Besides you 上

真楊

文字の大きさ
13 / 43

13.

しおりを挟む
 次の日の朝、悠哉が目を覚ましスマホを確認すると、三十分前に彰人からLINEが来ていたことに気がつく。内容はと言うと、文化祭の準備があるから先に行くというものだった。文化祭…もうそんな季節なのかとカレンダーを確認するが、文化祭までまだ三週間近くあるではないか。俺はまた彰人に避けられているのか…?と朝から悠哉は不安な気持ちで起き上がった。
「ああ、今年の三年生は気合いが入ってるらしくて一か月前から準備始めるみたいだよ。しかも放課後は受験勉強で忙しい人も多いらしいから朝早くから集まってるみたい」
 結局今日も陽翔と共に学校へ向かっている悠哉は陽翔に文化祭のことを聞くと、納得のいく答えが返ってきた。どうやら今度こそ嘘はついていなかったようだ。それにあんなキスをした手前、彰人にどのような顔をすればいいのか分からなかったため正直ほっとしている自分もいた。
「慶先輩も大学受験に向けて勉強大変そうでさ、部活引退してからすぐに受験勉強に気持ち切り替えててほんとすごいよね」
 陽翔が言うには難波は父親の会社を継ぐために国立大学への受験が控えているらしい。あいつも大変なんだなと他人事のように「ふーん」と悠哉は相づちを打つ。
「神童先輩は進路どうするの?」
 陽翔のその一言に「えっ」と悠哉は思わず立ち止まる。
「なんで俺に聞くんだよ」
「え…?だって悠哉なら知ってると思って」
 「俺が知るかよ」と悠哉はそっけなく答え、そそくさと止めていた足を動かした。
 そういえば彰人から自分の進路のことなど一度だって聞いたことがなかった。元々自分の話をしたがらない彰人だったが、少しぐらいそういう話をしてくれてもいいのではないか。よく考えてみたら悠哉は彰人のことを全然知らなかった、自分は彰人に信頼されていないのだろうか、と悠哉は少し不安な気持ちになる。
「そっか。そういえば昨日は彰人さんに会えた?」
 悠哉の浮かない表情を感じ取った陽翔は話題を変え、昨日のことを聞いてきた。そういえばあのまま陽翔のことを置いて彰人と二人で帰ってしまったなと今更になって悠哉は思い出す。
「ああ、結局自分の教室にいたよ」
「そうなんだ、それで仲直りは出来たの?」
 仲直り…、昨日のことを思い出すと悠哉の顔はまた熱くなる。仲直りは出来たが仲直り以上のことをしてしまったため陽翔にはとてもじゃないが話せなかった。
 悠哉は少し間を開けて「…まぁな」と答える。
「悠哉…神童先輩とまたなんかあった…?」
 眉を下げ恐る恐るそう聞いてきた陽翔に対して「はぁ!?」と悠哉は勢いよく振り返った。
「なんかってなんだよ?!」
「そう言われても困るんだけど…、だって悠哉変なんだもん」
 こいつはエスパーかよ、と思ってしまうほど自分の異変に敏感な陽翔に嫌気がさす。顔を赤くしてムキになった悠哉は「何もねぇよ!」と陽翔に怒鳴り、早足で学校へと向かった。
 教室へ入ると、いつもよりもガヤガヤと騒がしく悠哉は違和感を覚えた。不審に思いつつも席につき荷物を置くと「マジで!?」「マジマジ、やばいよな」と何やら興奮気味で話している男子の会話が耳に入る。
「何かあったのか?」
「なんかみんなザワザワしてるね」
 クラスメイトの様子に陽翔も不審がっているようで、なんだか落ち着かない様子だ。
 「おーいお前ら席につけー」と担任が入ってくると「やべっもう時間かよ」と先程まで騒がしかった教室内が少しずつ静かになっていく。いつものようにHRが終わると担任が「今日の一時間目は文化祭の出し物決めるからお前ら始まる前に考えとけよ」とみんなに声をかける。するとクラスメイトの一人が「先生!文化祭に那生が来るって本当ですか!」と勢いよく手を挙げた。
「なんだ、もう広まってるのか」
 「マジかよ!」「やっぱり噂は本当だったんだ!!」と担任の一言でクラス中は大騒ぎになる。担任は出席簿を片手に「ははは、お前らちゃんと出し物考えとよ」と騒ぎ立てる教室を後にした。
「悠哉聞いた!?あの那生が来るんだって!!」
 前の席の陽翔はくるりと振り返り、キラキラとした瞳で悠哉を見た。そんな陽翔とは対照的に悠哉は冷めきった態度で口を開いた。
「那生って誰だ?」
「えっ…?」
 目を丸くした陽翔はしばらくの沈黙の後「悠哉那生のこと知らないの!!?」と悠哉の耳をつんざくほどのバカでかい声をあげた。
