【完結・R18】「いらない子」が『エロの金字塔』世界で溺愛され世界を救う、そんな話

たたら

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新しい出会い

3:奇妙な生き物を拾ってみた【ディランSIDE】









俺はのんびりと旅をしていた。

わけがあって、この国を旅しているが、
急ぎの用があるわけでもなく、
適当に色んな村や町を渡り歩いている。


お金が無くなれば、
小さな村や町で畑仕事や
魔獣の退治なんかを手伝って
収入を得ていたし、

野宿なんかも嫌ではなかったので
それなりに、楽しくやっていた。

そんな俺がある町で、
この先にある辺鄙な村で
新しい『聖樹』が生まれた、という
妙なうわさを聞いた。


『聖樹』とは、人間が子どもを
生む際に必要な実を成らせることが
できる聖なる実をつける樹だ。

この世界を創った女神が
生みだした聖なる樹木らしい。

つまり、いきなり『聖樹』が
芽吹くはずがない。


女神がやってきて
『聖樹』を生やしたとでもいうのだろうか。


しかも、王都から遠い、
何もない辺鄙な村で。


『聖樹』は当たり前だが、
とても貴重な樹木で、
すべての町や村にあるわけでなく、

大きな街の教会に1本、
植えられているぐらいで、
王都から遠い町や村に住む住人は
子どもが欲しくなると大きな街の教会まで
『聖樹』の実を貰いに行かねばならないのだ。


