【R18】完結・女なのにBL世界?!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

たたら

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BとLの世界は厳しい激エロの金字塔だった

27:お風呂って激エロですよね?<ヴァレリアンSIDE【2】>

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たぶんだけど、と
カーティスは俺たちを見た。

「ユウは、この体に慣れてないのだと思う」

「慣れるとは?」

俺は意味が分からずに素直に問う。

「ユウは…一番最初に湯殿に案内したとき、
一人では何もできない…というより、戸惑っているようだった。

体を洗うのも、そうだ。

自分の体なのに、自分で触れるのをためらうように。
怖がるように触っていた」


心当たりがあるのだろう。
ユウの体がビクン、と揺れた。

「ユウの体は、少し触れると甘い匂いがするようになった。
私は、その匂いに媚薬効果があることにも気が付いていた」

王族は幼少期から様々な毒を摂取して体を慣らしているからね、
と、カーティスは軽い口調で言う。


「だからね、私が教えてあげてたんだ。
人間の体のことを。

そうじゃないと、ユウは何もわからないまま…
もしかしたら、ユウが嫌かどうか考えることもできずに
誰かのものになってしまうかもしれないだろ?」


自分の意志じゃないのに、
こんなに甘い匂いをさせてしまうんだもの。


どうやったら甘い匂いをさせてまうのか、
気づいてもらった方が良いと思って。


なんて、もっともらしい理由で、カーティスは
ユウの体に触れたことを正当化する。


だが、その話も一理あるとは思った。
もしユウがこの体のことを何も知らずに…

性的なことを一切知らずに、あの王宮に戻ったとしたら。

いいかげん【女神の愛し子】という権力闘争の渦に
巻き込まれそうだというのに、
さらにヤヤコシイことになっていたかもしれない。


「そうだな、確かに教えるのは必要だろう」

スタンリーが湯の中で動いた。

「だが、それ教えるのは、お前である必要はないだろ?」
スタンリーがユウの腕を引っ張り、自分の膝の上に乗せた。


スタンリーが他人に対して積極的に動くところを初めて見た気がする。


「でも、ユウの世話係は私なんだから、
私が教えるべきだと思うが?」

カーティスはユウを取り戻そうと手を伸ばす。

俺はそんな二人のやり取りを見て、
わかった、と声を出した。


覚悟は決めた。
もとより、そういう選択肢しかないと思っていた。


俺は二人の腕の中にいるユウを引っ張り出した。

そして抱き上げて、先に湯から上がる。

俺は二人を見下ろして、ユウをしっかりと抱っこする。
子どもの扱いと同じだったが、この方が性的な意味合いが少なくなり
二人も冷静になるだろう。


「おまえら、ユウをあきらめるつもりはないんだろう?」
もちろん、俺もだ。

「俺は、おまえらを身分も、地位も関係ない。
命を掛けれる、背中を預けることができる親友だと思っている」

カーティスもスタンリーも、俺を見た。
強い、意思を持った瞳だ。

俺の言いたいことも、もうわかっているだろう。

「俺と一緒に、ユウを守るか、
それとも、ユウを挟んで親友とやりあうか、どっちだ?」

「……だから、ヴァレリアンには叶わない」
カーティスが不満そうに、けれども小さくつぶやいた。

「そうですね、だから我らの団長といったところでしょうか」


スタンリーも肯定の意志を表す。

「ユウ」

俺はユウを見た。


ユウはおろおろと
俺の腕の中で視線を彷徨わせている。

本人に意思確認もせずに、
話だけがどんどん進んでいる状況で
ユウはわけもわからないのだろう。

だた真っ赤な顔のまま、
ユウは俺の顔を見つめてきた。


視線が絡むだけで、下半身に熱がこもる。


それを押さえつけ、俺は片手でユウの体を支え、
のこった手でユウの顎を掴んだ。

「今日からユウは俺たち3人のものだ。
いいな。

お前が誰かを選ぶまで、俺たちがお前のそばにいる。
俺たちがお前を守る。

だから…お前を愛し、触れるのを、許してくれ」


本当は俺を選べ、と言いたかった。
けれど、今の状況では無理なのはわかっている。

そして本当は。
本当は俺だけのものにならないのなら、
せめて俺たち3人だけのものにしたい。


俺たちだけの「愛し子」になってくれと、
ユウに触れるのは俺たちだけだと、
言いたかったかった。


けれども、それもできなかった。
何故ならそれは、ユウの未来を潰すことになるからだ。


これからユウがどうなるか、誰にもわからない。
ユウが誰かを愛する可能性だってある。


……ここにいる3人以外の人間を。


その時に俺たちが今、
ここでユウを束縛する誓いを立てたら
優しいユウのことだ。
