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第1章 惑星ルーテシア編
26. プランB
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浮遊馬車の乗り心地は最高だ。スピードが出ているにも関わらずほとんど揺れない。座るところが無いのが難点だが、試作2号機の方はすでに座席が備え付けてあったから今後の普及に期待だ。是非1台欲しい。
「殿下たちは大丈夫なんですよね。」
と私が問うと、コルヒさんが答えてくれた。
「大丈夫です。ガスの効き目は短時間ですし、洞窟の外にいた兵士たちに解毒剤を服用した上で救助に向かう様に指示しています。もちろん誘拐犯の捕縛も指示済みです。」
「そうなんですか。それにしてもどうなっているんですか。なぜ殿下の元を去ったはずのアレフさん達がタイミング良く助けに来てくれたんですか? まるで私達の動きを見張っていたみたいに。」
コルヒさんがバツが悪そうな顔で答える。
「それはですね、一言で言うと俺がスパイだったからです。」
「アレフさんに、殿下達の情報を流していたと?」
「はい。」
「なぜ?」
「そ、それはですね。わ、私が....。」
とアレフさんが話始めたが、すぐに先ほどの女性が遮った。
「主任が話すと時間がかかるので、私から説明しますね。
もちろん私達は当初殿下に協力してカトリーナ嬢を助けるためにトロクの町にやって来ました。私達の魔道具をうまく使えばカトリーナ嬢を助けだす役に立つと考えたのです。でも不安もありました、殿下のことです。有名な脳筋殿下ですからね。気の弱い主任を軽く見て、アドバイスに耳を貸さないんじゃないかと。
そこで、殿下と共にカトリーナ嬢を助けるのをプランAとして、念のためにプランBも考えておいたんです。プランBはプランAの実施が困難な時のプランです。プランBでは私達の内、一番殿下に気に入られそうなコルヒが殿下の元に残り、殿下にアドバイスすると共に私達に情報を流すことになっていました。」
「いやー、殿下の気に入られるために、おべっかを言ったり、主任の悪口を並べたりと大変でしたよ。あっ、決して本心で言っていたわけではないですからね。給料が低いのは別にして。」
とコルヒさん。
「ご、ゴメン。僕の交渉力が無いせいで。」
「分かってますって。冗談ですよ。」
とアレフさんとコルヒさんが口を挟んだところで、女性が話を再開する。
「一方で私達は殿下の行動で穴になりそうな所をフォローする方向で活動していました。誘拐犯のアジトに魔力遮断結界が張られていると判ったことから、誘拐犯には魔法もしくは魔術に詳しい人間がいると思われましたので、領都に連絡を取り、エタルナ領に入り込んでいる犯罪者の内、魔法や魔術が得意な人物の選定を依頼したところ、領都から受けた報告は最悪でした。悪名高いアルナーがエタルナ領に入り込んでいたのです。彼は隷属の首輪を使用した凶悪な犯行が特徴です。自分は影に隠れ隷属の首輪を付けた人間に犯行を行わせるのです。
私達はカトリーナ嬢にも隷属の首輪が使われていることを前提に作戦を立てました。隷属の首輪を通して下された命令は術者が死んだ後も有効です。たとえばアルナーが自分が囚われたり、殺されたりしたら自殺する様にカトリーナ嬢に命令しておけば、彼女は救出された後であらゆる手段を用いて自殺しようとするでしょう。私達はアルナーの性格からして、彼が自殺を命令している可能性は高いと考えました。
そこで今回使用した睡眠ガスを用意したのです。もちろん最後の最後まで使用するつもりはありませんでした。あくまで殿下の救出作成が失敗した時の備えとしてです。」
「そうだったんですね。」
すごい、アレフさん達が裏でそんな活動をしていたとは。まるでスパイ映画じゃないか。
でも危なかった。洞窟内での探査魔法でカトリーさんの居場所をつかんだとき、こちらがカトリーさんの方に向かうのではなく、瞬間移動の魔法でカトリーさんを呼び寄せてたら、その場で自殺されてしまった可能性があったわけだ。私がカトリーさんの方に向け走り出したのは単にそこまで考えが回らなかったからだ。聞いていて冷や汗が出た。
「それにしてもタチハさんは何者なんです? あの殿下が一目置いていたそうですし、なにより睡眠ガスと聞いてすぐに理解されましたよね。人体に作用する気体のことなど主任が麻酔用に研究しているだけで、一般には知られていないはずなんですが。」
「いえいえ、私はただの冒険者です。 殿下が気に入ってくれただけですよ。」
危ない、危ない。これで誤魔化せるとは思わないけど、とりあえず話をそらしたい。お願い、これ以上聞かないで~~~。
私の願いが通じたのか、それ以上は突っ込まれなかった。空気を読める人達だ。それにしても、ひょっとしなくてもアレフさん達って、とんでもなく優秀な人達じゃない? ルーテシア様が魔法陣の作成を依頼するだけのことはあるよ。
領都に到着すると、そのまま魔法学院へ直行する。
魔法学院に着くと、カトリーさんをタンカに乗せ呪術学の研究室に運び込む。研究室には、何と言うか、アクの強そうな人達が控えていた。呪術の専門家の皆様だとのこと。
