「打倒してしまっても構わんのだろう？」と魔王城へと向かい、逃げ帰ってきた勇者に追放された俺、その後英雄となり、美女たちと幸せライフを送る

【エムル視点】乙女の円卓会議

　２か国間会議が終わり、皆ぐっすり休んだ。
　次の日はエムルとウインを含めた回復魔法を使える者が皆を癒す。
　
　エムルはベリーに前日の会議の内容を嬉しそうに語る。
「それで王女ルナがウインに告白したんだよ！」

　ベリーを仲間外れにしたくない思いもあるが、ベリーにはもっと積極的にウインにアタックして欲しい。
　1人でいい、誰かが大人の関係をウインと結べば、後はなし崩し的に物事がうまい具合に進む。

　ウインには夜の獣になって欲しい。
　英雄は色を好むべし！

「そ、そうなのね」
　ベリーの眼が泳ぎだした。

「それでルナはウインと結婚することになったんだ！」
「え？そ、そうなの？」
　あきらかにベリーは動揺する。

「大丈夫だよ、僕とベリーとセイラもハーレムの一員に入って良い事になってるんだ」
　その時、ドアをノックする音がした。

「ごきげんよう」
「やあ、ルナじゃないか。丁度会議の告白の話をしていたんだ」
「まあ、そうなんですね。それではみんなでお話をしませんか？」

「出来れば真面目でガードの堅いウインの対策会議をしたいんだよ」
「まあ！それは良い考えですね。円卓会議を開きましょう！」
「ベリーもそれで良いよね？」
「う、うん」

　ベリーは奥手すぎる。
　すぐに会議を開くべきだ。



　◇



【ウイン視点】
　ウインが城の中を歩いていると、ベリー、エムル、ルナが円卓会議室へと入っていった。
　何やってるんだろ？気になって俺は気配を消して近づいた。


「これより円卓会議を執り行います！」
「議題は、ウインが真面目過ぎて僕たちに手を出してくれない問題で良いよね」
「はい、大きな問題です！」

「ルナにも共有したいんだけど、僕とベリーは毎日ウインの隣で添い寝してるんだ。でもウインは僕たちに手を出してこないんだよ。ウインは手ごわいんだ」
「そうなんですね」

「ベリーだってウインが押し倒してくるくっころプレイを楽しみたいはずなのに、本当にウインはひどいんだ！」
　ベリーは赤くなった。
「他にもウイン様の事を色々教えてください」

「そうだね。ウインは、ベリーが剣をしまう時の腰を振る動きが好きなんだよ。いつもベリーを後ろから見ているんだ。あと、ベリーがフレイムダンスのスキルを使っているときも良く後ろから見ているよ。」
「え？え？」
　ウインはイラつく。
　あいつ！何言ってくれてんだ！そこは黙っとくとこだろ！

　確かにベリー様の腰からお尻のラインは素敵です。男性の皆さんを虜にするでしょう。エムル様もそうですが、二人とも男を虜にする体つきです。胸もくびれもすごいです」
　ルナだってスタイルはいいだろ？
　背が小さいけど胸は普通にあるし。
　ベリーとエムルが大きいだけだ。

「僕はいいとして、ベリーは１３才の頃からデイブックでベリー後援会が出来るほど男を虜にする素質があるんだよ」
「英雄であるウイン様ですら見惚れてしまうのも分かります。私はどうすればエムル様やベリー様に近づけるでしょう？」

「まずレベルをあげるのが良いよ。レベルが上がった方が、生命力もアップして魅力も増すからね」
「なるほど。地道な積み重ねが大事……勉強になります」

「頑張って３人でウインの野生の本能を解きはなとうじゃないか。一回で良いんだ！一回でもウインの野生の本能を解放してベッドで燃えてもらえば、後はなし崩し的にうまい具合に物事が進んでいくんだ」


