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終章
209:やらかしました
しおりを挟むヴィンセントに夜通し抱かれた。
……たぶん。
たぶん、というのは、
途中から記憶がないからだ。
俺は何度も射精したと思うのだが
なにせ、俺の妙な魔力のせいで
俺の身体は何度精液まみれになっても
いつのまにか清潔状態に戻ってるのだ。
ただ、俺の中に入った
ヴィンセントの精液だけは
その清潔状態の範疇ではないのか、
朝起きたら、どろり、と秘所から
精液が漏れてきて、正直焦った。
だが、体外に出ると
それは無かったことになるのか
あっと言う間に浄化されたように
漏れた液は消えてしまう。
もう、意味が分からない。
でもこれは俺の魔力が
勝手にしていることだから
俺が制御できるようになればいいだけだ。
うん、そのはず。
そうやってシーツにくるまり
焦っている俺のそばで
ヴィンセントは甲斐甲斐しく
俺の世話を焼いてくれている。
俺の肌は清潔状態なのだが
濡れタオルで体を拭いてくれたり
水を飲ませてくれたり。
「身体が辛いところはないか?」
ベットに座る俺の背に手を当てて
ヴィンセントは膝をついて俺の顔を覗き込む。
「大丈夫、その、ちょっと
恥ずかしかっただけだから」
そう、目を覚ました時、
とろりと秘所から精液が漏れるのを
感じて、俺はパニくったのだ。
でも、なんか。
アルコールのせいか、
俺の魔力のせいかはわからないが
記憶がないものの、俺は昨日、
ヴィンセントに抱かれたのだ。
いや、最初、ヴィンセントに
貫かれた時は覚えている。
物凄い衝撃と、
それを勝る幸福感が俺を襲った。
その後、快感の波が押し寄せてきて
俺は理性を手放した。
シアワセとキモチイイに包まれて
俺はヴィンセントを求めた。
ヴィンセントが、がっつくように
俺を求め、夢中になるのが嬉しくて
俺は、もっと、もっと、と
強請った……気がする。
恥ずかしくて爆死したくなるが。
でもこれで俺とヴィンセントは
名実ともに伴侶になった。
それが、嬉しい。
俺はベットに座ったまま
ヴィンセントを見る。
「ヴィンス」
「なんだ?」
「浮気したらダメだから」
「は?」
「ヴィンスは僕のものだから、
僕以外の人に触れたら
絶対にダメだからね」
今まではそんなこと
思ってもみなかったのに。
肌を重ねたことで
独占欲が出て来てしまったようだ。
いや、違うな。
今まではヴィンセントが
俺以外の人間を選ぶなど
思ってもみなかった。
ヴィンセントはいつも俺を
見てくれていたし、
そばで守ってくれていた。
それが当たり前だと思っていた。
でも、肌を重ねてて
初めて俺は不安になったんだ。
ヴィンセントを失いたくないと。
「ばかだな」とヴィンセントは笑う。
「ずっとイクスしか見て来なかった俺が
今更誰に気持ちを移すと言うんだ?」
そう言ってヴィンセントは
俺にキスをする。
「やっとイクスが手に入ったんだ。
一生、俺のそばにいてくれないと
俺の方が困る」
「うん……良かった」
ほんとに。
俺が手を伸ばすと、
ヴィンセントは当たり前のように
俺を抱っこする。
ベットから下ろしてもらい、
俺は手伝ってもらいながら服を着た。
ヴィンセントの話では
この屋敷周辺が、大変なことに
なっているらしい。
……ははは。
そうだよな。
目を背けたいが
そう言うわけにはいかないだろう。
魔力制御ができるまでは
肌を重ねるのは禁止した方がいいとか
言われたらどうしようか。
「腹は減って無いか?
まずは食事をしよう」
エスコートされて部屋を出る。
「どうした?
不安そうな顔をしているぞ」
え?
顔に出てた?