専門家の皆さんはカトリーさんの到着を待ち構えていた様で、嬉々として隷属の首輪の解除に取り組み始めた。私達は別室で待つことにする。さすがのアレフさんも呪術は専門外とのこと。
「殿下たちは大丈夫なんですよね。」
と私が問うと、コルヒさんが答えてくれた。
「大丈夫です。ガスの効き目は短時間ですし、洞窟の外にいた兵士たちに解毒剤を服用した上で救助に向かう様に指示しています。もちろん誘拐犯の捕縛も指示済みです。」
「そうなんですか。それにしてもどうなっているんですか。なぜ殿下の元を去ったはずのアレフさん達がタイミング良く助けに来てくれたんですか? まるで私達の動きを見張っていたみたいに。」
コルヒさんがバツが悪そうな顔で答える。
「それはですね、一言で言うと俺がスパイだったからです。」
「アレフさんに、殿下達の情報を流していたと?」
「はい。」
「なぜ?」
「そ、それはですね。わ、私が....。」
とアレフさんが話始めたが、すぐに先ほどの女性が遮った。
「主任が話すと時間がかかるので、私から説明しますね。
もちろん私達は当初殿下に協力してカトリーナ嬢を助けるためにトロクの町にやって来ました。私達の魔道具をうまく使えばカトリーナ嬢を助けだす役に立つと考えたのです。でも不安もありました、殿下のことです。有名な脳筋殿下ですからね。気の弱い主任を軽く見て、アドバイスに耳を貸さないんじゃないかと。
そこで、殿下と共にカトリーナ嬢を助けるのをプランAとして、念のためにプランBも考えておいたんです。プランBはプランAの実施が困難な時のプランです。プランBでは私達の内、一番殿下に気に入られそうなコルヒが殿下の元に残り、殿下にアドバイスすると共に私達に情報を流すことになっていました。」
「いやー、殿下の気に入られるために、おべっかを言ったり、主任の悪口を並べたりと大変でしたよ。あっ、決して本心で言っていたわけではないですからね。給料が低いのは別にして。」
とコルヒさん。
「ご、ゴメン。僕の交渉力が無いせいで。」
「分かってますって。冗談ですよ。」
とアレフさんとコルヒさんが口を挟んだところで、女性が話を再開する。
「一方で私達は殿下の行動で穴になりそうな所をフォローする方向で活動していました。誘拐犯のアジトに魔力遮断結界が張られていると判ったことから、誘拐犯には魔法もしくは魔術に詳しい人間がいると思われましたので、領都に連絡を取り、エタルナ領に入り込んでいる犯罪者の内、魔法や魔術が得意な人物の選定を依頼したところ、領都から受けた報告は最悪でした。悪名高いアルナーがエタルナ領に入り込んでいたのです。彼は隷属の首輪を使用した凶悪な犯行が特徴です。自分は影に隠れ隷属の首輪を付けた人間に犯行を行わせるのです。
私達はカトリーナ嬢にも隷属の首輪が使われていることを前提に作戦を立てました。隷属の首輪を通して下された命令は術者が死んだ後も有効です。たとえばアルナーが自分が囚われたり、殺されたりしたら自殺する様にカトリーナ嬢に命令しておけば、彼女は救出された後であらゆる手段を用いて自殺しようとするでしょう。私達はアルナーの性格からして、彼が自殺を命令している可能性は高いと考えました。
そこで今回使用した睡眠ガスを用意したのです。もちろん最後の最後まで使用するつもりはありませんでした。あくまで殿下の救出作成が失敗した時の備えとしてです。」
「そうだったんですね。」
すごい、アレフさん達が裏でそんな活動をしていたとは。まるでスパイ映画じゃないか。
でも危なかった。洞窟内での探査魔法でカトリーさんの居場所をつかんだとき、こちらがカトリーさんの方に向かうのではなく、瞬間移動の魔法でカトリーさんを呼び寄せてたら、その場で自殺されてしまった可能性があったわけだ。私がカトリーさんの方に向け走り出したのは単にそこまで考えが回らなかったからだ。聞いていて冷や汗が出た。
「それにしてもタチハさんは何者なんです? あの殿下が一目置いていたそうですし、なにより睡眠ガスと聞いてすぐに理解されましたよね。人体に作用する気体のことなど主任が麻酔用に研究しているだけで、一般には知られていないはずなんですが。」
「いえいえ、私はただの冒険者です。 殿下が気に入ってくれただけですよ。」
危ない、危ない。これで誤魔化せるとは思わないけど、とりあえず話をそらしたい。お願い、これ以上聞かないで~~~。
私の願いが通じたのか、それ以上は突っ込まれなかった。空気を読める人達だ。それにしても、ひょっとしなくてもアレフさん達って、とんでもなく優秀な人達じゃない? ルーテシア様が魔法陣の作成を依頼するだけのことはあるよ。
領都に到着すると、そのまま魔法学院へ直行する。
魔法学院に着くと、カトリーさんをタンカに乗せ呪術学の研究室に運び込む。研究室には、何と言うか、アクの強そうな人達が控えていた。呪術の専門家の皆様だとのこと。
専門家の皆さんはカトリーさんの到着を待ち構えていた様で、嬉々として隷属の首輪の解除に取り組み始めた。私達は別室で待つことにする。さすがのアレフさんも呪術は専門外とのこと。
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