そんな状態なのに、
辺鄙な、しかも小さな村に、
『聖樹』なんぞ、あるわけがない。


しかも『大聖樹』も『聖樹』も
この世界ではつい最近まで
枯れかけていた。


もう世界は終わるのだと、
誰もが思っていた。


そんなときだ、
『女神の愛し子』がこの世界に降り立ち、
『大聖樹』を蘇らせた。


そして『大聖樹』が花を咲かせ、
その後を追うように、
各地の教会にある『聖樹』も
花をつけるようになったらしい。

らしい、というのは
俺は見たことが無いからだ。


『聖樹』というのは神聖なものだ。


この国では誰もかれもが
見れるものではない。

一度は見てみたいと思うが、
きっと無理だろう。

そう思っていたところ、
『聖樹』が生まれたという話を聞いて
絶対に眉唾ものだと思ったが、
もし本当に『聖樹』が生まれたのなら
それを見てみたいと思ってしまった。


町の教会にある『聖樹』に
花が咲いたのは、民が女神に感謝をし、
祈りを捧げるようになったからだとも言われている。

確かに旅をしている間、
村や町の教会では『聖樹』が
あるなしにかかわらず、多くの人が
祈る姿をみかけるようになった。

もし本当に…そうなら。

祈ることで『聖樹』に花が咲くのなら、
もしかしたら、どこかで、
『聖樹』が生まれるかもしれない。


そんなことも考えた。


そして『聖樹』が生まれたなど、
ありえもしない噂が流れるのであれば
その理由が、その村にあると思ったのだ。

そこで俺は
その村に行ってみることにした。

村は……遠かった。


馬を使えば良かったと、後悔した。


でも急ぐ必要はないし、
疲れたら野宿でもすればいい。


そんな気分で歩いていた先に、
小さな生き物を見つけた。

……いや、人間だった。
たぶん。

たぶん、というのが、
遠くに見えた生き物が、
どうみても人間離れした…

不思議な生き物だったからだ。

それは黒い髪をしていた。

この世界で黒髪は珍しい。
……というか、生まれない、とされていた。


しかも、何かわめいている。


物凄い勢いで地面に何かを訴えていて、
正気を疑う様子だった。

地面に話しかける人間など、
まぁ、いないだろう。

妖精とか…そんな類のものだろうか。

そんなことを思いつつ
俺はその生き物に近づいてみた。

俺が近づいていくと、
その生き物は、ごろん、と
寝転がった。

人間っぽい仕草で
空に両手を伸ばし…

疲れたように。
まるで何も手に入らないのだと
言うような様子で手をおろす。


さらに近づいてみると、
どうやら泣いてたのだとわかった。

さっきの声は
泣き声だったのか。

それにしては、激しい声だった。

俺はその生き物の姿が
はっきりわかるまで近づいてみたが、
その生き物は、俺のことを
まったく気が付いていないようだった。

こんなに警戒心が薄くて、
よくここまで生きてこれたと感心する。

魔獣でも出たら、
一瞬で殺されるだろう。

よく見ると、その生き物は
人間の……子どものようだった。

10歳か…もう少し上か。

しかし、こんな場所に
子どもが一人でいるなど、奇妙な話だ。


まさか妖精が人間の子どもの姿をして
旅人を騙す……なんてことは
あるはずがない、だろう。


妖精など見たことが無いので
絶対にないとは言えないが。


俺はその子どもに声を掛けることにした。


その子どもは、真っ黒な髪と
真っ黒な…瞳をしていて、
どこか場違いな…現実味がない姿だった。


本当に妖精なのかもしれない、
なんて心のどこかで思っていた。

なんて声を掛けるか迷って、
「どうした?」なんて
ありふれた言葉を出してしまった。


俺の存在に気が付き、
子どもは驚いたようだった。


その瞳の中に、一瞬、
拒絶のような感情が宿ったのを
俺は見逃さなかった。

ワケアリだろうか。

まぁ、俺もワケアリなので
お互い様だが。


子どもの目は真っ赤で、
顔は涙でぐしょぐしょだった。

砂が付いた手で目を擦ったのだろう。
目元は砂だらけ。

手も、足も、砂だらけ。

それどころか、ところどころ
擦り向いて血が出ている。


しかも、この寒いのに、
シャツしか着ていない。


靴はどう見ても室内用で、
どこかの貴族の屋敷から
人さらいにでもあったのだろうか。


けれど、俺が声を掛けると
子どもは俺の手も借りず立ち上がり、
何でもないと言う。

どうみても、
何かあった状態にしか見えないのに、だ。


「大丈夫か」と聞くと、
そんな状態なのに、子どもは、笑った。


儚げな…微笑だった。


子どもがするような顔ではない。


どこかあきらめたような、
自分を卑下するような、
そんな笑みだった。


こんな子どもが、
そんな笑みを浮かべていいはずがない。


もしかしたら、どこかで虐待されていて
逃げ出してきたのかもしれない。


奴隷として攫われて、
逃げ出してきたのかもしれない。


夜盗か山賊に両親を殺され、
一人で…たった一人で
逃げてきたのかもしれない。


色々な可能性を思い浮かび、
俺はこのまま子どもを放置することは
できなかった。


人道的にも保護するべきだろうし、
俺は…個人的に、子どもが
悲しむのは好きではない。


子どもは愛され、守られるべき存在だ。


俺は子どもを保護することに決めた。


もう少し行けば、
おそらく目的地の村があるはずだ。

一緒に行こうと声を掛けると、
子どもは警戒したような目を一瞬したが、
俺が上着を貸してやると、
素直になった。


足を見ると、薄い室内用の靴だからだろう。
足の裏からも血が滲んでいるのが見えて
俺は子どもを抱っこした。


子どもは一瞬、身体を強張らせたが
何も言わずに歩き出すと…

すぐに首にしがみつき、
うとうとと眠り始めた。


きっと…限界だったのだろう。


どんな目にあったのかわからないが、
目を覚ましたら、聞いてやろう。


帰る場所があるなら、
その場所まで、おくってもいい。


どうせ、急ぎの旅ではない。


一人旅は退屈していたし、
子どもとは言え、旅仲間が
増えるのは楽しい気がしてくる。


もし帰る場所がないなら…
大きな街まで行って、
孤児院か教会に預けよう。


できれば、親族などがいれば
会わせてやりたいとは思うが。


俺も……それなりのワケアリなので
ずっと子どもを連れて旅をするわけにはいかない。


歩いていると、子どもが
ぎゅっと俺にしがみついてきた。


夢でも見ているのだろうか。
めじりにまた、涙が溜まっている。


こんな子どもが…
いったい、なにがあったのだろう。


当分は…俺が一緒に居る間は、
俺が守ってやるから。


もう大丈夫だ、と抱きなおしてやる。


沸き起こった庇護欲に、
俺は苦笑してしまう。


俺はこんなにお人よしだったか?


相手が子どもだからかもしれないが、
俺は冷酷で、非道で、
目的のためなら容赦はしない性格だ


……と周囲から言われている。


まぁ、言われるぐらいだから
自覚はないが、そうなのだろう。


そんな俺が子どもを拾うなど、
おかしなこともあるものだ。


それに子どもの黒髪黒目は気になる。

『女神の愛し子』は黒髪だと聞く。


奴隷の髪を『女神の愛し子』と同じ
髪色に染めれば、高く売れるかもしれないと
そう思われたのかもしれない。


この子どもは幼いが、
顔だちも良く、可愛らしい。
もう数年たてば、かなりの美人になるだろう。

そうなれば、性奴隷としての価値も上がる。

美しい『女神の愛し子』と同じ色を
持つ子どもだ。


相場の…何倍もの値が付くかもしれない。


酷い話だ。


もし魔法で髪を染められたとしたら、
魔法を掛けた人間が魔法を解くか、
魔法解除の薬を使うしかない。

そんな薬は高額で取引されているので
平民には手を出せない。

そうなると、このユウと名乗った子どもは、
一生、このままだ。


生まれた時の髪には戻らない。

不憫だと思う。

「可愛そうに」


俺はつい、呟いてしまった。


同情しても、仕方がない。
俺には、何もできないのだから。


今できることは、
この子を村に連れていくことだ。

俺は、歩く。


ふと、風が吹き、どこからか
花の香りがした。


こんな寒い時期に、
花が咲くとは思えない。


咲くとしたら『聖樹』ぐらいだ。

そんなことを思って、
それこそ、ありえない、と笑う。


こんな国外れの人気のない街道で
『聖樹』が咲いているわけがない。


それでも、俺は。
背中を押すように吹く風から
甘い花の香りを感じた。


そしてその香りは、
俺の疲れた体を癒してくれるようにも感じる。


不思議なものだ。


俺は何故か軽くなった足を動かし、
村へ向かって真っすぐ歩き続けた。


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