転生魔法使い、現代日本で勇者になる!?

DAI

文字の大きさ
5 / 29
第一章

第5話 襲撃

しおりを挟む
僕らの転生の理由を調べるため、僕は地下室に籠るようになった。
桜花はその間も魔法の鍛錬に明け暮れた。
地下室にある本は、ほとんどが黒魔術や呪術、祈祷など、今の世に伝わっているものや伝説・伝承などで、僕らのいた世界の魔法に通じるものは無かった。
やはり、元の世界のものは、あの魔導書だけしかないのか。
それにしても、何故、あの魔導書だけがここにあるのか?
地下室の本をほとんど調べ尽くしたある日。
床に妙なキズのような線があるのに気付いた。
溜まった埃を払ってみると、そこに何と取っ手が現れた。
僕は、それを恐る恐る持ち上げた。
すると・・・そこは隠し収納だった。
中には、魔導書らしき本が数冊あった。

「桜花!隠し収納を見つけたぞ!これで、謎が解けるかも知れない!」
「やったね。苦労した甲斐があったよ。」
そして、隠し収納の奥になにか棒状の物があるのに気付いた。
「これは、なんだ?」
その棒状の物を掴んで取り出すと、
「これは、魔法の杖だ!」
「すごい!」
「なんで、この世界に魔法の杖が?」
「わかんないけど、早速使ってみたら?」

僕らは魔法の杖を持って家の外に出た。

「さあ、魔法を使ってみて。」
「わかった。」
僕らは安全な広い場所で試してみることにした。
魔法の杖は、僕らが転生前にいた世界で作られた物のようだ。
材料の木は、この世界には無い。
「岩よ、出でよ。ウォール!」
僕は魔法を唱えた。
杖の先が光り、
ゴゴゴゴゴっと地鳴りのような音がして、地面が揺れる。
地面から、大きな土の壁が現れた。
成功だ。
これは本当の魔法の杖だ。
「すごい!さすが、大魔法使いハック!」
「だから、その呼び名はやめろって。。。」
とにかく、これは本物の魔法の杖だ。
なぜ、日本に?


僕らは、隠し収納にあった魔導書やその他の紙片を調べることにした。
魔導書は、中級・上級・特級までが揃っていた。
それ以外は、日記のようなものや、メモ書きなど、特に重要とは思われないものだった。
それにしても、この家の前の主は、どうやって魔導書や魔法の杖を手に入れたのだろう。
まさか、転生者だったんだろうか?
それとも、もっと昔に転生者がいたのか?
謎は増すばかりだ。



そして、僕と桜花が、町に買い出しに出た時に事件は起こった。

この街に1軒だけあるスーパーマーケット「ヨサゲヤ」は、たくさんの食品を扱っている、この町の奥様御用達のスーパーだ。
「桜花、お菓子もいいけど、あまり沢山買うなよ。」
「わかってますよー。あ、このチョコ美味しそう♪」
・・・本当に、わかってるのか?

そんな僕らを影から見ている男がいた。

「あ。アイスクリーム見てくるね。」
「桜花、アイスは一つだけだぞ。」
「はーい。」
まったくもう。。。

その時、桜花の悲鳴が聞こえた。

キャー!

僕はすぐに悲鳴がした場所に駆け付けた。

桜花が男に羽交い絞めにされている。
そして、何か呪文のようなものを唱えている。
これはマズイ!!
僕は直感的に危険を察知した。
あいつは何かしようとしている!

しかし、男は桜花を盾にしていて、こちらから攻撃できない。
僕が躊躇していると
桜花が後ろ蹴りで男の股を蹴り上げた。
男が怯んだ次の瞬間。
「氷よ、出でよ。アイス!」
僕は、攻撃範囲を男に集中して、魔法を唱えた。
魔法が直撃した男はダメージを負ったようだ。
畳みかけるなら今だ!

「また、会おう。」
男が不敵な笑みを浮かべた。

・・・と、男がふっと宙に消えた。
空間移動魔法(テレポート)だ。
何者だ!?
僕は呆気にとられていた。

「ハク!」
桜花が抱きついてくる。
「大丈夫か?桜花?」
「うん。あいつ何者?」
「わからない。。。」

僕らは、家に戻った。
桜花の腕には、小さな傷が出来ていた。
この傷は刃物や腕を掴まれてできた傷ではない。
魔法攻撃による傷だ。
あいつも『魔法使い』だ。
そして、明らかに桜花を狙っていた。
何が目的なのだろう?
とにかく桜花の身が心配だ。

何か、手掛かりがないか、もう一度、隠し収納にあった紙や日記に目を通した。
すると日記の一文に目が留まった。



・・・・・・・・・・

〇月△日。
この世界にきて1年が過ぎた。
魔術や黒魔法の本を読み漁ったが、
ここには魔法は存在しないらしい。
俺だけが魔法を使えるのは、何故だ?

どこか見覚えのある男が突然来て、
お前の力が借りたいと言ってきた。
報酬もはずむという。
どうせ、元の世界には戻れない。
ここで暴れてやろう。
俺は、ここで魔王になるんだ。

・・・・・・・・・・



これは、、、転生者の日記?
だとすれば、魔導書も魔法の杖もこの男のものか。
魔王になるだって!?

僕は、日記のことを桜花に話した。
すると、桜花が過去の話をしだした。
「実は、私、子供のころに拐われそうになったことがあるの。私の予知能力の話を誰かから聞いて、男の人が訪ねてきて。連れて行かれそうになった。」
「それで?」
「私。その時はまだお母さんと一緒だったから、お母さんが守ってくれた。その男は、きっと、私の能力が欲しかったんだと思う。」
「その男か、その仲間が、スーパーに現れたってことか。」
「そうだと思う。」
「だとすると、転生者である『日記の男』が、桜花の能力を狙う謎の組織の仲間になったってことか。」
「ハク。どうしよう。私こわいよ。」
「大丈夫。大魔法使いがついてる。」
とはいえ、今の僕の力では、不安だ。
何とかして魔力強化をしなくては。
相手は自称『魔王になる男』だ。
一筋縄ではいかないだろう。

今のところ、敵の正体も、居場所も分からない。
有効な情報も無い。
ただ、相手が、桜花の予知能力や魔法の力を欲しがっているのであれば、また、襲ってくるはずだ。
桜花には申し訳ないが、しばらく囮になってもらって、敵が襲ってきたら、生け捕りにして情報を吐かせる。
これしかない。
敵がいつ襲ってきても良いように、魔力強化の鍛錬は続けよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

処理中です...