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4「白崎探偵事務所」
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小夜高校のある千咲市中心から電車で少し離れた所に、アカネの住む三色町が位置している。
古くはニュータウンとして賑わっていたが、時代が下るにつれて人口流動から取り残され、今ではメインストリートの商店街にさえシャッター店が目立つ。
時代遅れのメインストリートから一本裏に入った道に、ある雑居ビルが佇んでいる。一階には喫茶『ロマンス』が入っており、客単価の悪い常連が疎らに居座っている。その『ロマンス』の脇の階段を上った二階に、『白崎探偵事務所』が居を構えていた。
この何をやっているのか今一わからない探偵事務所が、今のアカネの住処だった。
「ただいまー」
「いらっしゃ……ああ。アカネちゃんか。お帰り、今日は遅かったね」
扉を潜って事務所に入る。アカネの声に反応して、所長の白崎ハガネが書類から顔を上げた。
「今日は色々あったの」
「色々か。その頭に巻いた包帯に関係しているのかい?」
「怪我したの。目が覚めた時に治ってたけど、怪我をしたら治療するものでしょ?漫画で言ってた」
アカネは来客用のソファに座り、テーブルに鞄を放り出す。
頭に巻いた包帯を毟り取って丸めると、少し離れたゴミ箱に投げ入れた。
「ないっしゅ!やるね、私」
アカネの行動に、ハガネはよく分からない表情をする。
「はしたないな。ソファに体育座りするのも良くないし」
「でも、漫画ではこう座ってたよ」
「そうかい……今度、ちゃんと椅子に座っている人が出てくる漫画を買ってくるよ」
ハガネは奇抜でない主人公が、ただただ何事もない日常を浪費するだけの読み物はないものかと思案してみた。
しかしアカネが漫画のどこにどう影響されるか、分かったものではないと思い直す。追加資料の購入は取り止めた。
「ところで、アカネちゃん。怪我とは穏やかじゃないね?事故かい?」
「階段から突き落とされたの」
「階段から?学校でかい?それとも帰り道?誰にだい?」
「学校の階段で!酷いでしょ?誰かは分からない」
「酷いと言うか……興味深いな」
「興味?」
ハガネは事務机に肘を載せ、前のめりになる。
「私が今追っている事件も、女の子が階段やビルから突き落とされる事件なんだよ」
「ああ、そうだっけ。ん?私と一緒……!」
「そうだね。警察の見解としては、似た事件が群発しているだけで、其々に関連性があるとは限らないということだけどね」
「へー」
「どちらかといえば、『それらを個別に全て事故や自殺で済ましたい奴が、警察内部にいる』というのが私の推測かな。だから私に依頼が来ている訳だ」
「そうなんだ!殺さなきゃいけないような巨悪だね」
「……今の所私の予想でしかないんだけどね」
「そっか。ま、所長の推理が外れるなら、所長の骨折り損で済むからね!平和が一番だって、映画で言ってた」
「う……痛い所をつくね。それじゃ、私が穀潰しか死神みたいじゃないか」
ハガネは自分で言ってから、間違いじゃないけどと薄く笑った。
「でも今回の件は、連続する事件である可能性は高いと思っている。そしてアカネちゃんの事件も、一連の動きの内の一つだと私は思う」
「はいはい。というか、事件って程のモノかな?」
先程の鋼の言葉で、アカネのやる気スイッチは切れてしまったらしい。
「突き落としは個別に起きれば、確かにそれ程のモノじゃないけどね。いや、女の子が階段から突き落とされたら、それなりの事件かな?」
「怒るべき?」
アカネの顔が、ばね仕掛けの様にハガネの方を向く。ハガネは少し思案してから、慎重に言葉を吐き出した。
「どうかな?ちゃんと調べてからじゃないと、分からないな」
「分かった!」
「だから話を聞かせて欲しい。私的に、気になる部分があるかもしれないんだ」
「気になる部分?」
ああ、とハガネは答えた。
