【完結・R18】「いらない子」が『エロの金字塔』世界で溺愛され世界を救う、そんな話

たたら

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獣人の国

237:これから

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 王様との密談が終わり、
私はまた侍従さんに連れられて
元居た部屋に戻った。

マイクがすぐに駆け寄ってきて、
パパ先生も、ほっとしたような顔をした。

たぶん王様は、獣人かどうかとか
そんなことは関係なく、
この国のためにどうすべきかを
考えてくれると思う。

そのことを二人に言いたかったけど、
王様との会話は内緒なので
上手く説明ができない。

私は結局は何も言えず、
その代わりにマイクに
「しばらくパパ先生の家にお泊りする」と
言ってしまった。

「そ、れでは、私は……」

「マイクは宮殿でお世話になる?」

「この私に、ユウさまから離れて過ごせと
言われるのですか!」

王様の密談よりも、
マイクにとっては大問題らしく、
あっという間に王様の話は無くなった。

マイクは私に縋り付かんばかりに
連れて行ってください、という。

でもパパ先生の家は
本でいっぱいだし、
ベットは狭いので二人で寝ても
窮屈状態だ。

パパ先生とは一日おきに
お泊りする話でまとまっていたんだけど
それを言い出す状態ではない。

どう言えばいいのか迷っていると、
「私を捨てるのですね」なんて
マイクは言い出すものだから、
話題を変えようと思って言っただけなのに、
オロオロしてしまう。

そんな私たちの間を
パパ先生がやんわりと遮った。

「じゃあ、役割を決めよう」

「役割? どういうこと?」

私が聞くと、パパ先生は
私とマイクを椅子に座らせる。

「僕とユウちゃんは、
女神の書物を読み解き、
まとめるという作業がある。

君は……この国の住人ではないからこそ、
オブザーバーの立場で、
この国の問題を整理できると思うんだ。

この国の住人たちは
これから、獣人と言う問題で
荒れると思う。

だからこそ、それに無関係の人間が
冷静に指揮をとる必要がある。

ユウちゃんの信頼を得ている君なら
十分にその能力があると思うのだけど」

「もちろんです。
私はユウさまに信頼されておりますから!」

マイクが意気込んで返事をした。

「よかった。
じゃあ、ユウちゃんは僕の家で
女神の資料を読み解くけれど、
ずっとだと、しんどいと思うから、
一日おきに休みにしようと思う。

休みの日は調べたことを持って
君の所に行かせるから、
そこで情報を共有し、
また欲しい知識などがあれば
その時、ユウちゃんに伝えてくれるかな?

もちろん、ユウちゃんは
その日はゆっくり君の所に
泊って帰ってくればいいよ」

「かしこまりました。
必ず、ユウさまをお守り致します」

守るなんて話は、
一言もなかったと思うのだけど、
マイクはうやうやしく礼をした。

マイク、パパ先生に旨い事言われて、
騙されてない?

パパ先生に視線を向けると、
また不器用なウインクをしている。

「じゃあ、僕は帰ろうかな。
ユウちゃんはどうする?」

マイクが、じっと
私を無言で見つめてくる。

「ディランとも一度話を
しておきたいし、
パパ先生の所には明日行くね」

「わかった。待ってるよ」

そう言ってパパ先生は立ち上がり、
私の髪をぐしゃぐしゃ撫でる。

それから扉のそばに立っていた
侍従さんに帰る旨を伝えて出て行った。

「ユウさま。
私と一緒にいるよりも、
父上と一緒にいる方が嬉しいのですか?」

マイクが拗ねたような声で言う。

「嬉しいと言えば、嬉しい。
でも、パパ先生を好きって思うのと、
マイクやディランのことを好きって思う気持ちは
まったく違うよ?」

そう言うと、マイクはわかっていると
頷いてくれた。

「申し訳ありません。
親子の愛情だとは理解しているのですが、
ずっとおそばにいたユウさまを
取られてしまうような気になってしまいまして」

分かる気はする。
私も施設で一番懐いていた先生が
他の子どもの世話を焼いているのを見た時、
モヤモヤしたもの。

「でも、今日は一緒。
たくさん、おしゃべりしよう」

そう言うと、マイクは嬉しそうな顔をした。

この王宮と、最初に私やマイクが
連れて行かれた宮殿は隣接しているらしく、
マイクは王宮も宮殿も自由に行き来できるよう
計らってもらっているらしい。

私はマイクに連れられて、
最初に泊まった客間に連れて行かれる。

「もう宮殿の造りを覚えたの?」

迷うことなく部屋に連れて来てもらい、
私は驚いた。

「はい。
何度か行き来しましたので。

食事が必要な時は、
言えば持って来てもらえますが、
基本は食堂に行けば、
賄いを食べさせてもらえますし、
湯殿は部屋についています。

王族と言っても、
我が国とは違うようで、
必要であれば、デビアン殿とも
自由に交流できますし、
この宮にいても不自由はありません」

私が少し、パパ先生の所にいただけなのに、
マイクはもう、ここに馴染んでいるようだ。

対人スキルが高いというのか
順応力が高いと言えばいいのか。

羨ましすぎる能力だ。

マイクはデビアンさんと一緒に
街の区画整理について話合っているらしい。

これからは実際に街に出て、
住民たちと話をして、
どの様な家を希望しているのかなどの
聞き取り調査をしていく予定だそうだ。

そしてできるだけ希望に沿った形で
街を作っていくのだという。

すごいね。
街づくりを一からだなんて。

でもそれ、私の『力』を使って
一気に仕上げよう、みたいな話を
パパ先生は言ってたよね、確か。

私は想像できないものは
生みだせないんだけど、大丈夫かな。

そこで私はマイクに一応、
希望の家の絵とか、家の間取りとか
できるだけ詳しく情報を集めて
書いてもらうようにお願いをした。

完成図もあれば、
それを見ながら創造できるかもしれない。

マイクは私が創ることを視野に入れているのに
気が付いたと思うけど、
何も言わなかった。

女神ちゃんが関わっていることだから
口は挟まないと決めていたのかもしれない。

でも心配そうな顔をして、
私を見つめている。

「マイク」

私はマイクを呼んで、
隣に座るように言った。

ずっとマイクは私の後ろに立っていて
紅茶の1杯も飲んでいない。

「隣に座って」

私がソファーをぽんぽんと叩くと
マイクは素直に頷いた。

二人っきりだから、
警戒しなくていいと思ったのかもしれない。

「お茶飲む?」

「いえ」

「じゃあ、手を繋いで」

隣に座ったマイクに手を差し出すと
マイクはそっと私の手を握った。

「この国は、大きく変わると思う。
それで何があるか私には……
パパ先生にもわからない。

でも、変化は女神ちゃんが望んだこと。
私はそれを手伝うだけ。

ディランと離れてしまうかもしれないし、
ずっと一緒かもしれない。

何もわからないけど。
私はマイクがそばにいてくれたら嬉しいし、
こうして手を繋いでくれたら
安心するよ」

そう言ったら、マイクは泣きそうな顔をして、
光栄です、と呟いた。

「嬉しい、って言って」

敬う言葉はいらない。

そう言うと。

マイクは「愛しております」と
優しい声で囁いた。



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