　ウインはそっとその場を後にした。
　エムルのやつ！覚えてろよ！



　俺はすぐにウォールに呼び止められた。
「ウイン、会議に出て欲しい」
「なんの会議だ？」

「兵力強化についての会議だ」
「俺練兵については分からない」
　自分で修業することはあっても、人に教えるのは良く分からない。
　俺が出ても意味は無いだろう。

「大丈夫だ！一回出て欲しい」
　頑なに拒否するのも悪いか。助けにならなくてもマイナスにはならないと思うし、一回出てみよう。



　２か国間会議をした部屋で、
　入って左側に奥からウォール、メア、騎士の１００人隊長が並び、
　右側にはセイラが座る。

「何でまた俺は一番奥の席なんだ？ここはウォールとセイラが座るとこだろ！」
「会議を始める！」
　無視か。
　ウォールの放置能力が高すぎる。

「アーサー王国はスタンピードで多くの兵や冒険者を失った。兵の練兵は急務だが、ディアブロ王国での練兵はどうなっているか参考にしたい」

「ディアブロ王国は、兵や冒険者は多いわ。でも、運よく生き延びて強くなった子を育てるやり方だから、参考にならないと思う」
　セイラの話を聞いて初めて現状を知った。
　やはり俺は居ても意味ないんじゃないか？

「そうか」
　ウォールは残念そうな顔をした。

「ウイン君はどうやって強くなったんでしょう？」
　メアが興味津々と言った様子で聞いてくる。

「うーん、俺も参考にはならないと思うけどそれでもいいか？」
「話してくれ。どんなヒントが出るか分からないからな」
「俺は孤児院育ちだったのもあって、大人の目を盗んで７才の頃から魔物を狩っていた」

「７才ですか！7才だと子供補正でステータスはかなり低くなりますよ？」
「孤児院に面倒見の良いお兄ちゃん的な人が居て、その人に手伝ってもらってたんだ。その人と４人パーティーだったよ」

「そのほかのメンバーは今どうしてるんだ？」
「みんな死んだ。運良く生き残ったのは俺だけだった。続けていいか？」

「……ああ、続けてくれ」

「頑張って冒険者学校の学科を飛び級で取って、実技だけの状態にしてずっと魔物を狩っていた。夏休みも関係なくずっと狩り続けて何回か危ない目に合いながら、１２才で冒険者学校を卒業して、１３才になった頃斥候レベル１００になって錬金術師になったんだ」

「１２才で卒業って！普通に通って１５才で卒業ですよ！何段飛びの飛び級ですか！？」

「１3才！俺が戦士のレベル１００になったのが１８才の時だった！俺でもかなり早い方だった！というか、１００になる前に死ぬやつが多い」

　ウォールは驚愕する。
　レベルアップの早い人間ほど死にやすい。
　無謀な魔物狩りをする為、ある時突然死ぬ者が多いのだ。
　逆に慎重な人間は死ににくくはあるが、強くなる者が少ない。
　ウインは慎重さと大胆さを兼ね備えた珍しいタイプの人間なのかもしれない。

「危ない目に合ってきたから、無茶をしてかなり運よく生き延びたんだと思う。特に１つ目のジョブの時は危なかった。でも斥候だったのが良かったかもしれない。戦闘力は低くても敵を感知出来るからな。１４才で殺されかけて、魔の森で修行したんだ」

「殺されかけたってのが良く分からないんだが？」

　俺は今までの勇者パーティーにいた時の経緯を話した。

「そんな目に合ったのね」
　セイラが悲しそうな表情をする。
「まともな人生じゃなかったんだな」

「そうかもな。で、魔の森でも最初は死にかけたんだけど、錬金術師と斥候のスキルのおかげで生き延びたよ。戦闘スキルは強くなかった代わりに生活していく能力は高くなっていたんだ。魔物を狩りまくってたら、運良く死なずに強くなってた」

「入ったら死ぬって言われている魔の森で生き延びたんですね！普通は死にますよ！」
「参考にならないだろ？」
「いや、助かった。地道な努力が大事か。所で、ウインのトータルレベルと、固有スキルだが、もし良ければ教えてくれないか？目標にしたい」

「トータルレベルが９５３で、固有スキルはキャンプだ。」

　アーサー王国側がざわつきだした。
　ディアブロ王国は、前に魔王にトータルレベルを話していたせいか、驚かれなかった。

「９５３だと！世界最強じゃないか！？」
「私と同じ一般ジョブでそんなに強くなれるんですね！驚きです！」



　しばらくざわつきは収まらなかった。
　特に騎士の１００人隊長が騒がしい。
「固有スキルのキャンプってのは強いのか？」

「テントを早く正確に設営する・自身の回復力が常時上がる・後はキャンプハウスとキャンプファイヤくらいか」
「キャンプファイヤ？」
「MPを消費してキャンプファイヤを出すんだ。２４時間燃え続ける」

　そう言って俺は外に出てキャンプファイヤを使った。
　みんなが窓を見ていたが、がっかりした表情を浮かべた。

「地味だな」
「地味ね」
「思ったよりよわそうです」


　皆は重要な部分を見逃していた。
　キャンプファイヤは一度魔物に当てて発動したら、２４時間解除出来ずに燃え続ける。
　特定の状況下では、ボスすらキャンプファイヤ一発でじわじわと焼き殺すことが出来るのだ。

「ファイナルスラッシュとかそういうかっこいいのは無いぞ！」
「おほん！ウイン、俺たちが強くなるにはどうすれば良いと思う？」
　ウォールが仕切り直す。

　みんなの視線が一斉俺に集まった。

「人材不足の解消が一番の近道だと思う。魔王もウォールもそうなんだけど、国最強の者が内政で時間を取られ、騎士団の管理をして魔物と毎日戦えてないだろ？兵の管理をする人と魔物を倒す人をもっと分業出来たら良くなると思う。アーサー王国で言えば、軍師を入れるのが良いと思う。１００人隊長から選べたら楽だよな。一人くらい指揮や軍師が得意なやつはいるんじゃないか？」

　俺が１００人隊長に目を向けると、みんなの背筋がピンと伸びる。
「確かに、そうだな。参考になった。任せられることは任せる。王に相談してみよう」

「俺のレベルを言ったからみんなのレベルも見せてもらうぞ」
　俺は斥候スキルでみんなのステータスを確認した。

　ウォール　トータルレベル１８０　戦士レベル１００　格闘家レベル８０　固有スキル：剛力

　メア　トータルレベル１５０　魔法使いレベル１００　治癒士レベル５０　固有スキル：高魔力

　騎士１００人隊長は全員トータルレベル１００未満か。

　セイラ　レベル１８０　固有スキル：青竜
　セイラの青竜はレアスキルだから、今の所セイラが強いな。

「ふむふむ」
　セイラはなぜか自分の胸を隠していた。
「ウォールはもう少しじゃないか。」

「ああ、だがあと２０が長い。」

「どういうこと？」
「俺の格闘家レベルが今８０で、あと少しで１００になるという話だ」
「そう言う事ね」

「俺のレベル上げは後回しになる。ルナ様のレベル上げだが、俺とメアが指導の命を受けている」
「国最強の戦士と魔法使いを教育係に使うのか！」
「王がルナ様を溺愛しているのもあるが、未来の国益を考えると、間違った判断ではない」

「んん？」
　俺は納得できず首を傾げた。

「ルナ様の戦闘能力が上がれば、護衛の数を減らすことが出来る。ルナ様の魔眼は相手の本質を見抜き、犯罪を未然に防止できる。魔眼持ちの機動力が上がれば国の運営にはプラスに働く」

「そういうことか。俺も少しは役に立つように薬草採取の為の魔物狩りをする」
　薬草を多く採取し、ポーションの生産量が増えれば、その分新兵のケガの手当ても楽になり、連戦も出来るようになる。レベル上げには効果的なのだ。
「そうしてもらえると助かる」



　俺は会議を終え、王都の情勢が落ち着いてすぐに魔の森に向かった。
　皆には動きが早いとか、せっかちとか言われたが、普通だと思うぞ？


　ウインは分かっていない。
　ウインの動きは速すぎて次へ次へと行きすぎる事を。
　ウインの戦闘力の強さも加わり、ウインの行動の速さは周りから見て常軌を逸したように映ったのだ。