「その……えっと。
僕が幸せな気分になったら
魔力が溢れちゃうから。
迷惑がかかるなら
僕の魔力制御が上手になるまで
ヴィンスとイチャイチャできないかもしれない……」
「そんなわけない」
俺の言葉が終わる前に、
ヴィンセントはかぶせるように否定した。
「少なくとも、ここは未開地だし、
ハーディマン侯爵家の領地だ。
何が起こっても大丈夫だし、
ましてや、イクスが幸せを
感じてくれているのに
それを制御する必要はない」
「そう? それなら嬉しいけど」
ほんとにいいのか?
まぁ、この場所は確かに未開地で
これからパットレイ公爵領までの
道を作っていく場所だから
大丈夫かな、とは思うけど。
俺たちが階段を下りると
バトラーさんがサロンに案内してくれる。
そこで朝食兼昼ご飯を食べたのだが。
その場所には何故かキラキラした
瞳で俺を見つめる侍女たちがいた。
年配の女性と、リタと同じぐらいだろうか。
20代後半か30代前半の女性。
それから、もっと若い、
俺と同い年ぐらいの侍女だ。
バトラーさんは俺に侍女たちを
紹介することはなかった。
今はまだ正式な場ではないので
顔だけ知っていて欲しいと言う。
ただ、年配の女性が
俺のせいで(おかげで?)
腰痛が治ったと言う侍女長さんで
一番若い侍女は彼女の
娘なんだろうな、と顔立ちを見て思った。
リタと同じぐらいの侍女は
栗色の髪に、まんまるの目で
俺をキラキラと見つめている。
……俺、この目知ってる。
あのバカ犬……いや違った。
隣国の駄犬殿下……いやいや、
俺にめちゃくちゃ懐いて来た
隣国の友人にそっくりだ。
ついでに言うと、
俺の前世のバカ妹が
俺を拝んでいた時の瞳だ。
あれ?
俺、この世界でも拝まれるとか?
こりゃ、そうとうしでかしたな、俺。
食事もそこそこに、
俺はヴィンセントと一緒に
散歩と言う名の査察に出ることにした。
ヴィンセントも報告を聞いていたが
足は運んでいないと言う。
とりあえずは、焦げた土と
枯れ葉と燃え残った樹木しか
無いと言われている
『庭と屋敷にしようと考えている場所』
に足を向けた。
「おー」
俺は目の前の光景に
呆れたような声を出してしまった。
綺麗な更地になっていた。
しかも、ご丁寧に草花が咲き乱れている。
良かった。
そんなにメルヘンではなかった。
荒れた土地が整地になっただけだ。
たいしたことではない。
ヴィンセントも驚いていたようだが
リアクションは無かった。
うん、お互い、俺の魔力に関しては
体性がついてきたよな。
その流れで、
すでに『庭』として
手入れを始めていると言う場所に移動する。
「おぉー」
今度は感嘆した。
めちゃくちゃ綺麗なバラ園になっていた。
しかも俺の家のバラ園そっくりの。
俺、あのバラ園が気に入ってたからな。
ヴィンセントと同じ色の
バラの花がたくさん咲いているんだ。
きっとヴィンセントの髪に触れて
無意識のあの場所を想像したんだろうな。
さすがにヴィンセントも
驚いたような顔をするが、
すぐに俺には笑顔を向ける。
「イクスはあの庭のガゼボが
好きだもんな」と髪を撫でてくれるので
俺は内心、ほっとした。
そんなオオゴトじゃないよな。
もともと庭を作るつもりだった場所に
庭が出来ただけだし。
大丈夫、大丈夫。
そんなたいしたことはしてないし、
怒られるようなことでもない。
俺は心の中で自分を慰めながら
ヴィンセントに連れられて
屋敷の正面に移動した。
バトラーさん曰く、
とにかく「馬車道を見て欲しい」と言っていたのだ。
何事かと思う。
そして俺たちは庭を通って
正面玄関まで来た。
「おぉぉぉぉーーーっ」
さすがに俺は目を丸くする。
ヴィンセントも声もなく目を見開いていた。
……さすが、俺。
と、思うしかないな、こりゃ。
俺はあきらめの境地で目の前の道を見た。
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