【R18】完結・女なのにBL世界?!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

たたら

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女ですけどBL世界に転生してもいいんですか?

9:女神の愛し子と出会い【2】<王子SIDE>

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あの謁見の日から、
金聖騎士団は過酷な旅に出た。


地図を広げ、大きな泉、
大きな森がある場所をひたすら巡る。


だいたい「大きな」泉や「大きな」森の「大きさ」が
どれぐらいのものかもわからない。


「大きい」なんて人間の感覚で判断するのだから
地図で見る泉が大きいのか、
小さいのかよくわからない。


また、何を探しているのかも、よくわからない。


探し物がどんな形をしているのかさえ、
わからないのだ。


ということは目の前にあっても
気が付かない可能性もある。



まぁ、女神の力の結晶というぐらいなので、
気が付かないことは無いとは思いたいが。


「ここもダメか」
宿屋の一室に、
金聖騎士団のメンバーがそろっている。


ヴァレリアンが机に広げた大きな地図に×しるしをつけた。


これで王都付近一帯の泉と森は調べつくした。


馬で3日以内で行ける範囲の場所は
これで終わりだ。


「次はどこに行くか…」


ヴァレリアンのつぶやきに
スタンリーが地図を指した。


ここから馬でも片道10日以上はかかる
かなり遠い場所だ。


「思い切って、ここに行ってみてはどうだろう」


「理由は?」


「ここは禁忌の森だ。
人間は立ち入り禁止となってはいるが、
こういうところこそ、
探してみるのも良いのではないだろうか?」


なるほど、スタンリーが指した場所は、
女神の力が満ちる場所と言われている所だ。


「本気ですか?」


先輩の意見には必ず従うケインが
スタンリーを見た。


ケインはあの枢機卿の息子であり、
神殿出身だ。


女神を崇拝しているからこその言葉だろう。


女神の力が満ちる場所は、
人間が立ち入ることができない禁忌の聖域。


聖獣が住むと言われている
聖なる森なのだから。











私たちは聖域に向かって進んでいた。

ケインは女神の森に行くことに懸念を示したが
より良い場所も見つからず。
結局、ヴァレリアンの決断により、
聖域……禁忌の森に向かうことになった。


禁忌の森は、馬で10日以上はかかる
王都からはかなり遠くの場所に位置していた。


馬の調子を見ながら、
できるだけ長い距離を進むので、
毎回、宿屋に泊まれるわけではない。


野宿をしたり、
時折襲ってくる魔獣や魔物を退治したり。


順風満帆とは言えない道のりを
10日間、必死で進んだ。


聖域の近くまでくると、
小さな村があった。


そこの神殿に寄ってみると、
神官は大歓迎してくれたが、
見せてくれた聖樹は大きな木なのに、
葉は落ち、寂しい風体を見せていた。


聖樹はいつも青々とした葉を
大量につけている印象があったので
この状態は想像以上に世界の破滅を予想させる。


神官にこの辺りで休める場所がないかを聞くと、
かつて貴族が住んでいた屋敷が森の近くにあるので
使ってもいい、と助言をくれた。


今は誰も使っていないので、
そこを使えばいいし、鍵も持っているという。


鍵を受け取る際に、
そもそも、神域の森の近くに別荘など
罰当たりなことをするから、
あんな目に合うのだ、と神官は言っていたので
何かあったのかもしれない。


貴族の屋敷のカギを神官が管理しているというのも
不思議な話だ。


とはいえ、強行軍できたので、
正直、屋根のある場所で眠れるのはありがたい。


私たちは素直に礼を言って、
屋敷に向かった。


途中、食料や水を仕入れる。


「ここ…ですよね?」


屋敷を見た途端、いつも明るいエルヴィンが
嫌そうな顔をした。


かつて貴族が住んでいたという屋敷は、
どうみても「闇の魔素」であふれていた。


私たちが聖騎士だったから良かったものの、
普通の人間が、この屋敷に住めるわけがない。


「闇の魔素」は、大気中にある通常の<魔素>とは違い、
人間が生み出すものだと言われている。


誰かを憎んだり、恨んだりする負の感情が、
大気に混ざる。


その負の感情を持った人間の魔力と交わり、
大気にある魔素と絡み合うことで<闇の魔素>は生まれる。


そしてこの<闇の魔素>が集まると、
魔獣や魔物が生まてしまうのだ。


幸い屋敷には誰も住んでいないので、
人間の魔力をこれ以上混ぜることができないから
魔獣にも魔物も見当たらないようたが、
これをこのまま放置できるはずもない。


疲れ果てていたし、
今すぐに体を休めたい状態だったが、
残念ながら無理そうだ。


「あの神官、この屋敷を浄化したくて
俺たちを騙したんだ」


「エルヴィン、騙したなんて人聞きが悪い。
利用したと言うべきだろう」


と、エルヴィンの言葉を拾いケインが言う。


……どっちでもいい。


そう思ったのは、私だけではなかったようだ。



ヴァレリアンが「ちゃっちゃと終わらせるぞ」と
一声かけると、私たちは一斉に屋敷の浄化に取り掛かった。









浄化は聖魔術を使う。


聖騎士団の入団には聖魔術が使えることが必須なので
全員、もちろん浄化をすることはできるのだが、
聖魔術を使うには<聖なる魔素>が体内にあることが条件だ。


そして、使った体内の魔素は、
大気中にある魔素を取り入れることで補充される。


ところが。
聖樹が弱っていたせいか、
それとも世界の崩壊が近いのか。


私たち金聖騎士団全員で屋敷を浄化したものの、
今度は魔力がなかなか回復しない、という
状況に陥ってしまった。


魔素の補充は、心臓が勝手に動くのと同じで、
体が自然に補充していくものだ。


積極的に目当ての魔素を大気から探して
取り入れることもできず、
私たちはため息をついた。


すぐに森に探索に行くつもりだったが、
魔力が無い状態では、さすがに危険だ。


「仕方ない。
焦って失敗するよりは
しっかり休んで動いた方がいい」


ヴァレリアンはそう言い、
明日まで休息することを決断した。


もうすぐ日が暮れる。


私たちは各自部屋を決め、食事をとった。


さすが元貴族の屋敷だけあって、
各部屋には風呂が付いており、
お湯や水などの生活に必要な魔石もまだ残っていた。


10日ぶりの湯殿に、ベットだ。
うれしくないはずがない。


休む前に、屋敷に最低限の結界を張り、
明日の行動の確認をして、
私たちは体を休めた。



明日こそは、
女神の力の結晶を手に入れたい。



ただそれだけを願い、
私は眠りに落ちた。







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