「アカネちゃんは、学校で突き落とされたんだよね?校舎の中?」
「中。帰る時に、2階から1階に降りる所で突き落とされたの」
「なるほど。益々、興味深いね」
「そうなの?」
「犯罪者の目的に因るけど、学校は侵入に対してのリターンが低過ぎるんだ」
ハガネは咳払いを1つして、アカネに説明する。
「学校に侵入するだけなら、学生服を着たり、保護者や業者のフリをしたり、容姿に合った変装をすれば可能だろう。だが学校内で誰かを襲うとなると、話は変わって来る。母体の人数が多く、建物も特殊な目的をしている場所だ。だから悲鳴の一つも上げられたら、どこから誰が出てくるか分からない。逃走が困難なんだよ。だから部外者が態々学校に侵入して、アカネちゃんを突き落とす正当な理由が見当らない。学校の関係者を突き落とすだけなら、外でやればいいしね。
つまり君を突き落とした者は、どこがどの時間帯に人が少なくなるのかを把握している者。学校関係者の可能性が高いんだよ」
「それはそうだけど、それこそ連続事件とは別件の可能性も高いでしょ。ムカつく奴を衝動的に痛めつけるのは、学生なら起こり得る事案だって、漫画で言ってた」
「確かにそうだ。でも、私がこの事件の容疑者だと思っている人間の内の一人が、アカネちゃんの学校にいるんだ。それが気になっててね」
「気になる人?」
ハガネは立ち上がり、事務机に置いてあったファイルの1つをアカネに見せた。ある男子高校生について、情報がまとめられたファイルだった。
「黒鉄葵を知っているね?」
「クロガネアオイ……アオの事?」
「多分そうだ。君のクラスメイトだからね」
「またアオなの?この前の事件の犯人も、アオって言ってなかった?」
「アカネちゃんは、信じてなかったね」
「証拠が無かった!証拠が無かったら犯人じゃないって、母親が言ってた」
「う~ん……僕達は警察じゃないから、かっちりした証拠は要らないんだけどね。特に彼は、突き落とし事件現場の近くで目撃されている事が多いんだ。全部ではないけど、状況証拠としては十分だ」
「……」
「不満そうだね」
「ん~~ん……」
アカネは淡々とアオの罪を測っていく。
「アオが連続突き落とし事件の犯人で、私も突き落としたって言いたいの?」
「可能性はあるって、頭の片隅に入れて欲しい。また狙われるかもしれないからね」
「う~ん……アオが……」
「突き落とした犯人は、改めて考えてみても黒鉄葵君ではなかったかい?」
「………違う気がする。顔は見てないし」
アカネの反応に、ハガネは少し肩を落とす。
「そうか。では他に覚えている事があったら、出来るだけ詳しく教えてくれるかな?」
「う~~~ん……詳しくって言われても、怪我した直後に眠っちゃったから。でも座ってた背中を蹴り飛ばされた感じはした」
「階段の上で座り込んでたのかい?どうして」
「それは……転がったお弁当箱を拾おうとしてた気がする」
「弁当箱か……」
ハガネは、まだまだ仕事モードで追及する気満々だった。現在追っている事件の被害者かもしれないモノが、目の前にいるのだから当然だ。
しかしアカネの次の言葉を聞いた途端に、ハガネの気合は失せしまった。
「あ!そう言えば、お弁当箱洗わないと」
「い、今からかい?」
「うん。臭っちゃうから」
アカネは鞄から弁当箱を取り出すと、部屋の奥にある洗面台に向かった。
この後、女子高生がお弁当箱を洗うという、なんでもない行為が展開する。だけなのだが、ハガネは慌てて自室へと逃げていった。
「私は奥にいるので、お客さんが来たら教えて下さい」
「分かった!あ、でも私、お弁当箱洗い終わったら、出掛けるよ?」
「なら出掛ける時に、一声かけて下さい。調査に行くんですか?」
「べ、別にアオの様子を見に行くんじゃないんだからね!」
「その変な喋り方は、どこで覚えたんですか?」
「漫画で言ってた!」
「そうですか。変に手を出して、警戒される真似はしないで下さいよ」
「はーい!」
元気良く返事をしながら、アカネは密閉式の弁当箱を開けた。
