないか? レライエだ。レイって呼んでくれてた」

「レライエ……レイさん」
 レライエの頬に触れると、深い青の瞳が心配そうに見てくる。

 (綺麗な青。大好きな色)

「──レイ」

 惹かれてしまうのを止められず、自然と距離が近くなる。想いが溢れて、思わず顔を寄せると自然と唇が重なった。















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