「うっせーな!!」
「あっごめん…、でも悠哉の声の方が大き…」
「は?」
「なんでもないです…」
 陽翔をひと睨みした悠哉は「で、那生って誰なんだよ」と指で机をトントンと叩いた。
「今大人気の男性のモデルさんだよ、雑誌や企業広告はもちろん最近テレビにもよく出てるから知名度もすごい上がってるみたい」
「お前芸能人とか詳しくないのによく知ってるな」
「僕でも知ってるぐらい有名ってことだよ。だから流石の悠哉でも知ってると思ったんだけど…」
「知らなくて悪かったな」
 誰でも知ってるのが当たり前のような言い方をされ、不機嫌な態度が露骨に出る。野球の試合中継ぐらいでしかテレビを見ない悠哉にとって今人気の芸能人、ましてやモデルの事など知るわけが無かった。
「でもなんで那生がうちの学校に来るんだろ?」
「さぁな」
 那生のことなど、悠哉にとっては微塵も興味がなかった。その為どんな男なのか調べることもせずに、そのまま机に突っ伏しスマホをぼーっと眺めていた。
 一時間目が始まってもクラス中、那生の話題でもちきりだった。なんとか出し物は喫茶店で決まったが、学校行事に明るくない悠哉にとってはどうでもいい事で、この一時間の間ずっと悠哉の頭の中は彰人でいっぱいだった。
 そして放課後になり、陽翔が部活に行ってしまうと悠哉の鼓動の高鳴りはよりいっそう激しくなっていった。彰人から先に帰ってくれというLINEがきてないということは、今日は一緒に帰るつもりなのだろう。あれから一度も彰人とは会っていない、彰人の前でどんな顔をすればいいのか分からず、落ち着かない気持ちで無意味にスマホを眺めながら悠哉は彰人が来るのを待っていた。
 すると「悠哉」と自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。声の主である彰人は悠哉の机まで来ると「帰るぞ」といつもと変わらぬ様子で声をかけてくる。
 彰人の声を聞いた瞬間、悠哉の身体はびくりと反応してしまったが、彰人には気づかれていないだろうかと不安に思いつつ、なるべく彰人の顔を見ないように平常心を保って立ち上がった。
 教室を出て廊下を歩いていても、なんだか緊張してしまい悠哉は言葉が出てこなかった。昨日のことがあって彰人は自分の事をどう思っているのだろうか、と悠哉は気になったが、彰人の態度からは全く読み取れない。
「悠哉のクラスは文化祭何をやるんだ?」
「へっ?」
 突然声をかけられたせいで悠哉は思わず声が裏返ってしまった。「あ、ああ。喫茶店に決まったみたい」と動揺している気持ちをなんとか落ち着かせ、あくまで冷静な態度で答えた。
「喫茶店か、うちのクラスと同じだな」
「そうなのか。三年生は随分気合い入ってるみたいだけどそんなに大変なのか?」
 よし、いつも通り普通に話せてるぞ、と心の中でガッツポーズをしながら彰人との会話を続ける。
「そうだな、衣装から自分たちで全部作るみたいでかなり大変そうだな。朝早くから集められるのは勘弁して欲しい」
 まさか衣装まで自分たちで作るとは予想していなかったため「それは大変そうだな…」と彰人に同情してしまう。
「そういえば、那生っていうモデルが文化祭に来るみたいだ。今日はその話しでクラス中うるさくて参ったよ」
 悠哉が那生という名前を出した途端、彰人の眉毛がぴくりと動いた。何も言わない彰人を不審に思った悠哉は「どうかした?」と首を傾げると「…なんでもない」と微笑まれる。そんな彰人の様子を不思議に思いつつも、これ以上深掘りすることなくこの話は終わってしまった。
 玄関に着き、悠哉はげた箱からスニーカーを取り出しふぅと一息つく。いつも通り彰人と話せていることに悠哉は胸を撫で下ろした。
 しかし彰人の様子がいつも通りすぎて昨日のことは夢なのではないか、と半ば不安に思ってしまう自分もいた。たかがキスでここまで動揺してしまっているのは自分だけなのだろうか。
 外に出ると既に靴を履き替えた彰人が待っていた。
「なぁ悠哉、今日お前の家に寄ってもいいか?」
「は!?」
 突然そんなことを言われ、また声が裏返ってしまう。本日二度目だ。
「なんだよ急に…っ」
「昨日のことで話したい事があるんだ」
