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第2話 食事
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伸比のび田の初出勤日。
タキシードに身を包んだのび田がダイニングルームを訪れると、既にシェフとそのアシスタントたちが待機していた。
「おはようございます!」
シェフが頭を下げると同時に、他のアシスタントたちも頭を下げた。
「え、あ……。おはよう、ございます」
人から頭を下げられる状況に慣れていないのび田は、困り気味に挨拶を返した。
のび田の仕事は食事管理。
つまり、シェフたちに指示を出す立場である。
シェフは、城へ来たばかりののび田に対し、明確な上下関係を示してみせた。
つまりは、言外の「遠慮せずに指示をしてくれ」という意思表示である。
「来ましたわね!」
また、ダイニングテーブルには鳳凰院向晴と烏川兆老の姿もあった。
本来であれば、向晴は食事の準備ができてから、ダイニングルームに訪れる。
しかし今日は、のび田の実力を見るために、あえて食事ができる前に到着していた。
のび田はシェフたちの行動を思い返し、ハッとした表情で向晴に頭を下げる。
「おはようございます!」
しかし向晴は、のび田の行動を諫めるように、手をひらひらと振った。
「そういうかたっくるしいのはいいわ」
「じゃあ……。こはれちゃん、おっはー!」
「砕け過ぎじゃない!? 却下!」
向晴の視線が、自然と兆老へと向かう。
本当にこんな奴で大丈夫かと、視線で問いかける。
兆老は、向晴の視線に気づき、すぐに微笑んだ。
兆老にとって、向晴の意図を察するのは朝飯前だ。
「お嬢様、ご安心ください」
「爺や……!」
「おしっこ、漏れそうなのでしょう? どうぞ、私たちに気にせず行ってください」
「違うわよ!」
「お嬢様がお花をお摘みになられる! 誰か、扉をあけておいてくれ!」
「違うって言ってるわよね!? お花摘みどころか爺やの首を摘みたくなりましたわ!?」
ダイニングルームの扉が、ぎいっと開かれる。
扉の目の前には、のび田が立っており、兆老に向けて親指を立てる。
「開けておきました」
「おお、さすが私が見つけた優秀な執事! さ、お嬢様。遠慮なくご退室ください」
「だから違うって言ってますわよね!? 耳に耳栓でもいれてらっしゃるのかしらあああああ!?」
「あ、寝る時にいつもつけている耳栓を外し忘れていました。どうりで、誰の声も聞こえないと思いました。で、お嬢様、何かおっしゃいましたか?」
「本当に耳栓をいれてるやつがあるかあああ!!」
向晴はのび田を自身の近くに呼び寄せ、真剣な視線をぶつける。
「それでは見せてもらおうかしら。私を飽きさせない料理を」
「……! わかりました」
向晴の刃物のような言葉に、のび田ははっきりとした声で答える。
向晴は、のび田の雇い主として、その有用性を図る義務がある。
そして、もしものび田が使い物にならなかった場合、その首を容赦なく切り飛ばす義務も。
向晴は一城の主として、のび田の見極めを始めた。
「……ちなみに、できればキャビア、トリュフ、フォアグラはやめていただきたいですわ」
「いや、使わないですよ。キャビア、トリュフ、フォアグラを主食にする馬鹿なんて、初めて見ましたもん」
「そう、それなら安し……今馬鹿とおっしゃいまして?」
「安心してください。言ってませんよ」
「明らかに言ってましたよね!?」
のび田は大きく深呼吸をし、シェフたちの方を向く。
シェフは準備万端だと言わんばかりの表情で、のび田に対して一度頷く。
「さあ、どんな料理でも作りましょう! 伸比様、さっそくご指示を!」
「じゃあ、誰か運転できる人います?」
「もちろんです! 私は普通自動車第一種免許を持って……え?」
