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魔法と魔術と婚約者
39:誤解で恋は加速する・1【ヴィンセントSide】
演習はまぁ、上手くいったと思う。
イクスたちがいるい観覧席は
公爵家専用のブースで
演習が良く見える場所だったが、
逆に言えば、俺たちからも
イクスたちの姿が良く見えるということだ。
イクスが俺が出る度に
手を叩いたり、
俺が視線を向けると
嬉しそうに手を振る姿に
俺は満足していた。
エリオットとの試合も、
互いに手を抜いてはいなかったが、
炎を魔法を使って、
観客を喜ばせる意図もあった。
エリオットは魔法師だけあって
剣の腕も良いが、
魔法もなかなかにうまい。
俺ははしゃいだイクスの様子を
確認して、今日はイクスを
公爵家まで送っていくかと
そんなことを考えていた。
だが。
俺やエリオットが着がえて
馬車留めに向かっていたところ、
公爵家の侍従が慌てた様子で
走ってくるのが見える。
どうしたのかと呼び止めると、
俺の顔を見て、侍従は
あからさまにほっとしたような顔をした。
話を聞くと、イクスたちが
王家の茶会に呼び出されたと言う。
やられた。
公爵家は一丸となって
イクスを王家から守っていたから
茶会の招待もすべて
公爵家当主の名で断っていたのだろう。
イクスが一人になった
ほんの少しの隙をつかれてしまった。
しかもイクスの級友たちも一緒だと言う。
侍従は公爵家にこのことを
伝えに行くと言うので、
俺はついでにと伝言を頼んだ。
イクスは自分が連れて帰ること、
そして心配しなくてもいい、と。
公爵家の侍従は
何度も俺に礼を言って走っていく。
俺と侍従の様子に
エリオットは不思議そうに言う。
「王家からお茶の招待を
受けるのは光栄なことでは?」
普通だったらそうなんだけどな。
といはいえ、
エリオットと俺は、
そんなに親しいわけではない。
というか、一応先輩なので
何かと絡まれてはいるが、
プライベートのことを話すような間柄ではない。
このまま無言をつき通そうと思ったが、
エリオットは、ふーん、と声を出す。
「さっきの話だと、
クライス家のミゲルも
一緒にいるんだろう?
クライス家は俺の家ともつながりがあるし、
ミゲルはリカルドの弟だぞ?
いいのか?
リカルドにバレたら、
陰険なやり方で虐められるぞ」
その言葉に俺は言葉を詰まらせた。
リカルドは人当たりが良い人柄だが
怒らせると、かなりやばい。
魔法にのめり込んでいるだけあって
予告なく実験台にされたことは
一度や二度ではない。
しかもリカルドは弟を大事にしている。
ついでにイクスのことも、
可愛い弟分のように思っている。
「何かに巻き込まれてるなら
俺にも言っておけ。
手を貸してやる」
そう言われて、
俺はしぶしぶイクスの話をした。
エリオットは俺が苦手な
リカルドの先輩なのだ。
逃げる算段をするよりも、
事情を話しておいた方が良いかもしれない。
何度も剣を交えているので
信頼に値しないとは思ってはいない。
ただ、イクスのことを
無関係の人間に話したくなかっただけだ。
それにプライベートなことに
干渉されるのも俺は嫌いだ。
この話をしたら
絶対にエリオットは俺を
揶揄うとか、何かリアクションを
するに違いない。
そうは思ったが
俺は重たい口を開く。
イクスの階段落ちの話と、
それから、イクスに
王家からの婚約の打診があった話。
公爵家はその婚約には
後ろ向きで、俺の父、
ハーディマン侯爵家の当主が
助け船として、俺とイクスの
婚約を内密に結んだこと。
それを周囲にも、
イクスにも伝えていないことまで
俺はエリオットに言う。
ただし、他言無用と釘を刺すことは忘れなかった。
俺が話し終えると、
エリオットは、なるほど、と言う。
「それで?」
「何がだ?」
エリオットは先輩だが、
俺の口調はいつものままだ。
一応、エリオット先輩、と
対外的には呼ぶが、
剣の腕は俺と互角だし、
エリオットも堅苦しいのは
止めてくれ、と言うので
普段通りに接している。
「公爵家の可愛い次男を
公爵家当主と、その親友の
ハーディマン侯爵家当主が
守ろうとするのは、理解できる。
だが、婚約だろ?
気軽にすべきことではないだろう」
正論だ。
だが、俺は。
「イクスを守りたかったからな。
婚約が一番手っ取り早く、
確実だった」
俺がそう言うと、
エリオットは、へぇ、と笑う。
「そんなに可愛い子なのか?」
「可愛いが、俺の弟のようなものだ。
手を出すなよ」
「弟ねぇ」
エリオットはニヤニヤ笑う。
俺たちは馬車留めまで来たが、
そのまま近くのベンチに腰を下ろした。
茶会というのだから
まだ時間がかかるだろう。
「付き合ってくれなくていいんだぞ?」
エリオットは偶然、俺のそばに
いただけれ話に巻き込まれただけだ。
俺はそう言ったのだが、
ミゲルが巻き込まれているなら
一緒にいると言う。
クライス家とは縁続きで、
ミゲルやリカルドとも面識があるらしい。
「それで。
その可愛い公爵家の次男君には」
「イクスだ」
俺が言うと、エリオットは笑う。
「そうだね。
そのイクス君とは恋愛しないのか?」
その言葉に、俺は酷く動揺した。
するわけがない、とは言えなかった。
だが、まだ幼いイクスと
恋愛するとは、言い難い。
俺が珍しく言葉に詰まっていると
エリオットは声を出して笑った。
「意外だ。
まさかこんな君を見れるとは」
どんな俺だ、と言いたいが、
いつもと違うことぐらいは自覚している。
エリオットはそんな俺に
興味を持ったのか、
ひたすらイクスのことを聞いてきた。
俺はあまり感情が入らないように
最初のうちは当たり障りの
無いことを答えていたのだが、
エリオットは聞き方が上手い。
気が付けば、
イクスが侯爵家の領地に
遊びに来た時の話や、
イクスがどれだけ発想力があり、
可愛いかを力説してしまっていた。
何をしゃべってんだ、俺。
落ち着け。
そう俺が我に返った時は、
すでに時遅し。
エリオットはにやにやしながら
俺を見ている。
「そうか、そうか。
可愛いんだな。
守ってやりたいんだな」
楽しそうに言われ、
俺は話しをしたことを後悔した。
恐らくずっと、
俺はこの件でからかわれるに違いない。
俺は不快公開をしつつ、
「そうです」と小さく返事をした。
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