逃走が間一髪間に合わなかったハガネは、吐き気を催したように口を押さえた。白い顔で自室に駆け込むと、目に涙を浮かべながら扉を閉めるのだった。
古くはニュータウンとして賑わっていたが、時代が下るにつれて人口流動から取り残され、今ではメインストリートの商店街にさえシャッター店が目立つ。
時代遅れのメインストリートから一本裏に入った道に、ある雑居ビルが佇んでいる。一階には喫茶『ロマンス』が入っており、客単価の悪い常連が疎らに居座っている。その『ロマンス』の脇の階段を上った二階に、『白崎探偵事務所』が居を構えていた。
この何をやっているのか今一わからない探偵事務所が、今のアカネの住処だった。
「ただいまー」
「いらっしゃ……ああ。アカネちゃんか。お帰り、今日は遅かったね」
扉を潜って事務所に入る。アカネの声に反応して、所長の白崎ハガネが書類から顔を上げた。
「今日は色々あったの」
「色々か。その頭に巻いた包帯に関係しているのかい?」
「怪我したの。目が覚めた時に治ってたけど、怪我をしたら治療するものでしょ?漫画で言ってた」
アカネは来客用のソファに座り、テーブルに鞄を放り出す。
頭に巻いた包帯を毟り取って丸めると、少し離れたゴミ箱に投げ入れた。
「ないっしゅ!やるね、私」
アカネの行動に、ハガネはよく分からない表情をする。
「はしたないな。ソファに体育座りするのも良くないし」
「でも、漫画ではこう座ってたよ」
「そうかい……今度、ちゃんと椅子に座っている人が出てくる漫画を買ってくるよ」
ハガネは奇抜でない主人公が、ただただ何事もない日常を浪費するだけの読み物はないものかと思案してみた。
しかしアカネが漫画のどこにどう影響されるか、分かったものではないと思い直す。追加資料の購入は取り止めた。
「ところで、アカネちゃん。怪我とは穏やかじゃないね?事故かい?」
「階段から突き落とされたの」
「階段から?学校でかい?それとも帰り道?誰にだい?」
「学校の階段で!酷いでしょ?誰かは分からない」
「酷いと言うか……興味深いな」
「興味?」
ハガネは事務机に肘を載せ、前のめりになる。
「私が今追っている事件も、女の子が階段やビルから突き落とされる事件なんだよ」
「ああ、そうだっけ。ん?私と一緒……!」
「そうだね。警察の見解としては、似た事件が群発しているだけで、其々に関連性があるとは限らないということだけどね」
「へー」
「どちらかといえば、『それらを個別に全て事故や自殺で済ましたい奴が、警察内部にいる』というのが私の推測かな。だから私に依頼が来ている訳だ」
「そうなんだ!殺さなきゃいけないような巨悪だね」
「……今の所私の予想でしかないんだけどね」
「そっか。ま、所長の推理が外れるなら、所長の骨折り損で済むからね!平和が一番だって、映画で言ってた」
「う……痛い所をつくね。それじゃ、私が穀潰しか死神みたいじゃないか」
ハガネは自分で言ってから、間違いじゃないけどと薄く笑った。
「でも今回の件は、連続する事件である可能性は高いと思っている。そしてアカネちゃんの事件も、一連の動きの内の一つだと私は思う」
「はいはい。というか、事件って程のモノかな?」
先程の鋼の言葉で、アカネのやる気スイッチは切れてしまったらしい。
「突き落としは個別に起きれば、確かにそれ程のモノじゃないけどね。いや、女の子が階段から突き落とされたら、それなりの事件かな?」
「怒るべき?」
アカネの顔が、ばね仕掛けの様にハガネの方を向く。ハガネは少し思案してから、慎重に言葉を吐き出した。
「どうかな?ちゃんと調べてからじゃないと、分からないな」
「分かった!」
「だから話を聞かせて欲しい。私的に、気になる部分があるかもしれないんだ」
「気になる部分?」
ああ、とハガネは答えた。
「アカネちゃんは、学校で突き落とされたんだよね?校舎の中?」
「中。帰る時に、2階から1階に降りる所で突き落とされたの」
「なるほど。益々、興味深いね」
「そうなの?」
「犯罪者の目的に因るけど、学校は侵入に対してのリターンが低過ぎるんだ」
ハガネは咳払いを1つして、アカネに説明する。
「学校に侵入するだけなら、学生服を着たり、保護者や業者のフリをしたり、容姿に合った変装をすれば可能だろう。だが学校内で誰かを襲うとなると、話は変わって来る。母体の人数が多く、建物も特殊な目的をしている場所だ。だから悲鳴の一つも上げられたら、どこから誰が出てくるか分からない。逃走が困難なんだよ。だから部外者が態々学校に侵入して、アカネちゃんを突き落とす正当な理由が見当らない。学校の関係者を突き落とすだけなら、外でやればいいしね。
つまり君を突き落とした者は、どこがどの時間帯に人が少なくなるのかを把握している者。学校関係者の可能性が高いんだよ」
「それはそうだけど、それこそ連続事件とは別件の可能性も高いでしょ。ムカつく奴を衝動的に痛めつけるのは、学生なら起こり得る事案だって、漫画で言ってた」
「確かにそうだ。でも、私がこの事件の容疑者だと思っている人間の内の一人が、アカネちゃんの学校にいるんだ。それが気になっててね」
「気になる人?」
ハガネは立ち上がり、事務机に置いてあったファイルの1つをアカネに見せた。ある男子高校生について、情報がまとめられたファイルだった。
「黒鉄葵を知っているね?」
「クロガネアオイ……アオの事?」
「多分そうだ。君のクラスメイトだからね」
「またアオなの?この前の事件の犯人も、アオって言ってなかった?」
「アカネちゃんは、信じてなかったね」
「証拠が無かった!証拠が無かったら犯人じゃないって、母親が言ってた」
「う~ん……僕達は警察じゃないから、かっちりした証拠は要らないんだけどね。特に彼は、突き落とし事件現場の近くで目撃されている事が多いんだ。全部ではないけど、状況証拠としては十分だ」
「……」
「不満そうだね」
「ん~~ん……」
アカネは淡々とアオの罪を測っていく。
「アオが連続突き落とし事件の犯人で、私も突き落としたって言いたいの?」
「可能性はあるって、頭の片隅に入れて欲しい。また狙われるかもしれないからね」
「う~ん……アオが……」
「突き落とした犯人は、改めて考えてみても黒鉄葵君ではなかったかい?」
「………違う気がする。顔は見てないし」
アカネの反応に、ハガネは少し肩を落とす。
「そうか。では他に覚えている事があったら、出来るだけ詳しく教えてくれるかな?」
「う~~~ん……詳しくって言われても、怪我した直後に眠っちゃったから。でも座ってた背中を蹴り飛ばされた感じはした」
「階段の上で座り込んでたのかい?どうして」
「それは……転がったお弁当箱を拾おうとしてた気がする」
「弁当箱か……」
ハガネは、まだまだ仕事モードで追及する気満々だった。現在追っている事件の被害者かもしれないモノが、目の前にいるのだから当然だ。
しかしアカネの次の言葉を聞いた途端に、ハガネの気合は失せしまった。
「あ!そう言えば、お弁当箱洗わないと」
「い、今からかい?」
「うん。臭っちゃうから」
アカネは鞄から弁当箱を取り出すと、部屋の奥にある洗面台に向かった。
この後、女子高生がお弁当箱を洗うという、なんでもない行為が展開する。だけなのだが、ハガネは慌てて自室へと逃げていった。
「私は奥にいるので、お客さんが来たら教えて下さい」
「分かった!あ、でも私、お弁当箱洗い終わったら、出掛けるよ?」
「なら出掛ける時に、一声かけて下さい。調査に行くんですか?」
「べ、別にアオの様子を見に行くんじゃないんだからね!」
「その変な喋り方は、どこで覚えたんですか?」
「漫画で言ってた!」
「そうですか。変に手を出して、警戒される真似はしないで下さいよ」
「はーい!」
元気良く返事をしながら、アカネは密閉式の弁当箱を開けた。
逃走が間一髪間に合わなかったハガネは、吐き気を催したように口を押さえた。白い顔で自室に駆け込むと、目に涙を浮かべながら扉を閉めるのだった。
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