レシピを提示する訳でもない、食材があるかを確認する訳でもない、のび田からの要求に、シェフは首を傾げた。
が、聡明なシェフは、次の瞬間に理解した。
「なるほど、買い出しですね! 伸比様は、一般家庭にはまず常備されていない食材をご所望と言うことですね?」
「違います」
「ふふ、安心してください。この鳳凰院家のキッチンには、ありとあらゆる食材が揃っております! 牛肉豚肉鶏肉は当たり前、イノシシ肉やダチョウ肉と言ったジビエまで。もちろん調味料も、塩コショウから海外のスパイスまで。伸比様の欲しい食材も、きっと揃えておりま……え?」
「違います」
のび田はくるりと兆老の方を向き、先程と同じ質問をする。
「執事長は、運転ができますか?」
「もちろんです。普通自動車第二種免許も持っております」
「では、運転をお願いします。ぼくは、似顔絵検定六級しか持っておりませんので」
「どうしてその資格を取ったのかなあ!?」
兆老は車の鍵をとりに向かい、のび田もその後ろをついていく。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!?」
向晴は即座に立ちあがり、それを引き止めた。
向晴もシェフと同様に、事情がさっぱり呑み込めていない。
「運転って、どこへ行くつもりなんですの? シェフの言った通り、食材ならキッチンにたくさん」
「え、料理しないですよ?」
「ほえ?」
「今からお嬢様を、飲食店へとお連れします」
のび田の言葉を聞いた向晴はポカンとした表情を浮かべた後、大きなため息をついて落ちるように着席した。
ダイニングテーブルに肘をつき、肘枕で頭を支える。
目を瞑ってもう一度静かに溜息をつき、呆れた表情で目を開く。
「この私を、飲食店へ?」
「はい」
「……庶民と同じ物を食べろと?」
「その通りです。確かにお嬢様は、キャビア、トリュフ、フォアグラしか食べない舌が馬鹿な方ですが」
「そうよ。私は、キャビア、トリュフ、フォアグラしか食べない舌が馬鹿な……おいこら、そこになおれやゴラァ!」
「失礼、言い間違えました。確かにお嬢様は、庶民的なものはお嫌いでしょう」
「おいこら、どう間違えたら舌が馬鹿に言い間違えるんだよ。話進める前に私の質問に答えろや」
「しかし私は、高貴なお嬢様にも完璧にご満足いただける飲食店を紹介できる自信があります!」
「……へえ?」
向晴は説明を求め、兆老の方を向く。
兆老は向晴の方へと向き直り、背筋を伸ばす。
「彼の言っていることに、嘘はありません。私の知る限り、彼ほど飲食店に詳しい人間は存在しません」
「へえ。何を根拠に?」
「彼は、外食が好きすぎるあまり、一日最低五回の外食をしています。そして、食費で家計を圧迫し、借金をした消費者金融の数はなんと十社!」
「ただの馬鹿じゃないの!?」
「借金を返すために毎日バイトをするも、返済に充てるより早く食費で消え、なんとついに先日、家賃未払いで住んでいたアパートを追い出された猛者です!」
「お金を使う優先順位間違ってますよね!?」
「そんな彼だからこそ、飲食店の知識は膨大です! お嬢様を飽きさせず、お嬢様の馬鹿舌にあう料理を提供する飲食店も、きっと知っております!」
「そこまで言うなら安し……おいこら今馬鹿舌って言ったか?」
「ほっほっほ。安心してください。言ってませんよ?」
「二番煎じぃ!」
のび田の過去を知った向晴は、改めてのび田を見る。
のび田は、ぐっと親指を立てた。
「ま、そういうことです」
「ああ、うん。貴方がすごいのはわかりましたわ。色んな意味で」
向晴は頬をポリポリと掻き、ゆっくりと立ち上がる。
「ま、体験もせず文句を言うのは違いますね。いいでしょう。そこまで言うのならば、貴方のお勧めする飲食店の料理、しかと私が食べて差し上げましょう。案内なさい」
「よろこんで」
向晴とのび田は、颯爽とダイニングルームを出ていく。
兆老も自動車の準備をするため、速足で出ていく。
