【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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子ども時代を愉しんで

2:主人公は俺?

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 俺が目を覚ましたと
乳母らしき人が大騒ぎをした後、
俺は医者と一緒に部屋に
駆け込んできた家族と会った。

恐らく、父と母と兄、だと思う。

同じ銀色の髪と、
碧い目だったからだ。

兄はまだ中学生ぐらいだと思う。

美形家族だと思ったし、
どこかで見たような顔だと
思うのだが、名前などは
全く思い出せない。

俺が素直にそう言うと、
俺の母らしき女性は泣き崩れ、
その細い身体を支える父らしき男性も
辛そうな顔をしている。

それに。

「ほんとに?
僕のこともわからないの?
お兄様だよ」

と目にいっぱい涙をためた
美形少年が俺を見つめるのには参った。

罪悪感が半端ない。

狼狽える俺や家族を制したのは
白衣を着た医者だった。

「まずは怪我の治療をいたしましょう」

冷静な声に、
俺の家族らしい人達は頷き、
一旦、部屋の外へと出る。

俺のそばには年配の医者と、
その助手らしき青年だけが残った。

医者は青年に声を掛けつつ
俺の頭の包帯を取り、
怪我の様子を見て消毒をして
新しい包帯を巻いていく。

怪我は頭だけではなかった。

かなり酷い状態で落ちたらしく、
服を脱ぐと肩や腕、足までもが
大きくはれ上がっていた。

これでは当分、
歩くのもままならないだろう。

それにしてもよく生きていたと
思うような怪我だと思う。

骨が折れていないのは
奇跡だと医者が言ったが、
本当にそうだと思った。

医者は青年に俺の腕や足に
湿布のようなものを貼るよう
指示を出す。

俺は包帯を変えてもらいながら
医者の質問に答えていくが、
言えることは「何も覚えてない」
ということだけだ。

何せ自分の名前すらわからない。

俺の言葉に医者は辛そうな顔をした。

「かなり高い場所から
落ちたのでしょう。

そのショックで心因的に
記憶を失ったのか
それとも頭を打ったことで
記憶をなくしたのか……

まずは体の怪我を治すことに
専念いたしましょう。

記憶のことはそれから
考えていくのが良いかもしれませんな」

その言葉に俺は素直に頷いた。

それから青年が扉を開けて
家族たちを部屋に招き入れる。

医者は青年に言って薬を出し、
飲むタイミングや容量を告げていく。

それから俺の記憶のことは
身体の傷が癒えてから
考えましょう、と言葉を締めくくった。

医者と青年が部屋を出ていくと、
部屋には家族と乳母だと言っていた
年配の女性。

それから年若い女性が1人残った。

年若いと言っても20歳ぐらいだろうか。
どこかで見たことがある。

どこだっけ。

そう、確か……

「イクス」

俺が額に指を押し当てていると
父……らしき男性が俺を見た。

「君の名はイクスだ。
私と妻の愛する息子だ」

「僕はレックス。
イクスのお兄様だよ」

銀色の短い髪の少年は
ベットの上に出た俺の手を
両手で握った。

どうやら俺は家族からは
愛されているように思う。

だからこそ、
記憶がないのは、
申し訳なく思うが、
こればかりはどうしようもない。

「いいのよ、イクス。
あなたが無事だっただけで
十分だわ」

父に支えられた母が
俺を見て、微笑んだ。

「記憶なんて無くても
あなたは私たちの大切な家族よ。

これからまた一緒に
思い出を作っていきましょう」

「そうだな。
起こってしまったことを
嘆くよりも、これからのことを
考えよう。

大丈夫だ、イクス。
今回の件はきちんと私がカタを付ける」

父が母の言葉を引き継ぎ、
兄も俺の手を握ったまま、
そうだね、と呟くように言う。

「もしかしたら大事な弟を
失うかもしれなかったんだ。
そう思ったら、
記憶が無くなったぐらい、
どってことないよ」

ね?

と兄は俺を見て
辛そうな顔をしたまま笑った。

俺は家族の優しさが
心に染みて思わず涙が浮かぶ。

人の優しさに触れたのは
いつぶりだろうか。

「さぁ、薬を飲んだら
まずは寝て。
身体を休めた方がいいよ」

兄がそう言うと、
そばに控えていた女性が
そっと俺のそばに立った。

手には水と薬を持っている。

「イクス様、
私はイクス様の侍女、
リタでございます」

茶色い髪に琥珀に瞳の
女性が丁寧なお辞儀をした。

「……リタ」

「はい。
イクス様、どうぞお薬を」

「僕が飲ませてあげるよ」

差し出された薬を兄が
奪う様に手に取る。

リタは困ったような顔を
一瞬したが、すぐに頭を下げて
後ろに下がった。

俺は兄に世話をされつつ
薬を飲み、またベットに横たわる。

するとすぐに眠くなってきた。

俺の様子に気が付いた乳母が
家族や侍女たちを部屋の外へと促した。

「おやすみ」と口々に
俺に声を掛けて出ていく家族の
声を聞きながら俺は口の中で
リタ、と呟いた。

そう、リタ。
リタだ。

俺は徐々に思い出してきた。

俺はリタを見たことがあった。
前世で俺がプレイしていた
パズルゲームの中でだ。

俺は前世で妹にせがまれて
18禁BLのスマホゲームをしていた。

イケメンたちが愛を囁いてくれる
禁断のボーイズラブのパズルゲームだ。

妹が推しまくっていた声優が
ゲームに出ていたらしく
愛を囁く推しの声を聞きたい!

と妹にせがまれたのだ。

通常の恋愛ゲームなら良かったのだが
このゲームはパズルを解くことで
シナリオの続きを読むことができるゲームだった。

パズルが解けなくても
課金するとシナリオの続きを読めたり、
成人向けのシナリオが解放されるのだが
俺も妹も課金する金などない。

そこで俺は妹のために
必死でパズルを解きつづけたのだ。

とはいえ、パズルは解いても
しょせんストーリーはボーイズラブ。

俺は全く興味なくて、読んでいなかった。

だが。
俺はリタを見て思い出したのだ。

俺はリタの姿を何度も何度も
ゲーム内で見ていた。

何故ならリタはゲーム内で
『あきらめますか?
今なら900ゴールドであと5手
追加できますよ』

とか。

『本当に諦めますか?
これをクリアできれば
○○の物語が解禁されます』

とか。

とにかく課金を勧めてくる
お助けキャラだったのだ。

「この守銭奴リタめ!」と
俺は何度思ったかわからない。

そしてその流れて思い出した。

「っ。
俺、もしかして主人公……か?」







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