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第1章
8 運命の人
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あの子が、本当にオメガだとしたら?
あの時、離れたくないと思ったのも。
しつこく、引き止めようとしたのも。
俺のだって思った事もそれなら説明がつく。
もう一度、会わないと駄目だ。
もし、ヒート中に誰かに襲われて番われたら終わってしまう。
「身分よりも、運命のオメガなら…きっと父上達も反対しないはずだ。後継ぎも上位アルファが必ず産まれてくるか、ら」
──違う。そんな理由じゃない。
俺があの子が欲しいんだ。
華奢で儚げで、何より綺麗で可愛い。照れ屋な所もいい。
甘く優しい香りが、忘れられない。
弱々しいあの子を父親や兄に変わって護ってやりたい。
「一目惚れか?俺って面喰いだったんだな」
平民でも、かまわない。
「何をぶつぶつ言ってるんですか?気持ち悪い」
すっかりその存在を忘れていた。
「レンドル……お前俺の扱い雑じゃないか?」
睨んでみたが、全く怯む様子はない。
「戻って来てから、普段美形だとか言われている…ご尊顔が百面相で面白いです」
執務室で手の動きを止めること無く口を挟んでくるのは流石だ。
「仕方がないだろう?もう一度お嬢さんと話がしたいと言ったら店主が『うちの娘に個人的に会わせる事はない!』って言って暗器をチラつかせて来たんだ」
動かすことを止めていたガラスペンをペン立てに戻す。つい頬杖をついたら、残念そうな目を向けてきた。
「口は動かしても手を止めないで下さい。私は時間通り終わらせたいのですから。父親ですよね?執拗いって思われただけで、評価最悪でしょう?女性の口説き方を勉強したらどうですか?もう諦めて下さい」
凄い速さでペンが進んでいく。
「───諦めろって、まだ始まってもないだろう?」
「始まる前に家族に嫌われたから終わりです。ほら、執務をこなして下さい」
「───嫌だ」
「何駄々こねているんですか?」
心底、残念な生き物を見ている顔だ。
「運命の人かも知れないんだ。他の誰かに取られたくないんだ」
「あのS級モンスター一家ですよ?それとも身分をばらして連れて来ますか?」
「そんなことをしたら、益々嫌われるだろうが!それじゃあ、何処ぞの貴族がオメガを監禁するようなものだろ?俺はそんな無理やりなんて嫌なんだよ」
「だとしたら、誠意を見せるしかないでしょう?初めて会ったのに印象悪すぎです。本当に中身が残念すぎますね。先ずは仕事を終わらせて下さい。それから作戦をねりましょう」
仕方ないだろう?言い寄られたことは多くても、まだ誰のことも好きになったことなんてないのだから。
期限付きなんだ。もしかしたら運命の相手かも知れない。
気持ちばかり焦っている。
こんなに、ヘタレなんて自分でも思わなかったよ。
まだ、彼らの守りが固いはずだ。
ライラを迎えに行くまで守っていて欲しい。
そればかり、考えている。
「本当に、ヘタレで残念ですね」
余計な一言をレンドルがボソリと言った。
煩い。
なら、相応しくある為に彼らより鍛えるだけだ。
あの時、離れたくないと思ったのも。
しつこく、引き止めようとしたのも。
俺のだって思った事もそれなら説明がつく。
もう一度、会わないと駄目だ。
もし、ヒート中に誰かに襲われて番われたら終わってしまう。
「身分よりも、運命のオメガなら…きっと父上達も反対しないはずだ。後継ぎも上位アルファが必ず産まれてくるか、ら」
──違う。そんな理由じゃない。
俺があの子が欲しいんだ。
華奢で儚げで、何より綺麗で可愛い。照れ屋な所もいい。
甘く優しい香りが、忘れられない。
弱々しいあの子を父親や兄に変わって護ってやりたい。
「一目惚れか?俺って面喰いだったんだな」
平民でも、かまわない。
「何をぶつぶつ言ってるんですか?気持ち悪い」
すっかりその存在を忘れていた。
「レンドル……お前俺の扱い雑じゃないか?」
睨んでみたが、全く怯む様子はない。
「戻って来てから、普段美形だとか言われている…ご尊顔が百面相で面白いです」
執務室で手の動きを止めること無く口を挟んでくるのは流石だ。
「仕方がないだろう?もう一度お嬢さんと話がしたいと言ったら店主が『うちの娘に個人的に会わせる事はない!』って言って暗器をチラつかせて来たんだ」
動かすことを止めていたガラスペンをペン立てに戻す。つい頬杖をついたら、残念そうな目を向けてきた。
「口は動かしても手を止めないで下さい。私は時間通り終わらせたいのですから。父親ですよね?執拗いって思われただけで、評価最悪でしょう?女性の口説き方を勉強したらどうですか?もう諦めて下さい」
凄い速さでペンが進んでいく。
「───諦めろって、まだ始まってもないだろう?」
「始まる前に家族に嫌われたから終わりです。ほら、執務をこなして下さい」
「───嫌だ」
「何駄々こねているんですか?」
心底、残念な生き物を見ている顔だ。
「運命の人かも知れないんだ。他の誰かに取られたくないんだ」
「あのS級モンスター一家ですよ?それとも身分をばらして連れて来ますか?」
「そんなことをしたら、益々嫌われるだろうが!それじゃあ、何処ぞの貴族がオメガを監禁するようなものだろ?俺はそんな無理やりなんて嫌なんだよ」
「だとしたら、誠意を見せるしかないでしょう?初めて会ったのに印象悪すぎです。本当に中身が残念すぎますね。先ずは仕事を終わらせて下さい。それから作戦をねりましょう」
仕方ないだろう?言い寄られたことは多くても、まだ誰のことも好きになったことなんてないのだから。
期限付きなんだ。もしかしたら運命の相手かも知れない。
気持ちばかり焦っている。
こんなに、ヘタレなんて自分でも思わなかったよ。
まだ、彼らの守りが固いはずだ。
ライラを迎えに行くまで守っていて欲しい。
そればかり、考えている。
「本当に、ヘタレで残念ですね」
余計な一言をレンドルがボソリと言った。
煩い。
なら、相応しくある為に彼らより鍛えるだけだ。
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