残されたのは、シェフたち。
「あれ? 私たち、いらない?」
タキシードに身を包んだのび田がダイニングルームを訪れると、既にシェフとそのアシスタントたちが待機していた。
「おはようございます!」
シェフが頭を下げると同時に、他のアシスタントたちも頭を下げた。
「え、あ……。おはよう、ございます」
人から頭を下げられる状況に慣れていないのび田は、困り気味に挨拶を返した。
のび田の仕事は食事管理。
つまり、シェフたちに指示を出す立場である。
シェフは、城へ来たばかりののび田に対し、明確な上下関係を示してみせた。
つまりは、言外の「遠慮せずに指示をしてくれ」という意思表示である。
「来ましたわね!」
また、ダイニングテーブルには鳳凰院向晴と烏川兆老の姿もあった。
本来であれば、向晴は食事の準備ができてから、ダイニングルームに訪れる。
しかし今日は、のび田の実力を見るために、あえて食事ができる前に到着していた。
のび田はシェフたちの行動を思い返し、ハッとした表情で向晴に頭を下げる。
「おはようございます!」
しかし向晴は、のび田の行動を諫めるように、手をひらひらと振った。
「そういうかたっくるしいのはいいわ」
「じゃあ……。こはれちゃん、おっはー!」
「砕け過ぎじゃない!? 却下!」
向晴の視線が、自然と兆老へと向かう。
本当にこんな奴で大丈夫かと、視線で問いかける。
兆老は、向晴の視線に気づき、すぐに微笑んだ。
兆老にとって、向晴の意図を察するのは朝飯前だ。
「お嬢様、ご安心ください」
「爺や……!」
「おしっこ、漏れそうなのでしょう? どうぞ、私たちに気にせず行ってください」
「違うわよ!」
「お嬢様がお花をお摘みになられる! 誰か、扉をあけておいてくれ!」
「違うって言ってるわよね!? お花摘みどころか爺やの首を摘みたくなりましたわ!?」
ダイニングルームの扉が、ぎいっと開かれる。
扉の目の前には、のび田が立っており、兆老に向けて親指を立てる。
「開けておきました」
「おお、さすが私が見つけた優秀な執事! さ、お嬢様。遠慮なくご退室ください」
「だから違うって言ってますわよね!? 耳に耳栓でもいれてらっしゃるのかしらあああああ!?」
「あ、寝る時にいつもつけている耳栓を外し忘れていました。どうりで、誰の声も聞こえないと思いました。で、お嬢様、何かおっしゃいましたか?」
「本当に耳栓をいれてるやつがあるかあああ!!」
向晴はのび田を自身の近くに呼び寄せ、真剣な視線をぶつける。
「それでは見せてもらおうかしら。私を飽きさせない料理を」
「……! わかりました」
向晴の刃物のような言葉に、のび田ははっきりとした声で答える。
向晴は、のび田の雇い主として、その有用性を図る義務がある。
そして、もしものび田が使い物にならなかった場合、その首を容赦なく切り飛ばす義務も。
向晴は一城の主として、のび田の見極めを始めた。
「……ちなみに、できればキャビア、トリュフ、フォアグラはやめていただきたいですわ」
「いや、使わないですよ。キャビア、トリュフ、フォアグラを主食にする馬鹿なんて、初めて見ましたもん」
「そう、それなら安し……今馬鹿とおっしゃいまして?」
「安心してください。言ってませんよ」
「明らかに言ってましたよね!?」
のび田は大きく深呼吸をし、シェフたちの方を向く。
シェフは準備万端だと言わんばかりの表情で、のび田に対して一度頷く。
「さあ、どんな料理でも作りましょう! 伸比様、さっそくご指示を!」
「じゃあ、誰か運転できる人います?」
「もちろんです! 私は普通自動車第一種免許を持って……え?」
レシピを提示する訳でもない、食材があるかを確認する訳でもない、のび田からの要求に、シェフは首を傾げた。
が、聡明なシェフは、次の瞬間に理解した。
「なるほど、買い出しですね! 伸比様は、一般家庭にはまず常備されていない食材をご所望と言うことですね?」
