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第4話

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【7才】

 俺は屋敷で腕立てを行う。

「アキ君、腰が下がってますよ」
「くう!」

「お嬢様、もっと深く体を倒してください。胸が地面に着くまでです」
「もう、限界」
「あれ?お嬢様の負けですか?アキ君に負けちゃいますか?」

 プリンが俺を見た。
 
「負けない!」

 俺とプリンは腕が上がらなくなるまで腕立てを続けた。

「明日は短剣術ですよ」

 午前中は瞑想と魔法の訓練、午後は筋トレ・弓・短剣・ダッシュとローテーションで訓練を続けてきた。

 まだ子供だからこれでも手加減をしているらしい。
 色々やりたい俺としては今の訓練は合っている。


【次の日】

 俺とプリンは木の短剣で打ち合う。

 パン!

 俺の短剣が弾かれて喉元にプリンの短剣が突きつけられる。

「参った」
「私の勝ちね」
「そうですね。でも魔法ではアキ君の勝ちですよ。アキ君の成長率は異常ですね」
「すぐに追い越すわ!」

 ピッと俺に人差し指を向けた。
 プリンは煽られるとすぐ反応するしチョコは執拗にプリンを煽る。

 プリンの頬がふくらまない日は無い。
 チョコはにやにやしながら俺に抱きつく。

「休憩にしましょう」

 そう言って俺を抱っこしたまま座る。

 プリンがチョコを睨むが、チョコは気づかないふりをした。

 屋敷にいる兵士が2人で話をする。

「そろそろ大規模な戦いが近いか?」
「そうだと思う」
「俺も招集されるのかな」
「戦える者は招集されるだろうが、大規模な戦いがいつになるかは分からない」

 この国は隣国と戦争中だ。
 隣国との国境沿いに大量の魔石が眠っている。
 その魔石利権をめぐって小競り合いが続いているのだ。

 俺は、冒険者になりたい。
 少なくとも力をつけて自衛くらいは出来るようにしよう。
 出来れば大規模な戦いが起こる前に身軽にどこにでも行けるようにしておきたい。

 チョコが兵士に話しかける。

「正面衝突はいつ頃になると思いますか?」
「チョコ様、分かりませんが数年内には起こると噂されています」

「そうですか。所で私はただのメイドですよ。敬語を使う冗談はよくありません」
「そうで、そうだな。美人がいるとからかいたくなるんだ。うん」
「私は美人ですからね。ふふふふふ」

 プリンだけじゃなく、チョコも貴族なのかもしれない。
 この地は隣国から離れている。
 貴族令嬢を避難させるには良い場所だ。
 領主の顔を見た事が無いから、ここは避難場所なんだろう。

 しばらく本気で訓練をしてみよう。
 10才になってジョブが決まるまでは今の訓練を続けよう。
 俺は訓練を続けた。



 ◇



【10才】

 俺もプリンも10才にはなったけど、村に神官が来てジョブを授与する儀式を行うのはもう少し先だ。
 
 俺とプリンが短剣で打ち合う。
 短剣を持つ腕を突く。

「そこまで!アキ君の勝ちです!」
「もう一回!もう一回よ!」
「もう終わりです!次は私がアキ君の相手をします」

 チョコが短剣を構えた。
 チョコには一回も勝った事が無い。
 試合が始まるとチョコに短剣を払われて短剣が喉で止まる。

「負けました」
「いいですよ。大分様になってきましたね」
「チョコに勝てる気がしない」
「う~ん、授かるジョブによってはすぐに追い抜きますよ。アキ君は天才ですから」

 俺はただ、日本とこの世界の違いを知っているだけだ。
 その違いを知っているから魔力を感じる事がすぐ出来て、スキルの上昇速度が速くなった。
 ただそれだけなんだ。

「今日は終わりです。お風呂に入りましょう」
「わ、私は後にする」

 最近プリンが女性らしくなってきた。
 その為一緒にお風呂に入らなくなった。

 く、なんてことだ。
 18才になるまでお風呂に入り続ける俺の計画が台無しだ。

「アキ君、サービスしてあげますよ」

 チョコがにやにやしながら言った。
 チョコはいつもからかってくる。
 からかって来るだけ、そう思っていた。

 でも、お風呂に入るとチョコは俺の背中を胸で洗い始めた。
 こ、これもからかっているだけだ!



 ◇



「今日はたくさん綺麗にしましたね。私は胸で背中を洗って上げました」
「ま、まさか本当に胸で洗うとは思わなかった!」
「サービスするって言いましたよ?」
「冗談かと思った」

 俺とチョコの話を聞いてプリンが真っ赤になって怒る。

「そう言うの良くないわ!」

 そう言って地面を踏み鳴らす。

「良くないとは?どういう事を言っているのですか?」
「エッチなのは良くないわ!」
「どんなエッチな事をしたと思っているんですか?」
「分からないけどダメ!」

「もお、怒るなら一緒にお風呂に入ったらいいじゃないですか」
「そ、それは……」

 プリンが真っ赤になりながら俺を見る。
 そしてプリンは無言でチョコをぽかぽかと叩いた。

「あー気持ちいいです。次は肩をお願いします。そうだ!私がアキ君にやってあげた事をお嬢様もすればいいんです!」
「なに?なにをしたの?」

 チョコがプリンに耳打ちをする。

「ああああああああああああ!!」

 プリンが胸を抑えて逃げ出す。

「大きくなったら大きくなるもん!」

 俺は2人を止めずに見ていた。
 本当の姉妹みたいで可愛い。
 プリンが逃げて出てこなくなった為、俺は家に帰った。



 俺はベッドに入り、ステータスを眺める。

 アキ 人族 男
 レベル     1
 HP          34/35【+20】
 MP      40/65【+8】
 攻撃               56【+40】    
 防御          31【+18】  
 魔法攻撃        45【+10】
 魔法防御        30【+8】  
 敏捷          68【+28】
 ジョブ????    
 スキル『瞑想レベル3』『水魔法レベル3』『炎魔法レベル3』『スタミナ自動回復レベル3』『短剣レベル3【NEW!】』『弓レベル3【NEW!】』『風魔法レベル3【NEW!】』『土魔法レベル3【NEW!】』『光魔法レベル1【NEW!】』『闇魔法レベル1【NEW!】』『訓練効果アップレベル1【NEW!】』



 MP・攻撃・敏捷の値が上がりにくくなってきた。
 上昇値が50を超えてくると上昇しにくくなるらしい。

 属性魔法は6属性すべて覚えた。
 1つの属性ばかり訓練していると飽きてしまうからだ。

 短剣はナイフやダガーなんかの刃渡りが短い刃物をうまく扱えるようになる。

 訓練効果アップは訓練による能力値の上昇率がアップするけどレベルアップ時の上昇には効果が無い。
 最初は全部の能力値を+100にしたいと思っていたけど無理だな。

 もう少しで、ジョブを授かる事が……
 俺はそのまま眠った。

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