【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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子ども時代を愉しんで

23:友達との茶会

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 学校に通うことにも慣れ始めたころ、
初めての学力テストが行われた。

初等部の授業は、
ぶっちゃけ、剣と魔法以外は
楽勝だった。

なんたって10歳の子どもが
学ぶ内容だしな。

中等部になると、
この国の歴史や他国の
言葉なども学ぶことになるらしいが、
まぁ、語学は問題ないだろう。

あとは歴史か。

暗記ものは一夜漬けで頑張るしかないな。

剣に関しては、
俺は体が弱いということで
じつは実技は免除してもらっている。

だって、俺、
初めての実技の授業の時、
少し走っただけで、
呼吸困難になって倒れてしまったのだ。

公爵家の息子が
授業で倒れたと言うことで
教師は真っ青になるし、
兄もヴィンセントも
保健室に駆け付けて、
もう大事だった……体力無くてスマン。

そこで、剣の実技は
俺はできるだけ参加して、
それ以外の、剣の型とか
歴史とか、剣術の座学とか。

そういうのをメインに
学ぶことになった。

俺だけ特別扱いみたいで
申し訳なかったし、
こういうのって、
虐めの発端になるのでは?

と心配したが、
むしろ、俺が倒れた時は
本当に死にそうな顔だったらしく、
クラスメイト達はちょっとのことで
俺のことをやたらと
心配するようになった。

しかもクルトが何かと
俺を心配して絡んでくるようになり、
クラス中が過保護な保護者状態だ。

だが、そんな俺も
魔法の授業は楽しい。

魔法も実技だけでなく、
座学もある。

魔法の歴史や、
魔法の仕組みを学ぶ魔法学は、
めちゃくちゃ楽しい。

魔法学を極めていくと
オリジナルの魔法も
作ることができるらしい。

もっとも、実際に魔法を
組み立てることができる者は
ここ数十年の間でも
ほんの僅かな人数しか
いないらしいので、
かなり難しいということだろう。

でも、夢は広がるよな。
俺、自分の魔法とか作ってみたい。

というわけで、
俺は魔法学にはめちゃくちゃ
力を入れている。

予習復習はもちろん、
自習だってしている。

ミゲルに頼んで、
専門書も借してもらって
俺はすべての時間を掛けて
魔法を勉強していると言っても
過言ではないと思う。

ただ、熱中し過ぎると
過保護な家族たちが心配するので
きちんと休息は取っているが。

テストの終了の合図が鳴り、
教室にいたクラスメイトたち
全員がペンを置く。

教師が答案用紙を回収して、
やれやれと一息つくと、
ヴァルターが声を掛けて来た。

「なぁ、どうだった?
書けたか?」

「うん、まぁ」

だって算数の問題だったし。
国語は簡単な文法問題だったし、
これで間違った答えを書いてたら
俺、泣くぞ?

