40 / 71
40. ボルダール伯爵を見捨てる宰相
しおりを挟む
(宰相視点)
突然ドラゴンが城を襲い、ブレス1発で城の城壁を広範囲に破壊した。しかも投石器も魔法兵たちの攻撃も全く効果が無い。俺はたまらず"神の力"の使用を命じた。魔族との戦いに取って置くつもりだったが、こうなっては仕方がない。その結果ドラゴンの殲滅に成功したが、城にいた魔法兵1000人の内500人が犠牲となった。
"神の力"は10年前に魔道具研究所のドレーク博士が発明した魔道具だ。送信機と受信機に分かれており、送信機を装着した魔法使いの魔力を、受信機を装着した人間に送ることが出来る。複数の送信機から同じ受信機に魔力を送ることが出来るから、送信機を装着した魔法使いが多数いれば、それだけ沢山の魔力を受信機を装着した人間に送ることができ、条件次第では、受信機を装着した人間は何十人、何百人分の魔力を使って魔法を行使し、まさに名前の通り、神のごとき力を使うことが出来るわけだ。しかも受信機は魔法使いでなくても使用可能と言うのが俺の興味を引いた。俺は魔法が使えないことに強い劣等感をもっていた。だが、この魔道具を使えば魔法の才能がない俺でも強力な魔法が使える。
もっとも俺が気付いた時には、この発明は失敗作として忘れ去られていた。致命的な欠点があったのだ。それは、魔力の送信者と受信者のタイミングが合わなければ魔力の受け渡しがうまく行かないこと。そのため魔力の送信者と受信者は直ぐ近くにいて互いに合図をしながらタイミングを合わせる必要がある。すぐ近くに多くの魔法使いが居るのであれば、何も魔力をひとりに集めなくても全員で同じ魔法を使えば結果は同じだと判断され失敗作とされた。誰が判断したのか分からないが戦争を知らない奴のたわごとだ。例えば敵の城壁をファイヤーボールで攻撃するとして、沢山の魔法使いがバラバラに攻撃するのと、同じ魔力で巨大なファイヤーボールを作って攻撃するのとでは威力が全く違う。攻撃のタイミングと位置を正確に合わせることが出来れば、威力は格段に増す。今日のドラゴンへの攻撃が良い例だ。
この魔道具の可能性に気付いた俺は、博士に"神の力"と"隷属の首輪"とを組み合わせることを命じた。"隷属の首輪"は子機と親機に分かれ。親機を装着した人間は子機を装着した人間に念波を送り思い通りに動かすことが出来る。距離も数キロメートルまでは離れていても問題ない。親機を装着した人間も常に念波を出すわけに行かないから数時間が限度だが、この間は相手を完全にコントロールできる。またコントロールされている間の出来事は記憶に残らないだけでなく、暗示を掛ければ偽の記憶を埋め込むことも可能だ。これと神の力を組み合わせれば、送信機を装着した魔法使いと受信機を装着した魔法使いでタイミングがずれることは無いし、送信者と受信者に距離があっても使用できる。受信者だけで行動できるから機動力も格段に上がるわけだ。
ドレーク博士は当初、人道に外れるとして国家間の条約で禁止されている"隷属の首輪"を使うことに躊躇していたが、少し脅すだけで言うことを聞いた。出来上がったのは神の力と隷属の首輪を組み合わせた魔道具だ。一方には"神の力"の送信機と"隷属の首輪"の子機、もう一方には"神の力"の受信機と"隷属の首輪"の親機を組み合わせてある。早速行った実験の成果は素晴らしいものだった。魔法の発動は一度も不発に終わることなく、その威力も一段と上がっていた。だが新たな問題も発覚した。神の力の送信機を装着した10名の魔法使いの内、ふたりが死亡、ふたりが精神に異常をきたして廃人となったのだ。自分の限界を超えて魔力を放出した反動らしい。自分の意思で魔力を放出している時は限界内でしか魔力を使わないが、"隷属の首輪"のコントロール下にあるときは自制が効かないらしい。
まあ良い、魔法使いを消耗品と考えれば良いだけだ。"神の力"が実用化されれば、国家の戦力は兵士の数だけでなく、魔法使いの数で決まってくる様になるだろう。私は軍に命じて魔法兵を大々的に募集させた。もちろん待遇は他の兵士より格段に上にする。給料、宿舎、食事、階級、すべてにおいて特別扱いだ。さらに兵のひとりひとりに女奴隷をあてがって身の回りの世話をさせる。もちろん夜の相手をさせるのも自由だ。この策は当たり、国内だけでなく国外からも続々と魔法使いがやって来た。その結果、我が国の魔法兵の数は1万人を超えた。周辺の国の中では断トツだろう。"神の力"の送信機は彼らの制服の襟に仕込んである。普段は脱着可能だが、いざという時は受信機を装着した者の操作ひとつでロックされ外せなくなる仕掛けだ。もちろん魔法兵に"神の力"の魔道具のことは秘密だ。敵に知られないためと言う事もあるが、一旦発動すれば死亡するか、廃人になる恐れがあると知られたら不味いからな。
ドラゴンを殲滅した日の夜、私は国王に呼び出され、あのドラゴンについて尋ねられた。国王とは彼がまだ王子だった時からの付き合いだ。競争相手だった兄に王座に就かれ失望していた彼をそそのかし兄の暗殺に導いたのは私だ。すべては俺の大いなる計画のためだ。子供の時、俺はこの国の王になると決めたのだ。
俺はある落ちぶれた侯爵家の5男として生まれた、しかも妾の子だ。小さい時は兄達からは散々虐められた。父親からも可愛がられなかった。使用人達も俺が家族の中で軽視されているのを感じたのだろう。俺のことは適当に扱って良いとみなしていた。なまじ頭が良かっただけに余計に疎まれた。そんな中で唯一俺を可愛がってくれていた母が死んだ。それから俺の生活は更に悲惨になった。周り中が敵だらけだった。しかも俺には魔法の才能が無かった。貴族家には魔法の才がある者が多い、尊い血筋の証だと考えられているのだ。魔法の才能が無い俺は、周りから貴族の資格すらないとまで言われた。そんな中で俺は誓った、俺の方が上だと分からせてやると。
俺は頭だけは良かった。周り中がバカに見えた。そのバカな奴らが俺をさげすんでいるのだ。だったらどちらが上か分からせてやる。この国の一番上は国王だ。ならば国王に成れば誰も俺を蔑むことは出来ない。俺は国王になると決めた。10歳の時だった。周り中敵だらけなら好都合、敵には遠慮する必要はない。それからは成人するまではひたすら目立たない様に振舞った。そして、成人して家督を継ぐことのできる歳になってから、侯爵家には奇妙な事件が続くことになった。まずは兄たちが次々に死んだ。あるものは不慮の事故で、あるものははやり病で、あるものは自殺して、そして最後に家督を継いでいた長男と、その子供がなくなり、後継ぎは俺しかいなくなった。もちろんすべて俺がやったことだ。目論見どおり侯爵家を乗っ取った俺は、しかし新たなる苛めに会うことになった。俺が継いだ侯爵家は経済的に行き詰っていた。父の事業が失敗したことが原因だったが、以前羽振りが良かった時に敵対していた貴族達から疎まれていたため、明に暗に様々な嫌がらせを受けることになった。
今の王に出会ったのはそんな時だ、当時の王は兄王子が王太子に決まり落ち込んでいた。今までちやほやしていた貴族達も自分達が支援していた王子が王に成れないと知り蜘蛛の子を散らすようにいなくなる。そんな王子に俺は起死回生の光を見た。この王子を王にすることができれば俺は王の恩人となれる。それが先王の暗殺だ、もっとも王は単に暗殺者達に命令しただけだ。それだけでうまく行くはずがない。俺がすべての段取りを付けたのだ。
そのこともあり、このバカな国王は俺のことを心から信頼して国政のほとんどを任せてくれている。おかげで俺はやりたい放題出来るわけだ。常に機嫌をとって置かねばならないのが面倒だが。
「宰相、あのドラゴンはどこから来たと思う。」
「伝説の中は別にして、ドラゴンが実際に目撃されたのはオーガキングがドラゴンに乗ってボルダール伯爵の城に乗り付けた時だけです。となれば、今回のドラゴンもオーガキングが関係していると考えるのが自然でしょう。」
「お前もそう思うか...。オーガキングもとんでもない隠し玉を持っていたな。しかし、そうだとするとオーガキングの目的は何なんだ?」
「案外、陛下のお命かもしれませんよ。タイミング的にソフィリアーヌ様の誘拐計画が実行される頃です。計画が失敗して、ボルダール伯爵当たりの口から首謀者として陛下の名前が出たのかもしれません。」
「ボルダール....あの小物め...」
「まあ、あくまで想像でしかありません。すでに情報収集の指示をだしていますので、数日の内には何か分かるでしょう。」
「分かった、それで宰相の想像が当たっていた場合だがな、俺を殺すのに失敗したと分かれば第二、第三のドラゴンを寄越すかもしれない。これ以上貴重な魔法兵を消耗することは避けたいな。いっそのこと直ちに戦争を仕掛けるか、魔法兵を使えばあの谷底の道も通過できるだろう。」
「それは愚策でございます。オーガキングにはドラゴンがあるのですよ、谷底の道を越えるのに多くの魔法兵を消耗してしまったら、後はドラゴンにやられるだけです。」
「くそ...ならばどうする。」
「ボルダール伯爵に犠牲になってもらいましょう。ソフィリアーヌ様を誘拐しようとしたのはボルダール伯爵が独断でやったことにするのです。その上でボルダール伯爵領をオーガキングに進呈して機嫌を取るのですよ。」
「正気か!? オーガキングに領地を差し出すだと。それもかなり大きな領地だぞ。そんな屈辱的なことが出来るか!」
「陛下、よくお考え下さい。いま戦争を開始してはオーガキングに勝てません。ボルダール伯爵領をオーガキングに与えれば、彼はアルトン山脈の西側にも領地を持つことになるのですよ。この意味がお分かりになりませんか?」
「まさか...オーガキングをアルトン山脈の西側におびき出すつもりか?」
「その通りでございます。間者からの報告では、オーガキングは国民を大切にする王として評判が高いとか。開拓村の人間も魔族の一員として平等に扱っている様です。それならば、ボルダール伯爵領を手に入れ、そこに住む人間達を魔族の国の国民として受け入れたなら彼らも平等に扱おうとするでしょう。視察に訪れるかもしれませんし、我が国との会議にボルダール伯爵領を指定すればやってくるかもしれません。もしボルダール伯爵領が攻撃されたらオーガキングが自ら兵を率いて出陣するかもしれません。何らかの方法で一旦谷底の道を通ってアルトン山脈の西側におびき出せれば色々と手はあります。戦争は敵国の王を殺すことができれば勝利なのですから。」
「なるほどな、流石は宰相だ。相変わらず悪知恵が働く様だな。」
「お褒めに預かり光栄にございます。」
突然ドラゴンが城を襲い、ブレス1発で城の城壁を広範囲に破壊した。しかも投石器も魔法兵たちの攻撃も全く効果が無い。俺はたまらず"神の力"の使用を命じた。魔族との戦いに取って置くつもりだったが、こうなっては仕方がない。その結果ドラゴンの殲滅に成功したが、城にいた魔法兵1000人の内500人が犠牲となった。
"神の力"は10年前に魔道具研究所のドレーク博士が発明した魔道具だ。送信機と受信機に分かれており、送信機を装着した魔法使いの魔力を、受信機を装着した人間に送ることが出来る。複数の送信機から同じ受信機に魔力を送ることが出来るから、送信機を装着した魔法使いが多数いれば、それだけ沢山の魔力を受信機を装着した人間に送ることができ、条件次第では、受信機を装着した人間は何十人、何百人分の魔力を使って魔法を行使し、まさに名前の通り、神のごとき力を使うことが出来るわけだ。しかも受信機は魔法使いでなくても使用可能と言うのが俺の興味を引いた。俺は魔法が使えないことに強い劣等感をもっていた。だが、この魔道具を使えば魔法の才能がない俺でも強力な魔法が使える。
もっとも俺が気付いた時には、この発明は失敗作として忘れ去られていた。致命的な欠点があったのだ。それは、魔力の送信者と受信者のタイミングが合わなければ魔力の受け渡しがうまく行かないこと。そのため魔力の送信者と受信者は直ぐ近くにいて互いに合図をしながらタイミングを合わせる必要がある。すぐ近くに多くの魔法使いが居るのであれば、何も魔力をひとりに集めなくても全員で同じ魔法を使えば結果は同じだと判断され失敗作とされた。誰が判断したのか分からないが戦争を知らない奴のたわごとだ。例えば敵の城壁をファイヤーボールで攻撃するとして、沢山の魔法使いがバラバラに攻撃するのと、同じ魔力で巨大なファイヤーボールを作って攻撃するのとでは威力が全く違う。攻撃のタイミングと位置を正確に合わせることが出来れば、威力は格段に増す。今日のドラゴンへの攻撃が良い例だ。
この魔道具の可能性に気付いた俺は、博士に"神の力"と"隷属の首輪"とを組み合わせることを命じた。"隷属の首輪"は子機と親機に分かれ。親機を装着した人間は子機を装着した人間に念波を送り思い通りに動かすことが出来る。距離も数キロメートルまでは離れていても問題ない。親機を装着した人間も常に念波を出すわけに行かないから数時間が限度だが、この間は相手を完全にコントロールできる。またコントロールされている間の出来事は記憶に残らないだけでなく、暗示を掛ければ偽の記憶を埋め込むことも可能だ。これと神の力を組み合わせれば、送信機を装着した魔法使いと受信機を装着した魔法使いでタイミングがずれることは無いし、送信者と受信者に距離があっても使用できる。受信者だけで行動できるから機動力も格段に上がるわけだ。
ドレーク博士は当初、人道に外れるとして国家間の条約で禁止されている"隷属の首輪"を使うことに躊躇していたが、少し脅すだけで言うことを聞いた。出来上がったのは神の力と隷属の首輪を組み合わせた魔道具だ。一方には"神の力"の送信機と"隷属の首輪"の子機、もう一方には"神の力"の受信機と"隷属の首輪"の親機を組み合わせてある。早速行った実験の成果は素晴らしいものだった。魔法の発動は一度も不発に終わることなく、その威力も一段と上がっていた。だが新たな問題も発覚した。神の力の送信機を装着した10名の魔法使いの内、ふたりが死亡、ふたりが精神に異常をきたして廃人となったのだ。自分の限界を超えて魔力を放出した反動らしい。自分の意思で魔力を放出している時は限界内でしか魔力を使わないが、"隷属の首輪"のコントロール下にあるときは自制が効かないらしい。
まあ良い、魔法使いを消耗品と考えれば良いだけだ。"神の力"が実用化されれば、国家の戦力は兵士の数だけでなく、魔法使いの数で決まってくる様になるだろう。私は軍に命じて魔法兵を大々的に募集させた。もちろん待遇は他の兵士より格段に上にする。給料、宿舎、食事、階級、すべてにおいて特別扱いだ。さらに兵のひとりひとりに女奴隷をあてがって身の回りの世話をさせる。もちろん夜の相手をさせるのも自由だ。この策は当たり、国内だけでなく国外からも続々と魔法使いがやって来た。その結果、我が国の魔法兵の数は1万人を超えた。周辺の国の中では断トツだろう。"神の力"の送信機は彼らの制服の襟に仕込んである。普段は脱着可能だが、いざという時は受信機を装着した者の操作ひとつでロックされ外せなくなる仕掛けだ。もちろん魔法兵に"神の力"の魔道具のことは秘密だ。敵に知られないためと言う事もあるが、一旦発動すれば死亡するか、廃人になる恐れがあると知られたら不味いからな。
ドラゴンを殲滅した日の夜、私は国王に呼び出され、あのドラゴンについて尋ねられた。国王とは彼がまだ王子だった時からの付き合いだ。競争相手だった兄に王座に就かれ失望していた彼をそそのかし兄の暗殺に導いたのは私だ。すべては俺の大いなる計画のためだ。子供の時、俺はこの国の王になると決めたのだ。
俺はある落ちぶれた侯爵家の5男として生まれた、しかも妾の子だ。小さい時は兄達からは散々虐められた。父親からも可愛がられなかった。使用人達も俺が家族の中で軽視されているのを感じたのだろう。俺のことは適当に扱って良いとみなしていた。なまじ頭が良かっただけに余計に疎まれた。そんな中で唯一俺を可愛がってくれていた母が死んだ。それから俺の生活は更に悲惨になった。周り中が敵だらけだった。しかも俺には魔法の才能が無かった。貴族家には魔法の才がある者が多い、尊い血筋の証だと考えられているのだ。魔法の才能が無い俺は、周りから貴族の資格すらないとまで言われた。そんな中で俺は誓った、俺の方が上だと分からせてやると。
俺は頭だけは良かった。周り中がバカに見えた。そのバカな奴らが俺をさげすんでいるのだ。だったらどちらが上か分からせてやる。この国の一番上は国王だ。ならば国王に成れば誰も俺を蔑むことは出来ない。俺は国王になると決めた。10歳の時だった。周り中敵だらけなら好都合、敵には遠慮する必要はない。それからは成人するまではひたすら目立たない様に振舞った。そして、成人して家督を継ぐことのできる歳になってから、侯爵家には奇妙な事件が続くことになった。まずは兄たちが次々に死んだ。あるものは不慮の事故で、あるものははやり病で、あるものは自殺して、そして最後に家督を継いでいた長男と、その子供がなくなり、後継ぎは俺しかいなくなった。もちろんすべて俺がやったことだ。目論見どおり侯爵家を乗っ取った俺は、しかし新たなる苛めに会うことになった。俺が継いだ侯爵家は経済的に行き詰っていた。父の事業が失敗したことが原因だったが、以前羽振りが良かった時に敵対していた貴族達から疎まれていたため、明に暗に様々な嫌がらせを受けることになった。
今の王に出会ったのはそんな時だ、当時の王は兄王子が王太子に決まり落ち込んでいた。今までちやほやしていた貴族達も自分達が支援していた王子が王に成れないと知り蜘蛛の子を散らすようにいなくなる。そんな王子に俺は起死回生の光を見た。この王子を王にすることができれば俺は王の恩人となれる。それが先王の暗殺だ、もっとも王は単に暗殺者達に命令しただけだ。それだけでうまく行くはずがない。俺がすべての段取りを付けたのだ。
そのこともあり、このバカな国王は俺のことを心から信頼して国政のほとんどを任せてくれている。おかげで俺はやりたい放題出来るわけだ。常に機嫌をとって置かねばならないのが面倒だが。
「宰相、あのドラゴンはどこから来たと思う。」
「伝説の中は別にして、ドラゴンが実際に目撃されたのはオーガキングがドラゴンに乗ってボルダール伯爵の城に乗り付けた時だけです。となれば、今回のドラゴンもオーガキングが関係していると考えるのが自然でしょう。」
「お前もそう思うか...。オーガキングもとんでもない隠し玉を持っていたな。しかし、そうだとするとオーガキングの目的は何なんだ?」
「案外、陛下のお命かもしれませんよ。タイミング的にソフィリアーヌ様の誘拐計画が実行される頃です。計画が失敗して、ボルダール伯爵当たりの口から首謀者として陛下の名前が出たのかもしれません。」
「ボルダール....あの小物め...」
「まあ、あくまで想像でしかありません。すでに情報収集の指示をだしていますので、数日の内には何か分かるでしょう。」