 昨日のこと…恐らく、いや確実に彰人はキスのことを言っている。このまま彰人を家に呼んだらどうなるのだろうか、彰人に対しての気持ちが恋なのかまだ確信的ではないのにどう自分の気持ちを伝えたらいいのか、悠哉にはまだ分からなかった。
 言葉に詰まり、言い及んでしまった悠哉は彰人から視線を外すと校門の方へ視線を向けた。すると、校門に寄りかかっている一人の男が目に入る。遠目で顔はよく見えないが、白髪の髪はふわふわと少しパーマがかかっており、顔には丸いサングラスを掛けている。右足を曲げ、スマホを眺めているその姿はまるでモデルのようにスラッとしていて恐らく身長もかなり高いはずだ。
 悠哉が校門の男に目を奪われていると「おい、悠哉?」と彰人は何も言わない悠哉を不思議に思い、悠哉の目線の先を辿り後ろを振り返った。
「那生…?」
 男の存在に気がついた彰人は男の姿を一点に見つめ、ボソリとその名前を呟いた。
「彰人…っ!」
 男がくるりと身体をこちらに向け、駆け足で走ってきた。彰人の名前を呼んだその声は弾んでおり、嬉しげな様子が声からして理解出来た。
「なんでお前がここに…っ」
「やっと会えた…!」
 男は勢いよく彰人に抱きつくと、彰人の顔を両手で掴みキスをした。
 ズキリと悠哉の心臓に鋭い痛みが走る。目の前の光景がまるで信じられない、信じたくなかった。
 「っ…、やめろっ…!」と彰人が男の身体を無理やり引き剥がすと「久しぶりに会えたっていうのに全くつれないな」と全く悪びれる様子もなく男はニヤリと笑った。
「急に何するんだ」
「そう怒るなよ、お前と俺の仲だろ?」
 男はサングラスを外すと、くるくると指で回し首元に掛けた。露になった男の姿に思わず悠哉の喉がひゅっと鳴る。大きな瞳は赤く光り輝いており、まるで宝石が散りばめられているかのように美しかった。キメ細かく滑り落ちそうなほど滑らかな白い肌、重量感のある真っ白なまつ毛は男の美しさをより引き立たせている。男の容姿は人間とは思えないほど美しく、その美しさに疑問を感じるほどであった。その瞳は赤いルビーのように輝き、一度目に入れると目が離せなくなる。男はまるで、異世界からやってきた美しい存在のようだった。 
「那生、一人で行ってしまうなんて酷いじゃないか」
 また一人、見知らぬ男が目に入る。男を彰人と同様那生と呼んだその人物は校門からこちらへ向かって歩いてくる。
「お前がノロイのが悪いだろ?」
「ノロイって、車を駐車場に止めてただけでしょ?それぐらい待てないと」
 「うるせー」と不機嫌そうに那生と呼ばれた男は黒髪の男に一蹴りを入れ唇をとがらせた。そんな那生の態度に慣れきっているかのように黒髪の男は悠哉と彰人の方に向き「那生がお騒がせしました」と詫びた。
「私たち今月開催される文化祭の下見に来たんです」
「そうだった!なぁ彰人、お前がこの学校にいるって知ったからわざわざこの俺が来てやったんだぞ、驚いたか?」
 那生は自信満々な態度で彰人にそう言った。
「お前は相変わらず自分本位なやつだな。悠哉、行くぞ」
 彰人は冷めた目で那生をひと睨みすると悠哉の手を取り早足で歩き始めた。悠哉は黙って彰人の後をついて行くことしか出来ない。
「悠…哉…?」
「ほら、那生もう行くよ。誰かに見つかったら大騒ぎになる」
「ちょっと待てよ、あんたが悠哉なの?」
 那生が悠哉の肩をガシッと掴んだ。突然の出来事でビックリしてしまい、何も言えない悠哉は那生の顔をただ見つめていた。彰人とそこまで変わらない身長をした那生に見下ろされ、思わずたじろいでしまう。実際に那生という男を目の前に、悠哉は圧倒される。
「へぇー、あんたが彰人の想い人ね。はっ、大したことねぇじゃん」
 上から下まで舐めまわすように悠哉の事をじっと見つめていた那生は、まるで悠哉を見下すかのように鼻で笑った。先程まで状況についていけなかった悠哉も、そんな那生の態度にだんだんと腹が立ってくる。一言言い返そうと口を開こうとした瞬間「おい」と彰人が怒気の孕んだ声で瞳をキッと光らせた。
「悠哉のことを悪くいうとお前でも容赦しないぞ」
 怒りを顕にした彰人の様子に、那生は赤い瞳を歪ませせっかくの整った顔が台無しになるような表情をする。
「なんでこんなちんちくりんがいいのか俺にはさっぱりだな、俺の方が絶対彰人とつり合うってのに。もういい、行こうぜ」
「はぁ…君は本当に口の利き方がなってないね。すみませんね、うちの那生がご迷惑お掛けしました」
