無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ

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第31話

【リコ視点】

「カケル用の食べ物はこれで全部だね」
「ええ、戻りましょう」
「カケルってきゅうに似てるよね?」
「分かりますよ。でも、本人の前で言うのはやめましょうね」
「食べてる時がきゅうみたい、ふふふ」

「カケルは、前より明るくなりましたね」
「……そうだね」
「少しだけ私達に懐いて来たよ」

「きゅうみたいに言うとカケルの機嫌が悪くなりますよ」
「え~、一番機嫌が悪くなるのはきゅうを取ろうとした時だよ」
「……そうですね」

「あ、りんご飴も買っていこうよ。りんご飴ください!」
「あ、持ちきれないですよ」

 私はりんご飴を買った。
 両手を器用に使って全部持った。

 いつもお世話になっているから何かを返したい。
 小さい事だけど、たくさん買って上げたい。

「楽しそうだなおい」
「竜崎キリヤ!か、カノンの近くに来ちゃ駄目!」

 キリヤが上に着たコートを脱ぐと、全身真っ黒な装備を晒した。

 カノンをちらっと見るとガタガタと震えていた。

「ここにはいっぱい人がいるよ!!」

 周りにいた人が私達の状況に気づいた。
 私が騒げばキリヤの状況が悪くなる。
 私はキリヤから後ずさりしながら叫んで目立った。

「おい!竜崎キリヤだぜ!」
「離れろ!あいつは危ない!」
「警察に通報するか」
「いや、近くに警察がいる」
「あいつ、カノンの近くに立ち入り禁止になったたはずだ。ヤバイぞ!」

 私達の周りから人が離れた。
 私は咄嗟に胸元に手を当てて配信を始めた。

「いっぱい人がいるよ!配信を始めたからすぐにいなくなって!」
「関係ない。カノン、来い」
「カノン!カケルの所まで逃げよう!」

『お祭りの人がいる中でもキリヤが現れたか!』
『警察に通報する』
『まずいぞ、キリヤの顔がいつもと違う』
『目の下にクマがあって、薬でもやってるのか?』
『あいつの目がおかしい』
『こんなに人が多いのに堂々とカノンちゃんの前に来た。まずい、カケルの所に逃げてくれ!』


 私は荷物を全部落とした。
 りんご飴が割れて会場にいたみんなが私達から更に離れる。
 私はカノンの手を引いてカケルの所を目指して走った。
 でも、キリヤが先回りした。

「カノン、俺に抱き着いてくれるのか?俺に抱かれたいか!ぎゃははははははは!」
「ひいいいい!」

「竜崎キリヤ!2人から離れなさい!」
「警察署に同行してもらう!」

 警察官が2人近寄って来た。
 お願い、帰って!!

「お前ら、うるさいよ」

 1人目の警察官が殴られ一瞬で倒れた。
 2人目が屋台に投げ飛ばされてガシャンと音を立て屋台の店主も逃げ出す。

 この事で皆がキリヤから完全に逃げ出す。

 カノンがキリヤに帽子を投げた。

「ネットバインド!」

 魔女帽子が蜘蛛糸のように変形してキリヤを拘束しようとした。
 だが、キリヤは糸を斬り刻む。

「そ、そんな!魔道具も効かないなんて!」
「走るよ!」

 私はカノンの手を握ってカケルの元に走るがまた先回りされた。

「来ないで!」
「ぎゃははははは!リコ、お前はどうでもいい。カノンを置いて逃げれば見逃してやってもいい」

 私はカノンの手を引いて逃げた。

「遅い遅い遅い遅い!そんなに俺に抱かれたいか」
「カノン!今は走って!」
「今はスナイプもいない。配信で情報を晒し過ぎだぜ」
「カノン!もっと速く走って!」
「裏目に出たな!俺は配信されても逃げない!そのくらいでビビらねえよ!ほら!走れ走れ!」

「カケルに連絡するよ!」
「連絡しようとしたら腕をへし折ってやる!次スマホに触れたらスマホ事お前を斬っちまうかもな!」

 キリヤの顔がぬんと私の近くに迫った。
 カケルの近くに逃げようとすると全力で回り込まれる。
 2人で会場から離れるように逃げ出した。



 私達は大穴に追い込まれた。 
 キリヤに誘導されている!

「大穴に追い込んでどうするのよ!」
「大穴の奥ならカノンは俺に頼るしかない。そうか、気が変わった。リコ、カノンに言う事を聞かせる為に生かしておいてやるよ!」

 キリヤの目がおかしい。
 もう、普通じゃない。
 捕まったら終わり。

 カノンが死角からスマホを取り出した。
 そしてカケルに連絡しようとした瞬間。

「冷める事すんなよ!」

 スマホを破壊された。

「鬼ごっこだ!大穴の奥に走れ!カケルの所に戻ろうとしたらこの場で犯す!スマホで連絡を取ろうとしたらリコ、お前の腕なら斬り落としてもいいんだぜ!走れ走れ!」
「なんで!なんでこんなことするの!なんで私達を苦しめるの!」

「言っただろ?鬼ごっこだ!3人だけで楽しくやろうぜ!!」

 私達は大穴の奥に向かって走った。



 ◇



 私とカノンは大穴の奥まで走った。
 何度も私が大虫を倒して奥に進んだ。
 武器はロングナイフ1本だけでどんどん体力を消耗していく。

「はあ、はあ、はあ、はあ」
「おいおい!もう疲れたか?ああ、そうか、俺に抱いてもらいたいのか!ぎゃはははははははは!」

 完全に遊ばれてる。
 キリヤはいつでも私とカノンを倒して好きに出来る。
 でも、キリヤは私達を追い詰めるように追いかけ回してくる。

「祭りに浮かれて無防備になりすぎだぜ!スナイプがいない!リコの武器は1本だけ!その上カケルと距離を取った!お前ら甘いんだよ!」

 通路の奥に赤と青の光が見えた。

「「グオオオオオオオオオオオオオオオ!」」

 通路の先に進むと体長5メートルほどのドラゴンの姿がはっきりと見える。

「あああ、オッドアイ!」

 オッドアイ。
 ドラゴン型の大虫で、左目が青く、右目が赤く光り、両前脚には盾のようなうろこが張り出している。
 体長5メートルほどの大きな体で私達を見下ろす。
 頭からは剣のような角が生えており、この大穴特区で多大な被害を出した元凶だ。

「あ、あああああ!カノン!止まって!」
「はあ、はあ、そん、な、オッドアイ」

 キリヤなら命が助かる可能性もあった。
 でも、オッドアイは、オッドアイに会ったら殺される。

「ぎゃははははは!ビビってんのか?いい顔だ!だが俺はドラゴンキラーだ。カノン、守ってやるよ。俺の女になると言え」
「……」

「リコが殺されてもいいのか」
「わ、私は……」
「答えちゃ駄目!キリヤはカノンを思い通りにしたいだけ!答えちゃ駄目!」

『カケル!カケルは来ないのか!』
『キリヤ!今すぐに2人を守れ!お前だけでオッドアイと戦え!2人を巻き込むな!』
『キリヤ!オッドアイと同士討ちになれ!』
『脅して言う事を聞かせるのは犯罪だ!』
『キリヤ、カノンちゃんが殺されるぞ!』

「まあいい、俺が守ってやるよ。俺がいないとお前たちは死ぬ。言う事を聞けよ。何でもだ」

『リコを使ってカノンを奴隷のようにするつもりだ。許せない!』
『だが、キリヤを捕まえるのは難しい。キリヤはドラゴンキラーだ』
『大虫を倒しているトップハンターでもキリヤを捕まえられるかは微妙だ』
『カケルなら助けに来てくれる!』

「そうそう、言っておくがな俺は何度も何度もドラゴンを倒して強くなった。それにカケルに殴られた時、あの時俺は手加減してたんだぜ」
「「グオオオオオオオオオオオオオオオ!」」

「ち、話の邪魔をしやがって、邪魔だよ。オッドアイ!」

 キリヤがダガーを構えてオッドアイに迫った。
 その瞬間にオッドアイの青い目と両盾が強く輝き、オッドアイの周りをバリアが包んだ。

「おりゃああ!なんだ!なんで刃が通らない!おらおらおらおらおらあああああああああああああああああああああああああああああ!」

 キリヤの連撃でもバリアはビクともせず、オッドアイに一切攻撃が届かない。
 オッドアイがニヤッと笑った。

「へ、へへへ、そうか、だが、いつまでそのバリアが持つんだ?カメのように丸まっているだけで俺に勝てると思うなよ!」

 オッドアイの顔が怒りに歪んだ。

「俺は速さで勝って来た!オッドアイ、盾しか能のないお前じゃ俺には勝てねえよ!」

 その瞬間にオッドアイは素早く走ってバリア事キリヤに突進した。

「速!ぐぼおおおおおおおおおお!」

 吹き飛ばされ、起き上がったキリヤに追い打ちをかけるように突進した。
 
「やめ!ぐは!たすけ!がああ!あぐ!」

 オッドアイは何度もキリヤに突進して下がって突進するを繰り返した。
 オッドアイはキリヤをなぶり殺しにしようとしている。
 いたぶって楽しんでいるんだ!

「逃げるよ!」
「はい!」

 2人で逃げようとした瞬間にオッドアイが叫んだ。

「「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!」」

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!

「ああ!たくさんの大虫が近づいてくる!こっちだよ!」

 2人で走った。
 誘い込まれるように私達は走った。
 でも走るしかない。



 そして、一本道しかない大部屋に追いこまれた。

『まずい!オッドアイは大虫を操っている!大虫に命令できるのか!』
『あいつ、人をいたぶって殺すのが好きなんだ!』
『カケルは来ないのか!』
『おい、この音ってまさか!』

 ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!

 通路の奥から足跡が聞こえる。

 そして、青と赤い瞳が私とカノンを捕えた。

 オッドアイが大部屋に現れてニヤッと笑った。

 ああ、そうか、私とカノンをここに追い込んで、キリヤみたいになぶり殺しにする気なんだ。

「ファイアカノン!」

 ドッコーン!

 カノンが奇襲をかけるように魔法を放った。

『直撃だ!』
『高威力のファイアカノンなら行ける!』
『カノンちゃんが冷静さを取り戻した』

 土煙が収まるとバリアに覆われて、ニヤッと笑うオッドアイがじりじりと近づいて来た。

「そ、そんな!無傷、なんて!」



「「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!」」

 オッドアイの声が地面を振動させた。

 私とカノンも震える。

「助けて、カケル!」
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