「違います」
「ふふ、安心してください。この鳳凰院家のキッチンには、ありとあらゆる食材が揃っております! 牛肉豚肉鶏肉は当たり前、イノシシ肉やダチョウ肉と言ったジビエまで。もちろん調味料も、塩コショウから海外のスパイスまで。伸比様の欲しい食材も、きっと揃えておりま……え?」
「違います」
のび田はくるりと兆老の方を向き、先程と同じ質問をする。
「執事長は、運転ができますか?」
「もちろんです。普通自動車第二種免許も持っております」
「では、運転をお願いします。ぼくは、似顔絵検定六級しか持っておりませんので」
「どうしてその資格を取ったのかなあ!?」
兆老は車の鍵をとりに向かい、のび田もその後ろをついていく。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!?」
向晴は即座に立ちあがり、それを引き止めた。
向晴もシェフと同様に、事情がさっぱり呑み込めていない。
「運転って、どこへ行くつもりなんですの? シェフの言った通り、食材ならキッチンにたくさん」
「え、料理しないですよ?」
「ほえ?」
「今からお嬢様を、飲食店へとお連れします」
のび田の言葉を聞いた向晴はポカンとした表情を浮かべた後、大きなため息をついて落ちるように着席した。
ダイニングテーブルに肘をつき、肘枕で頭を支える。
目を瞑ってもう一度静かに溜息をつき、呆れた表情で目を開く。
「この私を、飲食店へ?」
「はい」
「……庶民と同じ物を食べろと?」
「その通りです。確かにお嬢様は、キャビア、トリュフ、フォアグラしか食べない舌が馬鹿な方ですが」
「そうよ。私は、キャビア、トリュフ、フォアグラしか食べない舌が馬鹿な……おいこら、そこになおれやゴラァ!」
「失礼、言い間違えました。確かにお嬢様は、庶民的なものはお嫌いでしょう」
「おいこら、どう間違えたら舌が馬鹿に言い間違えるんだよ。話進める前に私の質問に答えろや」
「しかし私は、高貴なお嬢様にも完璧にご満足いただける飲食店を紹介できる自信があります!」
「……へえ?」
向晴は説明を求め、兆老の方を向く。
兆老は向晴の方へと向き直り、背筋を伸ばす。
「彼の言っていることに、嘘はありません。私の知る限り、彼ほど飲食店に詳しい人間は存在しません」
「へえ。何を根拠に?」
「彼は、外食が好きすぎるあまり、一日最低五回の外食をしています。そして、食費で家計を圧迫し、借金をした消費者金融の数はなんと十社!」
「ただの馬鹿じゃないの!?」
「借金を返すために毎日バイトをするも、返済に充てるより早く食費で消え、なんとついに先日、家賃未払いで住んでいたアパートを追い出された猛者です!」
「お金を使う優先順位間違ってますよね!?」
「そんな彼だからこそ、飲食店の知識は膨大です! お嬢様を飽きさせず、お嬢様の馬鹿舌にあう料理を提供する飲食店も、きっと知っております!」
「そこまで言うなら安し……おいこら今馬鹿舌って言ったか?」
「ほっほっほ。安心してください。言ってませんよ?」
「二番煎じぃ!」
のび田の過去を知った向晴は、改めてのび田を見る。
のび田は、ぐっと親指を立てた。
「ま、そういうことです」
「ああ、うん。貴方がすごいのはわかりましたわ。色んな意味で」
向晴は頬をポリポリと掻き、ゆっくりと立ち上がる。
「ま、体験もせず文句を言うのは違いますね。いいでしょう。そこまで言うのならば、貴方のお勧めする飲食店の料理、しかと私が食べて差し上げましょう。案内なさい」
「よろこんで」
向晴とのび田は、颯爽とダイニングルームを出ていく。
兆老も自動車の準備をするため、速足で出ていく。
残されたのは、シェフたち。
「あれ? 私たち、いらない?」
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