 校舎に入っていく那生に続いて黒髪の男もその後を着いていく。すると那生はくるりとこちらを振り返り「でも俺ぜってぇ諦めないから」とだけ言い残し今度こそ校舎の中へ入っていった。
 那生達がいなくなり、ハッとした悠哉は彰人の手を振りほどき急いで歩き始めた。
「ちょっ、悠哉待ってくれ…!」
 悠哉の後を慌てた様子で彰人がついてくるが、そんな彰人を無視して悠哉は足を進める。先程のキスが脳裏から離れなかった。那生と呼ばれた男は恐らく、今度文化祭にゲストとして来るモデルの那生本人なのだろう。あの常人離れした容姿ならモデルといわれても納得出来る。彰人とは一体どういった関係なのだろうか、しかし先程の様子から二人がただならぬ間柄であったことは確かだ。那生の名前を出した途端彰人の様子がおかしくなった事がそれを証明していた。
「おいっ、悠哉!」
 一向に返事を返さない悠哉に痺れを切らした彰人は、悠哉の腕をパシリと掴んだ。相変わらずの馬鹿力なためいくら悠哉が腕を振りほどこうともがいても彰人の手が離れることはなく、悠哉は思わずちっと舌打ちをする。
「離せよ」
「嫌だ、とにかく俺の話を聞いてくれ」
「話を聞くって何の話だよ?お前から聞きたいことなんてない」
 悠哉の素っ気ない態度に眉を歪ませた彰人は「もしかして那生に妬いてるのか…?」と聞いてきた。
「は…?そんな訳ないだろ?なんで俺があんな奴に嫉妬しないといけないんだ」
 図星だった。彰人と那生のキスを目にしてショックを受けた。キスの一つや二つ、彰人にとってはどうとないことで自分とのキスだってその程度だったのではないかと嫌でも思ってしまう。しかしそんなこと素直に言えるはずもなかった。
「じゃあなんでそんなに不機嫌なんだ?」
「別に、たださっきの那生とかいう男の態度にイラッときただけだ」
「本当にそれだけか?」
「しつこいやつだな、そう言ってるだろ?それよりさっきの答えだけど、今日は家には来ないでくれ」
 今度こそ彰人の手を振りほどき悠哉は足を進めた。すると、横断歩道を挟んだ向こう側にスマホを片手に信号待ちしている木原の姿が目に入る。信号が青になったことを確認し、悠哉は駆け足で横断歩道を渡り木原の元へと向かった。
「木原っ!」
 木原に声をかけると「おお悠哉、奇遇だね」と木原は笑顔を見せる。
「おい悠哉待ってくれ」
「君はこの間の…そういえば君が襲われそうになった悠哉を助けてくれたんだってね」
 慌てた様子で悠哉の後を追いかけてきた彰人に、木原は「君のおかげで悠哉を守ることが出来た、本当にありがとう…!」と彰人の両手を握りしめ感嘆の声を上げた。
「俺、これからこいつと用事あるから」
「えっ?」
 悠哉は木原の腕を掴み、家とは反対方向に向かって半ば強引に木原を引きずりながら進む。木原は状況についていけていないようで「用事?どういう事だ」と困惑した表情で悠哉に問いかけてきた。
「いいからついて来い」
 小声で木原に耳打ちしながら、ちらっと後ろを振り返った。彰人はその場に立ち止まりこちらをじっと見つめている。どうやらついてくるつもりはないらしい。
 それからしばらく木原を連れて歩いたが、特に目的もないため足を止めた。
「急に連れ出して悪かったな、もう大丈夫だから」
「えっ?俺に用事があるんじゃないのか?」
「は?別にないけど」
 素っ気ない悠哉の態度に「ええ?!ここまで連れ出しておいてそれはないだろう!?」と木原は声を上げた。いちいちリアクションがオーバーだな、と悠哉は冷たい視線を木原に向ける。
「そうだ!せっかくだからどこかでお茶でもしないか?」
「はぁ?お茶?」
「兄弟水入らずでいいだろう?」
 木原は悠哉の背中をぽんぽんと叩き「ね?」と促してきた。先程の那生のことをまだ根に持っていた悠哉は気を紛らわすために丁度いいかと思い「あんたの奢りなら」と渋々木原からの誘いを承諾した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

男の娘と暮らす

守 秀斗
BL
ある日、会社から帰ると男の娘がアパートの前に寝てた。そして、そのまま、一緒に暮らすことになってしまう。でも、俺はその趣味はないし、あっても関係ないんだよなあ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

処理中です...