日常ノ怪異 -あなたのスグそばにある怪異-

youtarou323

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2話 高校生と怪異

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 なあ、一緒にメシ食べようぜ。こっちの席使うな。…そういえばさ、聞いてくれよ。昼、食べながらでも良いからさ。あのさ、この間、不思議な経験したんだよ。あ、お前信じてないなー…おら、お前の好きなハンバーグもらうぞ。代わりにうちの唐揚げを進呈しよう。あ、ちょ!お前ー1つだけだろ!そこはさ。

 え?あー不思議な体験?あ、そうそう。ほら俺たち、弓道部の道場でさ。
 終わったら拭き掃除したりさ安土を整えたりするじゃん。道着姿で。
 あれさー袴が汚れないように掃除するの最初は大変だったよなー。それでさ、その日も終わって家に帰ろうとして、皆で帰っただろ?その時、俺、矢筒忘れたって言って道場に戻った時なんだけどさ。うちの道場って、ちょっと体育館から離れているところにあるじゃん。近くまで来た時に、安土に矢が刺さる音がするんよ。あれ?おかしいなーって思って。だって道場内、暗いし、人の気配がないような雰囲気だった。え、誰か暗がりの中、練習しているのかな?って最初は思ったんだよ。だったら、明かりぐらいつければいいのになーって思ってさ。でもうちの道場って活動時間外になったら明かりを消して、帰ることが決まってるから、もしかしたら学校には内緒で、俺たち部員にも秘密にしながら練習している人いるのかなって思ったんだ。その中で、練習しているし、きっと集中してやってるだろうから、声出さずに静かに道場に入ろうと思ったんだ。それで入ってみるとさ。

 射場には青白く光る人型がいたんだ。

 ちょうど会をしているところだった。そして矢も光っててさ。その光の矢が弓で離れて安土に刺さったのな。

 サクッ、って音と同時にさ。

 時々さ、先輩から怒られるじゃん。安土の整備がなってないって。矢の跡が残っているだろって。多分、犯人はこいつ。あ、やっぱりお前信じてないだろーまあ俺でも信じられないもの見たなって思うんだけどさ。え?どんな感じだったかって?そうだなーこれ先生にも言ったんだけどさ。痩せてて、髪の毛は後ろに束ねててさ、あとすっごく射が綺麗だった。あと、多分胸当てをしてたから、女子だったと思う。普通さ、道場はいるとさ皆の顔が見えるような位置に出入口あるだろ?でもその青白く光る女子はさ。

 顔が分からなかったんだよ。

 青白く光っているからってのもあるだろうけどさ。本当に分からなかった。でも目だけは分かった。目は俺たちと同じ黒色をしていたから。それで俺が道場に入ってさ、腰ぬかしちゃってさ。道場のドアのところで。変な汗出たなーマジで。本当に心臓が喉が出るくらいだった。どうしようとか、なにこれ?っていう思いもしなかった。ただ…ただ、怖かった。なにも考えられなかった。射場にいたその…幽霊としようか…幽霊がさ、安土の方に向けてた顔をこっちに向けたんだよ。目が合った。確かに目が合ったんだ。でも…その目に敵意はなくてさ。なんとなく分かるじゃん。ほら、真剣にやってるとさ。なんとなくだけど。その目を見てたらさ、一気に怖さとか緊張とかが溶けるようになくなってきたんだ。なんか、なんていうのかな…こう、別に本当に弓道してるだけですって言う感じでさ。今まで回ってなかった頭が少しずつ回るようになってきてな。まず思ったのが、誰?この子って。そう思って幽霊をずっと見ていたらさ、射場から出る時の動作して一礼をした瞬間、霧のように消えていったんだ。

 あ、夢だったのかなって。その時は思ったんだけど…俺は矢筒を取りに来たんだけど、それも忘れて急いで道場を出て帰った。どうやって家に帰ったのか、誰と帰ったのか、覚えてないんだけどな。気が付いたら箸を持って夕飯の席にいたんだけど…全然食べれなくてさ、風呂に入ってもその光景が頭から離れなかった。それで風呂の時に、考えたんだけど、あの子っていったい誰だったのかなって。シンプルにそう思ったんだ。死んでも弓をやりたかったのかなって。もしかしたらだけどな。本当かどうかは分からないけど、でも間違ってないと思うんだ。

