4 / 38
3.始まりの夢
しおりを挟む
おいらロボ之助。助っ人ロボットだからロボ之助。掃除、洗濯、犬のお散歩、何でもできるよ。空だって飛べるんだから。
おいらが生まれたのは天照市。道路が広くって、緑がたくさんあった街。高い山があって大きな川があって、立派な鉄橋がかかっていた素敵な街。小学校から大学まであって、遊園地もあったんだよ。とってもとっても良い所だったんだ。
町の真ん中にはアマテル自動車っていう大きな会社があって、町の人たちはみんなそこで働いていた。おいらを創った博士もアマテル自動車の社員だった。ロボット研究所で所長をしてたんだよ。博士はね、アマテル自動車の社長さんの幼なじみなんだって。だから好き勝手しても怒られないんだ、って博士は言ってた。ひどい話だよね。だけど、博士を嫌いだっていう人は、あんまりいなかったなあ。
そんな天照市でおいらが生まれたのは、夏のとってもとっても暑い日。
「おう、目え開けろ」
それがおいらの聞いた最初の言葉。その後ろではセミがジュワジュワ鳴いてたんだけど、そのときのおいらはセミなんて知らないから、ただうるさいなあ、って思いながら目を開けたんだ。目を開けたおいらの前には、ぼさぼさ頭でガラパン一丁の男の人がいた。あ、ぼさぼさもガラパンもそのときには知らなかった言葉なんだけどね。
その人が大邦博士。おいらの生みの親。だけどそのときのおいらには、それがわからない。何にも知らなかったんだ。
「俺が誰かわかるか」
博士がおいらに尋ねた。
「わかんない」
そう答えた。そのときのおいらには、本当にわからなかったから。だって博士って言葉も、そしてQPって名前も知らなかったんだもの。博士の隣に立っていたQPは呆れていたなあ。
「自分の創造主もわからないとは。あーあ、失敗ですか」
QPには顔がなかった。全身は青いプラスチックで覆われていて、人型はしているけど、顔の部分にはキラキラ光る電子回路が見えていた。表情は顔がないからよくわからないはずなのに、がっかりしているのはよくわかった。何でだろう。でも博士は残念がってはいなかったよ。
「いいや、成功だ」
博士は嬉しそうに、顔をくしゃくしゃにして喜んでたんだ。
「こいつの頭にゃまだ情報らしい情報は何も入れてねえ。ほぼサラッピンの状態だ。なのにこいつは、自分が何もわからねえってことを理解してやがる。数学的に言やあ、生まれつきゼロの概念を理解してんだよ。成功だ。ハートシステムは完成した」
いったい何を言ってるのか、おいらにはさっぱりわからなかったけど、嬉しそうに踊り出した博士を見てると、おいらも楽しくなってきて、一緒に踊り出したんだっけ。踊るって言葉も知らなかったけど、体が勝手に動き出しちゃったんだよね。そうそう、QPには顔がないのに、困っていたのがすっごくわかって、面白かった。
ああ、懐かしいなあ。みんなどうしているんだろう。大邦博士は、QPは。なんだか不思議な気分。もしかして今、おいらは夢を見ているんだろうか。ロボットなのに変なの。
おいらが生まれたのは天照市。道路が広くって、緑がたくさんあった街。高い山があって大きな川があって、立派な鉄橋がかかっていた素敵な街。小学校から大学まであって、遊園地もあったんだよ。とってもとっても良い所だったんだ。
町の真ん中にはアマテル自動車っていう大きな会社があって、町の人たちはみんなそこで働いていた。おいらを創った博士もアマテル自動車の社員だった。ロボット研究所で所長をしてたんだよ。博士はね、アマテル自動車の社長さんの幼なじみなんだって。だから好き勝手しても怒られないんだ、って博士は言ってた。ひどい話だよね。だけど、博士を嫌いだっていう人は、あんまりいなかったなあ。
そんな天照市でおいらが生まれたのは、夏のとってもとっても暑い日。
「おう、目え開けろ」
それがおいらの聞いた最初の言葉。その後ろではセミがジュワジュワ鳴いてたんだけど、そのときのおいらはセミなんて知らないから、ただうるさいなあ、って思いながら目を開けたんだ。目を開けたおいらの前には、ぼさぼさ頭でガラパン一丁の男の人がいた。あ、ぼさぼさもガラパンもそのときには知らなかった言葉なんだけどね。
その人が大邦博士。おいらの生みの親。だけどそのときのおいらには、それがわからない。何にも知らなかったんだ。
「俺が誰かわかるか」
博士がおいらに尋ねた。
「わかんない」
そう答えた。そのときのおいらには、本当にわからなかったから。だって博士って言葉も、そしてQPって名前も知らなかったんだもの。博士の隣に立っていたQPは呆れていたなあ。
「自分の創造主もわからないとは。あーあ、失敗ですか」
QPには顔がなかった。全身は青いプラスチックで覆われていて、人型はしているけど、顔の部分にはキラキラ光る電子回路が見えていた。表情は顔がないからよくわからないはずなのに、がっかりしているのはよくわかった。何でだろう。でも博士は残念がってはいなかったよ。
「いいや、成功だ」
博士は嬉しそうに、顔をくしゃくしゃにして喜んでたんだ。
「こいつの頭にゃまだ情報らしい情報は何も入れてねえ。ほぼサラッピンの状態だ。なのにこいつは、自分が何もわからねえってことを理解してやがる。数学的に言やあ、生まれつきゼロの概念を理解してんだよ。成功だ。ハートシステムは完成した」
いったい何を言ってるのか、おいらにはさっぱりわからなかったけど、嬉しそうに踊り出した博士を見てると、おいらも楽しくなってきて、一緒に踊り出したんだっけ。踊るって言葉も知らなかったけど、体が勝手に動き出しちゃったんだよね。そうそう、QPには顔がないのに、困っていたのがすっごくわかって、面白かった。
ああ、懐かしいなあ。みんなどうしているんだろう。大邦博士は、QPは。なんだか不思議な気分。もしかして今、おいらは夢を見ているんだろうか。ロボットなのに変なの。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる