新米女神トモミの奮闘記

広野香盃

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第1章 惑星ルーテシア編

24. アジト発見

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 魔道具の説明を行った人はコルヒさんと言って、アレフさんの部下らしい。

 コルヒさんは探査の魔道具に加え、遠距離通話の魔道具、追跡の魔道具と持参した魔道具を披露している。遠距離通話の魔道具は地球で言うトランシーバーだ。対になった魔道具と遠距離で会話が出来る。ここと領都くらいの距離なら通話が可能だそうだ。1台領都に置いて来ているので、身代金の準備状況をトロクに居ながら確認することも可能との事。遠距離通話の魔道具はすでに市販されているが、それらは机位の大きさがある大きなもので部屋に設置して使うものであったが、今回コルヒさんが持参したものは持ち運びができる小型タイプ。それを10対持参したらしい。兵士や騎士が所持していれば、離れていても殿下の指示を受けることが出来る。追跡の魔道具は親機と子機があり、子機の位置を親機で追跡できる。身代金を入れた箱に忍ばせておけば犯人の動きを追跡できるわけだ。

 殿下は上機嫌でコルヒさんの話を聞いていた。役に立ちそうだと思ったのかもしれない。なぜあの様な軟弱者の元で働いているのかと聞いている。コルヒさんは、

 「部下は上司を選べないですからね。不運と思って諦めるしかありません。出来れば殿下の様な仕えるに値する方のもとで思いっきり働きたいものです。」

 と返した。アレフさんは部下から嫌われている雰囲気である。ポトルフさんも一緒になってアレフさんの悪口を言っていた。悪い噂が絶えないのだが証拠が無い為に処分出来ないのだそうだ。アレフさんもポトルフさんに同調してさんざんアレフさんの悪口を言っている。まあ私も会社員だったときには、同僚と上司の悪口を言い合っていたから気持ちは判るが、そこまで言わなくてもという内容である。

 さっそく探査の魔道具を使ってカトリー嬢の捜索を行うことになる。カトリーさんの髪の毛はメイドさんが持ってきたブラシから簡単に採取できた。殿下の部下である騎士や兵士が魔道具を持って、地域を分担して捜索するそうだ。念のため私が探査済みのトロクの町も捜索対象に入れるらしい。
 さらに、遠距離通話の魔道具で領都と連絡を取ったところ、身代金の金貨1,000枚は明日中にトロクに届けることが出来るとのことであった。

 私はアレフさんと話が出来なかったことにはガッカリしたが、今はカトリーさん救出が優先だ。それにしても魔道具の有用性には目が覚める思いがした。私も探査魔法は使えるが、ひとりで行うのと、人海戦術で探査するのとでは効率が違う。その日の昼にはさっそく探査の魔道具に反応があったと、兵士さん達に持たせた遠距離通話の魔道具を通じて連絡があった。魔道具大活躍である。

 反応があったのはトロクの町から数キロ離れた森の中。ただ、コルヒさんが言うには通常の反応ではないらしい。普通はもっとピンポイントで場所が判るはずなのだが、対象からの信号が分散しており、この付近としか特定できない。誘拐犯が何らかの魔力遮断の結界を使用している可能性が高いとのこと。付近を調査したが建物らしいものは見つからないらしい。私もこっそり現場にいって探査魔法を使ったが、魔道具と同様の結果であった。位置さえ特定できれば瞬間移動でカトリーさんを助け出せるのに残念だ。

 その日の作戦会議では、建物がみつからなかったことから、カトリー嬢は地下の洞窟等にとらわれているのではないかとの推測がなされた。あのあたりの地質は石灰岩で鍾乳洞が多いらしい。その場合、救出のためにはまず洞窟の入り口を見つける必要がある。当然入口は隠ぺいされているだろうから、見つけるのは簡単ではないだろう。だが入口を見つけるために多くの兵を送り込めば、誘拐犯に警戒されるのは必定である。

 コルヒさんの提案で、明日届くであろう身代金がはいった箱に追跡の魔道具を入れておき。誘拐犯に運ばせることで入口の場所を特定しようということになる。地下に入れば魔力遮断結界の影響で追跡は出来ない可能性が高いが、地下への入り口までなら追跡可能だろうとのこと。

 身代金の金貨1,000枚は翌朝早くに届いた。ずいぶん早い。アレフさん達が乗って来たのと同じホバークラフトタイプの魔道具で運んだらしい。しかもこちらには座席が付いている、アレフさん達が作った試作2号機らしい。なんと馬車で3日かかる 領都-トロク 間を6時間で来ることができるとのこと。正式名称は浮遊馬車と言うらしい。あの辛かった馬車の旅を思い出し、もう少し早く発明して欲しかったと思った私は悪くないと思う。

 計画通り、金貨の入っている箱を2重底に改造し、そこに追跡の魔道具を仕込む。犯人の指示通り屋敷の屋根に赤い旗を揚げると、しばらくして屋敷に矢文が飛んで来た。

 “金貨1,000枚を小舟に乗せ布を掛けてからトロップ川に流せ。誰も船に近づくな。”

 とだけ書かれていた。トロップ川というのは男爵邸の近くを流れる川である。川幅は5メートルもないらしい。指示どおり身代金を小舟に乗せ川に流す。小舟はゆっくりと流されていく。王太子を始め私達はかたずを飲んで見つめているが、平地で周りが開けているため隠れて近づくわけにもいかない。しばらくすると、川に平行して走っている道を馬車がやって来た。誘拐犯の一味かと皆緊張するが、馬車は小舟の所で止まることなくそのまま通り過ぎる。気が緩んだタイミングで、追跡の魔道具の親機を見ていたコルヒさんが小さな声で叫んだ。

 「身代金の箱が船から馬車に移動しました!」

 瞬間移動の魔法を使ったのか? 短い距離の移動とはいえ、瞬間移動はかなりレアな魔法のはず。アジトの魔力遮断結界といい、誘拐犯にはかなりの魔法か魔術の使い手がいるに違いない。

 犯人達は追跡の魔道具で監視されているとは気付いていないらしく、馬車はゆっくりとした速度で通り過ぎてゆく。手を出したいがガマンだ。今はカトリーさんの安全の方が大事だ。
 コルヒさんの持つ追跡の魔道具の親機を見ていると、馬車は大回りをしてから犯人達のアジトがあると思われる森に向かって行く。
 殿下はアジト付近で待機している兵に遠距離通信の魔道具で指示を出す。馬車に気付かれないように監視しろという内容だ。

 しばらく待っていると、殿下が監視を指示した兵から連絡があった。洞窟の入り口を発見した様だ。
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