 翌日になって、あの幽霊の事を誰かに聞いてみようと思ったんだ。でも、誰に聞いたら良いのか分からなくてさ。通学している時も電車の中でも、ずっと考えたんだ。そうしたらうちの顧問である永田先生、いるじゃん?そうそう、ナガ先。そのナガ先にさ、とりあえず聞いてみようって思って、昼休みに職員室に聞きに言ったんだ。ほら、俺、職員室に行くからーって時あっただろ?その時なんだけど。

 先生、突拍子ないことを聞くんですけど。って言うところから初めてさ。事の顛末を話したんだ。そしたらナガ先がさ、上を向いて少し泣きそうな雰囲気になったんだ。目元を揉んだり鼻をすすったりしてさ。そんなナガ先、見たことなかったし考えられなかったから驚いたよ、俺。え、どうしたのかな?って思ってさ。そしたら、その幽霊の特徴を聞いてきたのな。身長はこれぐらいだったろ?とか。髪の毛は後ろに束ねてただろ?とか。射は綺麗だったろう。とか弓返りの時ちょっと弓の先端が前を向くだろとか。すべて当ててくるんだ。答えていたらさ、周りの先生も少しずつ集まってきてさ。ぼそぼそと何か話してるんだよ。ちょっと聞こえた声だとさ、多分あの子だ、とか。そうか。とかそんな声が聞こえてたんだ。周りの先生も、何か知っているみたいだったからさ。誰なんだろう?って思ってたんだけど。急に、ナガ先が「今日の部活は休みにする。1年の皆に伝えておいてくれ」って言ったんだ。
 そしたら話は終わりみたいな感じになったから、俺は職員室を出たんだけどさ。出た瞬間に、先輩に呼び止められたんだ。「おい、道場で見たんだって?」って。ほら、田口先輩いるじゃん。3年の。何か、先輩もさ職員室にいたらしくて話が聞こえたらしいんだ。それで先生は詳しいことは言わなかったと思うんだけどってところから始まって。「その青白い子、多分、弓削田だと思う」って言うんだ。

 その日、帰りコンビニの駐車場で先輩と待ち合わせしてさ。詳しい話を聞くことにしたんだ。そしたらさ、その幽霊って言うのがさ弓削田さんって言って、今年の春に…俺たちが入学する時期ぐらいに亡くなったんだって。事故とかじゃなくて、病気で。なんていう病気だったか聞いたんだけど…なんだったけ…なんか筋肉が徐々に動かなくなる病気?みたいなこと言ってた。それでさ、その病気を発症しても筋トレとかしたら、症状が抑えられるっぽくてさ、発症しても弓削田さんは弓道を辞めなかったんだって。それで田口先輩たちが2年生の時にさ、県大会の決勝にいったことあるってきいたことあるだろ?その大会で3人立で落ちの場所が弓削田さんだったんだって。それで、最後の一矢を番えようとしたらさ、矢を落としちゃったんだって。多分、筋力が衰えていたからなのかもしれないって先輩が言ってた。でも、それはしょうがないことだったし、誰も弓削田を責めなかった。

 その日、弓削田さんはずっと泣いて皆に謝ってたって。

 田口先輩が俺の話を聞いてさ、ナガ先と同じように泣きそうな顔をして言うんだ。「もしかしたら、あの一矢をやり直してるのかもな」って。ずっと。もしくは次の大会の為に練習しているのかも。とも言ってたけど。

 よくナガ先がさ、一矢を大事にしろっていうけどさ、このことがあって言うのかもなって思うんだよ。後悔を残してほしくなくて、全力を持って臨んでほしくてさ。それで先輩たちは今年、全国に行ったし。県大会で勝った日さ、お前覚えてる?あの3年の先輩たち誰一人。喜んでなかったし、歓声もなかったよな。当時、これが弓道かーとかって思っててさ。そのことも次いでに田口先輩に聞いたらさ、勝ったその日、その足で、弓削田さんの家に行ってご家族に報告しに行ったんだって。それで仏壇の前で、皆大泣きしたって。

 だから、俺さ、頑張ろうかなって思うんだ。幽霊見た時はさすがに、ビックリしたし、今までにないくらい、動揺したけどさ。その話聞いたらさ、俺もやってやるって思うんだ。

 どうした?なんだよ。お前、泣くのかよ。泣くなよー。…え?俺も?まあな。

 なあ…一緒にさ、全国行かないか。
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