「俺も何とか全部書いた。
学力テストがあるからって
タウンハウスに家庭教師がやってきてさ、
ほんと、大変だったぜ」

ヴァルターが言うと、
隣に座っていたミゲルが笑う。

「毎日、学んだことを
ちゃんと身に付けてたら
そんなことしなくても
大丈夫なんですよ」

優等生だー。
まじめな答えだー。

俺はおぉーっと拍手してしまう。

「イクスもそうでしょ?」

ミゲルが俺に同意を求めるが
俺は前世の記憶があるから
ズルしてるみたいなもんだしな。

「うーん。
でも僕は、兄様も
ヴィー兄様もいるから……」

テスト前とかは二人が
一緒に勉強すると言って
俺の部屋に押しかけて来てたのだ。

以前、その話を二人にしていたからか
二人はなるほど、と言う顔をする。

「過保護だな、相変わらず」

「わからないことがあったら
すぐに聞ける相手がいるのは羨ましいです」

二人の言葉に俺は曖昧に返事をする。

「それより、この後、
本当に大丈夫?」

俺が聞くと、二人は大きく頷いた。

テストの日は午前中で学校は終わり、
翌日から3日間は休みになる。

テストの採点のために
休校になるようだが、
テストが終わった生徒たちは
遊ぶ以外の選択肢はない。

もちろん、俺もそうだった。

そこで俺は、ヴァルターと
ミゲルを公爵家に誘ったのだ。

父にお願いすると、
庭で茶会を開いても構わないと
言われたので、
今日は俺はヴァルターとミゲルと
3人で庭でランチを食べるのだ。

俺は今日を物凄く楽しみにしていた。

兄は今日、カミル殿下の付き添いで、
この後、王宮に行くことが決まっていたし、
ヴィンセントも今日から
3日間、侯爵家の領地に
用事があって帰ると言っていた。

と言うことは、だ。

今日の午後は誰の邪魔も入らずに
俺は友達と遊べるのだ。

いつもは必ずどちらかの邪魔が
入ったが、今日は違う。

俺はるんるんだった。

「馬車はね、僕の馬車を使って。
帰りはちゃんと送り届けるから
大丈夫だよ」

それも父に確認済だ。

二人は口々に礼を言い、
教師の終了の合図とともに
教室を出た。

公爵領は王都に近いし、
王都にタウンハウスもあるけれど
ほとんど使っていない。

けれど今日は、
俺のお茶会のために
父がタウンハウスを使う許可を
出してくれていた。

ヴァルターとミゲルは
王都にあるタウンハウスで
生活をしているので、
公爵家の領地に来てもらうより
タウンハウスで茶会を
した方が良いと判断したのだ。

俺もタウンハウスには
馴染みが無くてドキドキだが
リタが先にタウンハウスに行き
準備をしてくれているらしいので
まぁ、大丈夫だろう。

俺たちは馬車に乗ったが、
公爵家のタウンハウスは
驚くほど学校と近かった。

こんなに近いなら、
俺、タウンハウスで生活したいかも。

だって絶対に楽ちんだと思う。

父にお願いしてみようかな。

タウンハウスに着くと、
公爵家の執事とリタが出迎えてくれて
俺たちはそのまま庭へと案内される。

「おーっ」

と庭に着くなり
ヴァルターが声を挙げた。

俺も声を挙げそうになった。

広い庭は、一面に花が咲いていて、
その中央に大きなテーブルが置いてある。

その上にはすでにカトラリーが
準備してあって、なんというか、
物凄く豪華な雰囲気だった。

俺、場違いじゃないよな?

と思ったのは俺だけではなさそうだ。

なんで10歳の子どもの集まりに
こんな豪華で高価なセッティングする?

少し戸惑うミゲルの背を押し、
俺は気合いを入れる。

場違いだろうとなんだろうと、
俺はこの家の子どもなんだから
大丈夫だ。

よくわからない気合で
俺は二人を連れて席に座る。

すぐにリタが給仕と一緒に
やってきて、お茶と軽食が目の前に並んでいく。

サラダと籠に山ほど盛りつけられたパン。
スープと、メインは小さな肉やハム、
ソーセージなどを焼いた盛り合わせだった。

お腹も空いてたこともあり、
俺たちはまずは食事をすることにする。

ヴァルターはよほどお腹が空いていたのか
籠の中のパンをどんどん口に入れていく。

ミゲルはそれを見て
「公爵家でそのマナーは無いですよ」
なんて笑う。

でも咎めているのではなくて
揶揄っているだけのようだ。

「いいんだよ。
だって俺は公爵家のお茶会に
呼ばれたんじゃなくて、
イクスとの昼飯に呼ばれたんだから」

その言葉に、俺も笑う。
確かにそうだ。

ヴァルターは父の前では
礼儀正しく会話をするが
俺の前では雑な感じだ。

それが「素」なんだろう。

そして今日のランチも
公爵家は関係なく、
ただの友人との昼ご飯なんだ。

俺はその言葉に嬉しくなる。

ミゲルも「それはそうですね」と
頷いて、大きな口にハムを入れた。

うん。こういうのも楽しい。

俺もわざと大きな口で
ソーセージを食べる。

ふと3人の視線があって、
俺たちは笑った。





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