シュペングラーの遺稿

M-kajii2020b

文字の大きさ
5 / 8

第5話 乱数発生プログラム

しおりを挟む
寺山は、診療所近くの馴染みの居酒屋に僕を連れて行くと

「ここは、安くて旨いつまみが有るんだ。」そう言うと、古風なかめに入った焼酎を持ってきて、素焼きのコップに継いだ。つまみは、ナガラミや、マグロのカマ肉やウナギの肝の煮つけ等が出てきた。元々、この店は、うなぎ屋だったらしいが、今では居酒屋兼鴨料理の店の看板を掛けていた。

「その金に興味を無くした金持ち達の事を、聞かしてくれ。」そう言いながら、ストレートの焼酎をグビグビ飲み始めた。此奴も、ストレスを抱えた人生を送っているな、と思いながら

「個人の投資家以外にも、所謂、ワンマン経営の企業家でも同じような傾向だ。まあ従業員を路頭に迷わせるような事態ではないが、自分の利益を気前よく会社や外に分配している。ある投資家は、自分が後生大事にしていた絵画コレクションを公立の美術館に寄付した挙句に、資金援助して入場料をタダにした。別の金持ちでは、頓挫していた、宇宙開発計画に資金提供して再開させたり、その他では、内戦が続いていた小国に、外人部隊を送り込んで停戦させた挙句に、インフラ整備までやりだしている。これまで利害が絡まなきゃ動かなかった大国を出し抜いて、各個人が自分達の善意をばら撒いている状況だ。それでも世界経済はそれなりに回っているんだが。今までこんな金持ちは、裏で何をやって来ていたんだと言わんばかりに、表に出てきて、自分の資金をよく考えられた方法で善意の為に使っている様な感じだ。」ぼくの少々長い話に

「巨大隕石でもぶつかってくるのか?」

「有り得るかもしれないな。俺達が知らないだけでね!でも、そう言う大きなイベントが有れば、資金の流れは一定の方向を向くものなんだが・・・まるでバラバラだ。国家レベルでも、この金持ちの動向に戸惑っている様だ。ただ、違法じゃないし、税金もチャンと収めているから、文句のつけようがない。」

「ふーん、特定の宗教に染まったって感じでは無いな。所詮宗教は金儲けの手段にしかすぎないからな。」

「昔、留学してた頃の話なんだが、AIのアルゴリズムを解析して居た頃、乱数を発生させた行動予測みたいなプログラムで、AIでの未来予知を研究していた時に、例えば高分子やRNAとかだが、体が長いか複雑な奴は、大体酔歩の理論に従って、最初に発生した事象の周りをうろうろしながら、終わるんだ。つまり、図体が大きくて複雑な奴は、保守的てわけだ。突拍子も無い様な行動には出ない。その対象物をだんだん小さく簡略化してやると、モニターの画面一杯に動き回り、ある時突然に一定の秩序、つまり画面の一方向を向いて突き進みだすんだ。ねづみの集団自殺みたいに。でもそのプログラムの条件を少し変えてやると、ある時からその対象物が秩序を持った動きをする。星を書いたり、綺麗な幾何学模様になったりするんだ。その条件て言うのが、このプログラムは有限時間だって言う要素なんだ。つまり、お前たちはやがて死んじゃうよて言う条件で、AIは自分たちの現状置かれている状況を最善の物にしようと努力し始める。」

「ふーん、おもしれいな。悟りでも開いたか!」そんな相槌をしてから、寺山は焼酎を注いだ。

「まあ、人間の場合は、死ぬ事は理解しているから、そんな単純な行動では終わらないと思うけど。」僕らは、学生時代に戻った様な、議論をしながら焼酎を酌み交わしていた。

 大分酔いが回ってしまった寺山は、座敷でごろ寝を決め込んでいたので、僕は、女将に後を頼んでから帰宅する事にした。

「先生は、何時もあんな調子なのよ。」彼奴の扱いは慣れている様だな、と思い、女将にそれなりのチップを渡してからタクシーに乗った。

 明子のアパートから一寸長い寄り道してから、マンションに帰ると、僕も酔いが回っていたので、シャワーを浴びると、直ぐに寝てしまっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

竜華族の愛に囚われて

澤谷弥(さわたに わたる)
キャラ文芸
近代化が進む中、竜華族が竜結界を築き魑魅魍魎から守る世界。 五芒星の中心に朝廷を据え、木竜、火竜、土竜、金竜、水竜という五柱が結界を維持し続けている。 これらの竜を世話する役割を担う一族が竜華族である。 赤沼泉美は、異能を持たない竜華族であるため、赤沼伯爵家で虐げられ、女中以下の生活を送っていた。 新月の夜、異能の暴走で苦しむ姉、百合を助けるため、母、雅代の命令で月光草を求めて竜尾山に入ったが、魔魅に襲われ絶体絶命。しかし、火宮公爵子息の臣哉に救われた。 そんな泉美が気になる臣哉は、彼女の出自について調べ始めるのだが――。 ※某サイトの短編コン用に書いたやつ。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...