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番外編<SIDE勇>
41:エピローグからの…エロ?
しおりを挟む真翔さんからの
プロポーズを貰ってからも、
僕の日常は変わらなかった。
相変わらず工場で働いて、
夜は居酒屋でバイトをした。
真翔さんは勉強が忙しくなったみたいで
前みたいに毎日のお迎えは
なくなったけれど。
代わりに、教えてもらった
メッセージアプリを使って
しょっちゅう連絡を取っている。
休みの日は、真翔さんと
一緒にお出かけをするかわりに
僕は真翔さんの家に
おじゃまするようになった。
真翔さんのお母さんと一緒に
お菓子を作ったり、
料理を教えて貰ったりしている。
悠子ちゃんとは
連絡を取ることはできてないけど
僕が幸せを感じるたびに、
あの公園の花は数を増やしているし、
僕はそれで満足していた。
あの花は…いつまでたっても
枯れなかった。
不思議ねぇ、なんて
真翔さんのお母さんは
買い物帰りに公園の花を
見かけるたびに呟いている。
そして僕は
真翔さんのためにお守りを作った。
あの公園の花を押し花にして、
栞にしたんだ。
真翔さんの試験が
上手くいきますようにって。
そして、
僕が助けてもらったように
真翔さんも、もっと幸せに
なれますように、って。
真翔さんは物凄く喜んでくれて
参考書に挟んで使ってくれているみたい。
やがて試験の日が来て、
僕と真翔さんは一緒に合格発表を見にきた。
本当は合否をネットで見れるみたいだったけど
「一緒に見に行こう」って
真翔さんが誘ってくれたんだ。
「こういうの、雰囲気も大事だろ?」
なんて真翔さんは笑う。
きっと自信があったんだ。
そうじゃないと、
見に行こう、なんて言わないもんね?
そして…
張り出された合格の番号を見て。
真翔さんは僕に優しいキスをしてくれた。
「ユウ、生涯変わらず愛することを誓う。
だから…俺と結婚してください」
僕は…やっぱり、涙腺が弱い。
はい、ってちゃんと言えただろうか。
真翔さんは僕をぎゅーぎゅーと
抱きしめてくれて。
「でも、もう少しだけ
待っててくださいね」
って僕は言う。
「もう少し…?
俺がちゃんと就職するまで?
それとも、
弁護士として独り立ちするまでは
結婚しないってこと?」
真翔さんが不満そうに言う。
そうじゃなくて、
悠子ちゃんに僕が幸せだよって
伝えるまでです、って
言おうと思ったけれど、
そんなのいつになるか、わからない。
だから僕は曖昧に笑った。
でも、今すぐの結婚は
心の準備ができてないので
無理だとは思う。
だから…
「僕の心の準備ができるまで、です。
いいですか?」
って聞いてみた。
そしたら真翔さんは
「……本気か。
それじゃ一生できない気がする。
やっぱりここは
既成事実を作るしか…
強引に進めないと
悠子ちゃんは絶対に無理だしな。
俺がいないと生きれないぐらい
調教するとか、
それとも…」
ってなんか、聞き取れないぐらい
小さな声でぶつぶつ言っている。
「真翔さん?」
不安になって真翔さんを見ると、
真翔さんは物凄く笑顔になった。
「いいよ。
そしたら、明日、悠子ちゃんが
俺と結婚したくなったら
明日結婚してもいいってことだよね?」
「え?
え。え。え?
……そう…なるのか、な?」
そんな急には
心の準備はできないと思うんだけど。
「わかった。
じゃあ、結婚式の準備とかしておこうよ。
式場の下見とか、
悠子ちゃんのドレスとか」
「え?その、でも…
そんなすぐには…その」
「大丈夫。
急に心の準備ができるかも
しれないだろ?」
って、言われて、
そうかもしれないけど、
そんなこと無い…ような気もする。
行こう、って手を繋がれる。
でも、いいか。
こうしてちょっと強引で、
僕のことで張り切ってくれる
真翔さんは、じつは僕は大好きだ。
だから僕は
真翔さんの手を握り返す。
「ずっと一緒にいましょうね」
僕の言葉に、真翔さんは
振り返って、僕の好きな笑顔で
「当たり前だ」って笑った。
「絶対に放さないから」
って指に力がこもる。
嬉しくて。
僕は。
何度も泣いて、何度も笑ったけど。
たぶん、生きていた中で
一番の笑顔を浮かべたと思う。
「はい!」
って返事をして、真翔さんに抱きつく。
僕も絶対に放さない。
大事なこと、沢山わかったから。
もう、愛すること、愛されることを諦めない。
自然に唇が重なって。
僕たちは一緒に歩き出した。
勇でもなく、悠子ちゃんでもない。
新しい僕と、真翔さんと。
新しい人生をこれから一緒に
生きていくんだ。
<完>
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