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女ですけどBL世界に転生してもいいんですか?
3:美形に愛され拒否で自殺未遂!?なにそれ、うらやましい<3>
しおりを挟む大混乱。
有象無象。
どう表現して良いのかわからないが、
とにかく、号泣する自称女神をなだめ、
勇の背中をさすり、
悠子はとりあえずその場をなだめた。
施設では長女の悠子が
大騒ぎする子供たちのまとめ役だったが、
そのスキルを発揮できたようだ。
「話はだいたいわかりました」
悠子は二人から話を聞いてうなずいた。
理解できたのは、
これが夢ではないこと。
そして、勇が
自殺をして死んでしまったこと。
つまり今、悠子は
死んだ勇の霊魂(?)と会っているのだ。
自殺をしてしまうほど、
勇はつらかったのだろうか。
なぜ相談してくれなかったのか。
なぜ言ってくれなかったのか。
言いたいことはたくさんあった。
でも、それらの言葉すべてが
勇を傷つけることを
悠子は知っていた。
だから、黙って勇を抱きしめた。
最後に悠子に会いたいと思ってくれたのか。
だから、
会う場所を神様が用意してくれたのだろう。
『いや、そういうわけではないんじゃ』
勇の気持ちに涙していた悠子は
水をさす女神の言葉に顔をひきつらせた。
『いやいや、
その青年の気持ちはそうかもしれん。
じゃが、わしは別に、
親切心でそなたたちを
ここに呼んだわけじゃないのだ』
「じゃあ、どうして私と勇くんを
会わせてくれたんです?」
悠子が聞くと、
勇の体がビクっと揺れ、
女神がまた土下座をした。
『頼む! わしを助けてくれ!』
助けを求めてたのは勇くんじゃなくって
女神様……?
悠子はますます混乱する。
「あの、ね。お姉ちゃん」
勇が辛そうに声を出す。
「愛されないと、
世界が崩壊するんだって」
「……は?」
意味わかんない。
悠子は先ほどまでの
勇に対する愛情や悲しみや、
後悔の念が消えていくのを感じた。
なんだかややこしいことに
巻き込まれた……気がする。
悠子は大きく息を吐きだした。
◆
大きな息を吐いたせいか、
その場はまた、元の静寂に戻った。
そして女神は顔を上げて
悠子のそばに来た。
女神からは、離れた場所では
あまり感じなかった威厳のようなものが
女神の体から溢れているように感じる。
『じつはじゃな…』
女神はゆっくりと話し出した。
『わしは、まだ一度も
世界を完成させたことがないんじゃ』
「……はぁ」
悠子はとりあえず返事をした。
『しかも、今の世界が崩壊したら
わしは女神でいられなくなるんじゃ…』
女神は大きな金色の目を
うるうるさせて悠子を見る。
『これで…また見習いに戻されたら…
わしは…わしは…』
金色の目から涙がこぼれ、
女神はまた、おいおいと泣き出した。
「えっと、その、落ち着いて…」
悠子は女神の手を取った。
「大丈夫です。
私は逃げませんし、
ゆっくりで構いません。
ね、順序良く話さなくてもいいですよ。
何があったか、
お話ししてもらえますか?」
できるだけ優しく、
施設の子どもたちにしていたように
金色の髪を撫でる。
女神は驚いたような顔をして、
そして、くしゃり、と笑った。
「そなたは優しいの。
頭を撫でられるのは気持ちが良いぞ」
女神が嬉しそうな顔をしたので
悠子はほっとして、ポケットから
ハンカチを出した。
涙で濡れた女神の頬を
ハンカチで押さえると女神は
嬉しそうに悠子に抱きついた。
女神…と言うが、神様と言うより
小さな子供のように見える。
……本当に女神なんだろうか。
ふとそんなことを思ったが、
悠子の腕の中で、ぽつりぽつりと
語り始めた女神が話す内容は
確かに目の前の彼女が『女神だ』という
前提でなければ到底、信じられないような話だった。
彼女の話を要約すると、
目の前の女神は
いわゆる新人女神らしい。
悠子たちがいた地球を管理する
師匠というか先輩女神の下で
本人曰く、とにかく長い長い修行をして、
ようやく新しい世界を創る許可が下りたのだそうだ。
ところが、いざ、世界を創ろうと思っても
悩むばかりでうまくいかない。
そこで尊敬する先輩女神の作った世界…
つまりは地球をマネした世界を作ったのだが
やっぱりうまくいかなかったらしい。
『人間たちが、うまく繁栄してくれないのじゃよ』
「はぁ」
切実に訴えてくる女神に
悠子は得意のあいまいな笑顔を浮かべた。
それになぜ、勇や悠子がかかわってくるのか
まったくわからないからだ。
『定められた期間内に成果を上げねば、
また見習い女神に逆戻りになってしまう。
それをなんとか回避したんじゃ!』
可愛い姿で、でも異様に凶悪じみた顔で
女神は悠子を見た。
「大変そうですが…
お役に立てそうにありません」
すみません、と悠子は頭を下げる。
そんな壮大な悩み事は、想定外だ。
『そんなことはないぞ!
だから、おぬしをここに呼んだのじゃ。
のぉ、勇』
女神に名前を呼ばれ、
勇はビクっと体を揺らし、また涙を浮かべた。
悠子は保護欲のまま、
女神から体を離して、
今度は勇を抱きしめる。
「大丈夫。心配しないで。
勇くんはお姉ちゃんが守ってあげる」
いつだって、出会ったころからずっと
悠子はこうしてきた。
施設の子たちがいじめられるたびに、
両手を上げて妹弟たちを守った。
親がいないからと理不尽な態度をとられ、
心無い言葉を投げつけられても、
私は施設の弟妹達の姉なのだからと必死で抵抗した。
それは成人した今でも変わらない。
『うむ、うむ。良い子じゃな』
女神は満足そうに言う。
『では、勇の代わりにそなたが世界を守る。
それでいいかの?』
「ん?」
良くない。
と思ったが、勇の手前、すぐに否定はできない。
「話を聞かせてくれますか?」
悠子は女神を見据えた。
夢でも冗談でもないのなら、
何が起こっているのか把握したいし、
自分にはそれができる権利があるはずだ。
女神はそれはそうじゃな、とうなずくと
手を動かした。
空に円を描くように指が動き、
そこに大きな椅子が現れる。
女神はそこに座ると
『では、話そうか』と
幼い少女を思わせる高い声でゆっくりと言った。
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