それに従ってしまうかもしれない。


それだけは避けたかった。


無理やり一緒にいるのでは意味がない。
ユウが望み、ともに或ることが大事なのだ。


今は意味が分からなくてもいい。


ユウに触れる許可を、ただ、与えてほしい。


たとえ【女神の愛し子】であるユウに触れることが、
不敬となり、女神から罰を与えられたとしても。


ユウはじっと俺を見つめ、
そして、カーティス、スタンリーへと視線を移していく。

俺が伝えた意味を理解してくれただろうか。

カーティスが言うには、
ユウは人間の体に慣れていないらしい。


いきなり「俺たちのものだ」などと言われ
理不尽だと怒るかもしれない。

俺たちの…俺のユウを抱きたいと言う欲が
どんなものか、わからないかもしれない。

けれど、ユウに拒絶だけはされたくない。

そんな俺の気持ちが伝わったのだろうか。

ユウは俯き、
そして俺の腕をぎゅっとつかんできた。


「わかり…ました」


ユウは、絞り出すように言い、
顔を上げ、俺を見た。


「皆さんがそれを望むなら…」


ユウは笑った。

優しい、すべてを赦すかのような顔だった。


あの時、俺たちを信じると。


たとえ俺たちがユウを裏切ったとしても、
俺たちの決断を尊重し、すべて受けとめると言ってくれた、
あの時と同じ信頼と慈愛に満ちた顔だった。


俺はたまらず口づけた。
柔らかい唇に触れ、たまらずそれを吸い上げる。


「おい、ヴァレリアン」


不機嫌なカーティスの声が聞こえたが無視することにした。

だが、すぐに湯から上がってきたスタンリーに
ユウを取られてしまう。


「ここでは風邪をひいてしまう。
ユウ、部屋に戻ろう」


スタンリーに抱っこされたまま、
ユウはうなずいた。


俺たちが何かを言う前に、
スタンリーはユウの体を器用に片腕で拭き、
カーティスが準備していたのだろう、
置いてあった大判のタオルでその体を包んだ。


そんなスタンリーを見ながら、
俺たちは急いで体を拭き、
身支度をしたが間に合わなかった。


気が付いたときは、
ユウはすでに服を着たスタンリーに連れ去られていた。
行先はおそらく寝室だろ。


スタンリーはユウとともに先に風呂場を出て行ってしまった。


その背を視線で追い、
俺はカーティスを見た。


「本当にいいんだな?」


先ほどの俺の提案は、
俺たち3人でユウを愛するということ。


この世界では珍しいことではない。


だが、カーティスは王族だ。


俺やスタンリーと同じように、
というわけにはいかないかもしれない。


そんな俺の考えを読んだのだろう。
カーティスはにやり、と笑った。

「このままだとユウを独り占めできそうにないし、
構わないよ。

私も、君とスタンリーなら、
ユウを任せるに値すると、信頼している。

もし今後、何かが起こったとき。
私一人の命では、ユウを救えない時がくるかもしれない。

その時、君たちがユウのそばにいてくれると
わかっているだけで安心できる」


俺は、そうか、と短くこたえた。


カーティスの考えは、俺も同じだった。
おそらく、スタンリーもそうなのだろう。

俺たちの家は、権力、という意味では
それなりに持っている。

そして俺たちは王直属の金聖騎士団だ。


俺たち3人が保護をすれば、
わざわざユウにちょっかいを出すような
命知らずは、おそらく、そうはいないだろう。


俺たちが3人集まれば、
ユウにとっては、かなりの盾になる。

だが、本当の不安はそんなものではない。


<この世界の崩壊>という未知なるものに立ち向かう今、
何があってもおかしくはない。


この3人のうちの誰かが、
命を落とすかもしれない。


そして、考えたくはないが
【女神の愛し子】のユウだけが犠牲となり、
この世界が救われる。

そんな未来だってありえるのだ。



そんなことは、絶対に許さない。
だからこそ、俺は命を預けるに値する2人の親友たちと一緒に、
命を懸けて護りたいユウを、守ると決めたのだ。


一人ではユウを守れないかもしれない。
けれども、3人ならきっと。


……もし、誰かが欠けたとしても、
きっと、ユウを助けることができる。

そう信じている。


身支度をしたカーティスが、俺の肩を叩いた。

「行こう」

「そうだな」

言わなくても、
俺のことを理解してくれているカーティスが、
頼もしく思える。

だが、そんな言葉は、言わない。

「急ぐか、スタンリーのやつ、先走りそうだしな」


軽口をたたくと、カーティスが確かに、と
本気の顔をしてうなずいた。


「ユウの【初めて】は私が貰う予定だったのに」


それは誰が決めたのだと突っ込みたかったが
それはあとで、と、俺もカーティスに続く。


ユウの甘い匂いは随分と薄まったが、
それでももう、俺の理性は限界を迎えそうだったのだ。




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