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愛とエロはゆっくりはぐくみましょう
57:宿屋でくまさんと二人きり
しおりを挟む私はバーナードの膝で甘えまくり
話疲れるほどおしゃべりしてから
膝から下してもらった。
重かった?
って聞いたけど、バーナードは
全然、と笑ってくれた。
安定の頼れるお兄ちゃんだ。
なんとなく窓を見ると、
もう夕刻…夕飯の時間だ。
「ユウ、一人で留守番できるなら
俺は何か食べれるものを調達してくるが
どうるする?」
と聞かれた。
いつもはヴァレリアンがいたから
宿で待ってたけど、どうしよう。
22歳にもなって
一人で留守番ができないなんて
言えないが…言えないが。
独りぼっちは、
なんとなく心細い。
そんな気持ちが顔に出てたのか
「一緒に行くか?」と言われ、
私は頷いた。
ちょっと恥ずかしくて、
うん!って大きな声で返事は
できなかったけど…
誘ってもらえて嬉しかった。
私はヴァレリアンが置いて行ってくれた
大きなフードをかぶって、
髪と顔を隠す。
ついで、バーナードが
外に出るタイミングで私を抱っこしてくれた。
バーナードは背が高くて歩幅も違うので、
じつは抱っこしてもらうのが
一番、効率がいい。
最初は恥ずかしくて
一人で歩く!と主張したけれど。
人混みは苦手だし、
抱っこしてもらった方が
<子どもと保護者>として
周囲から見てもらい、
何かと便利なこともわかってきて、
私は素直に抱っこされるようになった。
バーナードはシャツとズボンといった
簡素な服装をしていたが、
剣だけは身に着けていて、
シャツの上からでも
彼の鍛えた筋肉がよくわかる。
盾役…一度だけ、バーナードに
怖くないのか、って聞いたら、
「そりゃ怖いさ」と笑って言われた。
でも、大事な仲間を守るのが
俺の誇りだから、って。
誰も自分より先に死なせないって、
そう笑顔で言われて、
私はなんて強い人なんだろう、って思った。
私はーーーこの人の強さに憧れている。
私も勇くんや施設の弟妹たちを
必死で守ってきた。
頑張ったと思う。
でも、バーナードみたいに
純粋な気持ちではなかった。
【誰かの役に立つ自分】という役割が欲しくて、
物凄く利己的な理由で、私はみんなを守り、
親切にしていた…つもりだった。
私がもっと、バーナードのように
優しく、強かったら…。
私も勇くんも、あんないびつな関係には
ならなかっただろう。
私はバーナードの首にしがみつく。
一緒にいたら、この人の強さの【源】を
私も学べるかもしれない。
私も…今度は間違えることなく、
この世界を、大好きになった人たちを
守りたい。
「どうした? 疲れたか?」
私がいきなりしがみついたからか、
バーナードがそんなことを聞いてくる。
私は首を振って、お腹すいた、って
短く答えた。
バーナードは笑って
「じゃあ、肉でも食うか」って言う。
でも固い肉と素材の形が生かされた姿肉は
ちょっと苦手だったので、
「やわらかいので」と言うと、
わかってる、と言うかのように
バーナードに頭を撫でられた。
二人で入ったのは、
小さな小料理屋だった。
酒場のような場所は、豪快な肉料理が
食べれるらしかったが、
私は豪快なごはんを食べるより、
大きな男の人たちに会わない方が
嬉しかったので、女性客が多そうな店にしてもらった。
案の定、店に入ると
優しそうなおかみさんが一人で
店を切り盛りしていて、お客は全員、
家族連れだった。
大きな体のバーナードは
ちょっとだけ浮いていて、
ごめん、と内心、謝っておく。
おかみさんおおすすめのシチューを食べ、
バーナードはお酒と、やっぱり肉…
大きな良くわからない獣の姿肉を食べた。
いや、弱肉強食の世界だし、
命をいただいてい生きているのは理解している。
でも、ちょっとグロい。
言わないけど…。
私がバーナードはをじっと見て、
かじっている肉を見ては
顔を背けるので、バーナードは
不思議そうな顔をした。
「食べるか?」
って聞かれて、慌てて首を振る。
「じゃあ、こっちか?」
と聞かれて、お酒のカップを見せられた。
じつは、興味は、ある。
居酒屋バイトをしていた時には、
仕事の後、店長さんと良く飲んでいた。
ボトルキープをしていた常連さんが
転勤になったり、引っ越ししたり。
いろんな理由で不要になったお酒を
飲ませてもらっていたのだ。
以前、ちょっとだけ果実酒を
飲んだ時も平気だったし、
勇くんの身体も
お酒を飲んでも大丈夫そうだった。
なら…ちょっとぐらい、
飲んでもいいかも。
私は頷いて、ちょっとだけ、と
バーナードのカップを貰って、
ぺろり、と舐めた。
えーっ。
美味しいー!
驚いた。
だって固い肉とか、
姿焼きとか。
どうみても大雑把な料理しかなかったのに、
なんでこんなにお酒が美味しいわけ?
女神ちゃんのせい?
あの女神ちゃん、食べ物より
お酒を好むタイプだったの?
私の頬が緩んだのを見て、
バーナードは「美味しかったか?」
と聞いてきた。
素直に美味しかった!
って返事をすると、バーナードは
私の分もお酒を注文してくれた。
なんてすばらしい!
カップの中は、ちょっと茶色くて…
匂いはウイスキーみたいな匂いだった。
口に入れると樹の匂いが少しして、
甘い果実酒も美味しかったけど、
これはちょっと大人の味がする。
氷がないのが残念だけど、
これをロックで飲んだら
物凄く美味しいかも。
じっくり味わって飲むと、
花の蜜のような甘さが口の残る。
……美味しい。
バイト先の店長さんに飲ませてあげたい。
シチューを食べ終わっても、
カップの中のお酒をちびちび飲んで
味わっていたら、バーナードが
笑いながら「そんなに気に入ったのなら
宿でも飲むか?」と聞いてくれた。
あまり外で長居はしたくないけれど、
宿屋で飲むならいいだろう、と言うのだ。
私は喜んで、お願いします!って
返事をする。
バーナードは会計の時に
お店のおかみさんに何やら話をして、
お酒の瓶を一本貰ってくれた。
私はお酒の瓶をしっかり抱きしめて
バーナードに抱っこされる。
お酒の瓶は一升瓶ぐらいあったけど
別に今日、飲み干さなくてもいいもんね?
じっくり、ちびちび、毎日飲もう。
私は嬉しくなって…
この後、とんでもないことになるなんて
この時は予想すらできなかった。
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