「分かった、それで宰相の想像が当たっていた場合だがな、俺を殺すのに失敗したと分かれば第二、第三のドラゴンを寄越すかもしれない。これ以上貴重な魔法兵を消耗することは避けたいな。いっそのこと直ちに戦争を仕掛けるか、魔法兵を使えばあの谷底の道も通過できるだろう。」
「それは愚策でございます。オーガキングにはドラゴンがあるのですよ、谷底の道を越えるのに多くの魔法兵を消耗してしまったら、後はドラゴンにやられるだけです。」
「くそ...ならばどうする。」
「ボルダール伯爵に犠牲になってもらいましょう。ソフィリアーヌ様を誘拐しようとしたのはボルダール伯爵が独断でやったことにするのです。その上でボルダール伯爵領をオーガキングに進呈して機嫌を取るのですよ。」
「正気か!? オーガキングに領地を差し出すだと。それもかなり大きな領地だぞ。そんな屈辱的なことが出来るか!」
「陛下、よくお考え下さい。いま戦争を開始してはオーガキングに勝てません。ボルダール伯爵領をオーガキングに与えれば、彼はアルトン山脈の西側にも領地を持つことになるのですよ。この意味がお分かりになりませんか?」
「まさか...オーガキングをアルトン山脈の西側におびき出すつもりか?」
「その通りでございます。間者からの報告では、オーガキングは国民を大切にする王として評判が高いとか。開拓村の人間も魔族の一員として平等に扱っている様です。それならば、ボルダール伯爵領を手に入れ、そこに住む人間達を魔族の国の国民として受け入れたなら彼らも平等に扱おうとするでしょう。視察に訪れるかもしれませんし、我が国との会議にボルダール伯爵領を指定すればやってくるかもしれません。もしボルダール伯爵領が攻撃されたらオーガキングが自ら兵を率いて出陣するかもしれません。何らかの方法で一旦谷底の道を通ってアルトン山脈の西側におびき出せれば色々と手はあります。戦争は敵国の王を殺すことができれば勝利なのですから。」
「なるほどな、流石は宰相だ。相変わらず悪知恵が働く様だな。」
「お褒めに預かり光栄にございます。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎
倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。
栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。
「責任、取って?」
噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。
手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。
けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。
看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。
それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。
没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~
namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。
かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。
海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。
そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。
それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。
そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。
対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。
「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」
アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。
ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。
やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。
揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる