【R18】完結・女なのにBL世界?!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

たたら

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愛とエロはゆっくりはぐくみましょう

40:大きいクマさんは肉食にも草食にもなれる<バーナードSIDE【4】>

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俺はずっとユウを見つめていた。

俺は今、宿屋でユウと同室だった。


ユウの目が覚めるまでは、
この村から動けなかったし、
俺も傷はユウが治してくれたものの、
まだ本調子ではなかったので、
ユウの護衛を兼ねて同室になったのだ。


この案は、カーティス以外は
本心はどうあれ、賛成してくれた。

やることは山積みだったし、
日々の鍛錬を怠れば、生死にかかわる。

それは今回の件で身に染みたことだった。

だから俺も、室内でできるトレーニングをして、
少しでも本調子に戻れるよう調整している。


だが。
カーティスだけは、しょっちゅう部屋に顔を出す。

ユウの世話をするのは私だけだとか、
寝顔を見ていいのは、私だけだとか。

こんなにカーティスが独占欲が強い男だとは
全く知らなかった。


俺は、ヴァレリアン、カーティス、
スタンリーとともに、訓練生の頃、
同じ教官の下で学んでいたことがある。


3人とも俺より優秀で、
さっさと聖騎士団になってしまったが、
別にうらやましいとか思ったことは無い。


俺は騎士として国を守っていこうと思っていたころ、
ヴァレリアンが俺を聖騎士団に推してくれて、
結局、金聖騎士団の一員になった。


俺は騎士としてはヴァイオリンとは
同期のようなものだったが、
仕事の時には、ヴァレリアンのことを
必ず団長と呼ぶようにしていた。


俺たちは、団長に命を預けている。


カーティスは三番目だが王子様だし、
スタンリーは宰相の息子だ。

ケインは、ヒヨコだが、祖父が教会の教皇で
父親は枢機卿でもある。


はたから見ると、権力が乱立し、
命令系統が乱れがちなメンバーを
統率して指揮するのは、団長だけだ。


だからこそ、
個人の感情や意見で隊列が乱れないよう、
家柄や権力で、個々の能力がぶれないよう、
俺はヒヨコたちの前ではことさらに、
ヴァレリアンを団長と呼ぶのだ。



ヴァレリアンはそんな俺のことにも気づいていて、
たまにだが、労いの言葉をくれる。

おもに、ヒヨコたちの扱い関して、だが。



俺は目を覚ましてから、
ずっとユウに何を言うか考えていた。


考えて、ぐるぐると思考を回して。

でも、ユウは一向に目を覚まさない。


俺はだんだん怖くなってきた。

このままユウが目を覚まさなかったらどうしようかと。

あの時、俺がユウに命を助けられたから、
ユウの力が尽きてしまったんじゃないかとか。


俺に力を割かなければ、
ユウの負担は軽かったんじゃないかとか。


嫌な考えが頭から離れずにいた俺は
ユウのための水差しの水を替えにきたとき、
食堂にいたヴァレリアンに声を掛けてしまった。

「ヴァレリアン……団長」
自然と、団長、と呼んでいた。

迷っているのだ、俺も。
団長に指示してほしい。

命じてくれたら、気が楽になる。


ヴァレリアンは俺を見ると、
「座れ」と言いながら、自分も食堂の椅子に座った。

俺もその前に座る。

「どうした? ユウのことか?」

言葉に詰まると、だと思った、と言われた。

「どうして…?」

「お前の様子がおかしかったからな。
ユウに助けられたのは、俺たちも同じだ。

だが、お前の様子だけは、違うような気がした。

ユウと同室にして欲しいと言った時もそうだった」

そうか。
俺は、そんなに挙動不審だったのか。

「俺は…たぶん、あの時、死んでた…はずです」

俺は、思っていることをヴァレリアンに吐き出した。

「死んだやつを蘇生するなんて、普通の聖魔法では考えられない。
ユウは、俺に自分の……命を削ってまで、助けてくれたんじゃないかと」

だから、目を覚まさないんじゃないかと、俺は呟いた。

ヴァレリアンは、そうか、と言うだけだった。

命令も、指示も、何もない。

「で、お前はどうしたいんだ?」

ヴァレリアンは俺に聞いてきた。

「ユウに命を助けられて、それでどうしたい?

たぶん、ユウのそばにいたら、
あんなことがまた起こる可能性は十分にある」


また、あんな魔獣と戦うのか。

「バーナード、お前は以前、俺たちに
騎士になった理由を話してくれたな」


そういえば、そんなこともあった。
この国やこの世界を、この手で守りたいと。

「その気持ちは、まだあるか?
ユウの傍で、まだ戦えるのか?」

また、あんな魔獣と戦う…。

そうか、ヴァレリアン団長は、
俺の覚悟を聞いているのか。


戦うか、逃げるか。

守るか、守られるか。


「俺は…」


ぐっと、こぶしを握った。


正直、またあの魔獣と戦うとしたら、怖い。

この前は何も知らなかったから、
恐怖とも戦えたが、


一度あの魔獣と相まみえた今は、
あれが魔法も剣も全く効かない、
恐ろしい存在だと俺は知っている。


怖くないはずがない。
戦いたくないに決まっている。


だが、俺は。


守られるより、守ってやりたい。

俺より小さな生き物たちを。

俺の大切な人を、俺を大切に思っている人たちを。

「戦います。ユウも、守ります。
そのための、盾役ですから」

俺は、笑って見せた。

ヴァレリアンはそうか、とうなずく。

「ユウの力は、とにかく規格外だ。
まだ王にも言わないように、
カーティスにも釘をさしている。

本人の目が覚めてからまた話し合う必要があるが、
本当に死んだおまえを、この世に引き留めたのだとしたら…

そんな力があると知られたら、
どうなるかあまり想像したくない」


確かに。
しかも、をして生気を取り戻すのだ。

ユウの見た目も考慮すると、
権力争いに巻き込まれるだけでは
済まないかもしれない。


絶対に俺が、守る。


「あ、だが、ユウは俺のもんだから、手を出すなよ」

とヴァレリアンは俺に釘を刺した。


「出しませんよ、俺には愛する婚約者がいるの、
知ってるでしょ?」


「わかってるが、ユウは別格だからな」

なんて少し照れたように言うヴァレリアンの姿は珍しく。
そして俺は「別格」の言葉に大いにうなずいて、
ユウの待つ部屋へと戻ったのだ。




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