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第5話

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「さてっと、入り口付近にたどり着いたら黒服マッチョが俺を睨んでいるわけだけど、気にせず修行を開始する」

『悪い顔をしている』
『企んでいるな』

 俺は魔呼びのポーションを洞窟の壁に投げて割っていく。
 大量の霧が拡散する。

『カゲオ!使いすぎだ!』
カナタ『カゲオ君、無理をしすぎです!』

「そっかそっか」

『危ない。こいつ眼を離すと何をするか分からない』
『まあ、あの両親の子供だから、お察し』
『早速スライムが集まって来た』
『前より多くね?』

「ビンを取り出して投げるのは効率が悪い。箱ごとやってやる。おりゃああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 俺は木箱に入った魔呼びのポーションを全力で壁に叩きつけた。

『まさかとは思ったけどやりやがったか』
『カゲオ、終わった』

「わあ!まっず!いっぱい!いっぱいスライムが来たあああああああああああ!一旦魔法陣から逃げないと危ない!危なすぎるウウウウウ!」

 そう言って黒服を見るが黒服はにやあっと笑った。

「防御結界を張れ!絶対にカゲオを魔法陣に入れるな!絶対に助けるな!」

 黒服が魔法陣を守るようにガードを固め、更に半球状の魔法結界を張った。

「ちょ!俺も入れて!おま!ふざけ!あああああああああああ!」

 スライムが迫って来る。
 俺は必死で塩を撒く。

「きえええええええええいいいいいいいい!」

『塩かけ婆だ』
『あの狂気が妖怪っぽいwwwwwwww』
『でも有効だよ。塩の結界が出来つつある』
『しかも後ろは結界だ。後ろを気にせず戦えるね。結界に感謝だwwwwww』

 俺は塩袋を大量に出して塩の山を作っていった。

『塩バリケードが出来た』
『今回もカゲオはやってくれたぜ!』
カナタ『カゲオ君、ズルをして外に出るのは駄目ですよ』
『怒られてるwwwww』

 俺は刀を振ってスライムと闘う。

「はあ!待て待て!日本人を守る為に俺はどうなってもいいとかおかしいだろ!俺はどんな目にあってもしょうがない、でもみんなはのうのうと安全に暮らしたいっておかしいおかしい!これは日本の縮図だ!おりゃあああああああああ!塩でも食らえええええ!!」

『塩かけサムライすぎるwwwwwwww』
『は、はははははは、腹が、腹が痛い。最高過ぎるよ』
『でも、順調にスライムを狩っているしボススライムも余裕で斬り倒している』
『カゲオ、成長したな』
『刀とロングナイフを装備して様になって来たね。まるでお遊戯会のようだ』

 俺は集中して戦った。
 ボススライムを刀で袈裟斬りにして俺の近くに来たスライムはすべて切り倒した。
 更に遠くには塩を掴んで投げ入れる。
 最終的にはスコップを使用して効率的に塩を振り撒いていった。
 俺は笑われつつも戦い続けた。



 ◇



「はあ、はあ、はあ、も、もう、呼吸が、やばい」
「カゲオ、呼吸を整えたらここから離れろ。次からはこの魔法陣に近づいた瞬間に炎で燃やす」

「そ、それが、はあ、はあ、命がけで戦って、生き延びた、者に対する、はあ、はあ、言葉か?」
「カゲオ、お前を気遣ってスライムは俺達が回収しておいてやる。早く行け」

『カゲオがガチで怒られている』
『これが日本か。老人の国、クレイジー日本だよ』

 コメントの中には英文を機械翻訳したと思われる声も聞こえてくる。

『まあでも、カゲオ、生きてるじゃん』
『生きてるって素晴らしいね』

「生きてるよ!死んでたまるか!」
「元気になったか。そろそろ行け」

 炎使い黒服マッチョが俺を炎で脅した。

「わああ!分かった分かった!でも走りたくないから歩く」
「次脱走を試みた場合苦痛を与える!覚悟しておけ!」

 怖い。
 黒服マッチョが怖い。

 俺は魔法陣から離れるように歩きだした。
 無言でサイダーとポテチを取り出す。

 カシュ!

「ごくごく、ぷはあああああああ!うま!」

『こいつ本当にうまそうに食べるよな』
『右手にサイダー、左手にはポテチ、最高装備か』

 俺はポテチを袋の中で砕いて袋から直接口に入れる。

『カゲオ、痩せたか?』
『痩せてる』
『そりゃあ、あれだけ血を流したらお察しでしょ』

「やつれてるんだ!ストレスと異常な運動量で弱ってるんだよ」

『元気そうで安心したよ。まだまだ行けるね』
『食べても太らない体質がうらやましい』
『俺もあんな風に気にせず美味しいものを食べたい』

「よーし!お前ら今すぐここに来い!痩せるから!ストレスで痩せるんだ!」

『えー?命を賭けて痩せるのは違うと思う』
『そういうのじゃないんだよなあ。苦労せずに痩せたい』
『はよ2階に行け』
『ステータスを見せろ』

カナタ『ステータスを見せてください』

 俺は無言でカセットコンロに火を付けて食べ物を湯せんした。
 大根を生のままかじりながらステータスを開いた。

『カゲオが大根を食べているのを見ると戦後の写真を思い出す』
『俺も思った』
『カゲオは、面倒くさがりだよな』



 カゲオ
 レベル:18→24【UP!】
 ジョブ :スケルトン
 スキル『ストレージ』『生活魔法』『苦痛耐性』『鉄壁』『スタミナセーブ【NEW!】』『治癒力アップ【NEW!】』

 スタミナセーブ:スタミナの消費を抑える。
 治癒力アップ:すべての回復力を上昇させる。


『1階でレベル24まで上げるっておかしくね?始めて見た』
『早く2階に行け』
『2階まだあ?』
『手に汗握る展開が無い。一気に5階に行こうか』

『絶対に黒服がスライムをおびき寄せているだろ』
『ああ、スライムの数が異常だ』

 しゃりしゃり、ごくん。

「手に汗握る展開はいらないし楽してレベルを上げたいけど……もうレベルが上がらなくなって来たか」

『スライムだけでレベル24まで上げるとかおかしいでしょwwwwwww』
『てかスキルを覚えすぎじゃね?』
『こんなに覚えるのって普通なのか?』
『いや、命に係わるほどの危機感とピンチが重なった事で覚えられた。本来は1つのスキルを覚える為に数か月の特訓が必要だよ』

『カゲオ、苦しい思いをした方がスキルを覚えられるってよ』
『数年分の修行をこの短期間で終わらせたか。流石人柱英雄』
『死にかけて生き延びるって大事なんだな』
『また白熱するバトルを見たい』
『1度でここまで大量のスライムを倒した人間を、かつて見た事があっただろうか?』
『もっと薄氷の上を渡るようなのが見たい』

「薄氷の氷を厚くするか。もう少しレベルを上げよう」

『滑って転ぶ未来が見える』
『カゲオの食事が好きだ。スポンサーをつけたら?』
『サイダーとポテチは行ける』
『後チョコもな』

 俺は食事の後周囲を警戒した。
 そして魔呼びのポーションを箱ごと投げて割り、その場から逃げ出す。

「ふう、これであっちにスライムが集まるだろう。休もう」

 俺はベンチと毛布を取り出して休んだ。
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