「打倒してしまっても構わんのだろう?」と魔王城へと向かい、逃げ帰ってきた勇者に追放された俺、その後英雄となり、美女たちと幸せライフを送る

ぐうのすけ

文字の大きさ
50 / 115

ウインと勇者

しおりを挟む
 アーサー王国の王都に着く。

 街の外では、ボロボロになった勇者と聖騎士が数十人の騎士に囲まれ揉めている。

 俺は奴らを無視して防壁の門を通ろうとしたが、勇者ブレイブが俺に向かって叫んだ。
「おい!ウイン!何で無能のウインが何のチェックも無く王都の中に入れるんだ!なぜ英雄で勇者の俺が騎士に囲まれている!?おかしいだろーがああ!」

 ガーディーも怒鳴る。
「力が無いウインはずる賢い手を使って国に取り入ったに違いない!」

 相変わらずだな。
 何日もボロボロになるまで睡眠時間を削って逃げて、まだ怒鳴れるほど余裕なのか?
 いや、追い詰められて余裕が無いから怒鳴っているのか。

「貴様!ウイン殿をバカにするな!」
「魔物を押し付けた卑怯者の癖に!英雄ウイン様をバカにするな!」
「今ここで殺した方がこの国の為だ!!武器を構えろ!!」
 騎士が武器を構える。

「無能どもが!勇者の力を見せてやる!」
「力の差も分からんか!}
 勇者ブレイブと聖騎士ガーディーも武器を構えた。

 まずい!あの2人はボロボロとはいえレアジョブの勇者と聖騎士だ。
 騎士と勇者達が衝突してあの2人だけが死ぬのはいいが、国の為を思って頑張る騎士に犠牲が出るのは駄目だ。

「待て!一旦止まってくれ!」
 俺は双方を止めに入った。

 だがその横から兵士の男が入ってくる。
「ま、待ってください!英雄ウイン・ベリーと勇者ブレイブ・聖騎士ガーディーのバトルコロシアムの戦いで決着をつけるよう命令を受けております。一旦ブレイブ・ガーディー両名を王都の中に入れるようにと」

 騎士が兵士の男を睨みつけた。
「それはどなたからの命令だ?」
「ホープ大臣からです」
「ウォール様やメア様の命令でも、他の100人隊長の命令でもないのだな?」
「そうなります」

「内政のトップであるホープ大臣は我ら直属の上司ではない。命令を聞く筋合いはない」
 内政と騎士団で指揮系統が違うんだよな。
 ここはルナが言えば止まるだろう。
 ルナは王女だ。
 ルナが言えば済む話。

 だが、兵士、数名の騎士、そしてルナや他の者も何故か俺を見た。
 ……おれか!?

「皆の怒りも分かるがお互い武器を納めてくれ。ホープ大臣は意味の無い命令は出さない人間だ」
「ふ、俺には逆らえないよな」
「小心者か!」
 ブレイブとガーディーの言葉に再び騎士達が武器を構える。

「なんだ!?殺されたいのか!!この勇者ブレイブに歯向かうのか!!!」

 あいつら馬鹿なのか?
 この状況で騎士を挑発して死ぬと思わないのか?
 いや、馬鹿だよな。
 馬鹿だった。

「抑えてくれ、騎士が本気で殺しに行ったらブレイブもガーディーも死んでしまうだろう」
「貴様!つけあがるなよ!!」
「無能の癖に、俺を見下すなよ!!」

 ブレイブとガーディーの敵意を俺が集める。
 2人が俺に向かって走ってくるが、俺は手招きをしつつステップを踏んで門の中に入っていく。

「ほら遅い!早く走れ!」
 更に挑発すると2人は走って追って来た。

 門の中に入ると、ホープ大臣が居り、そのサイドにウォールとメアが居た。
 100を超える兵士が列を組む。
 更に俺とブレイブ、ガーディーの周りの半径10メートル以外を埋め尽くすように国民が密集している。
 門の外からは騎士と兵士、ベリー達も中に入って俺達は完全に囲まれた。

 国民が勇者を非難する。
「お前のせいで父さんがゴブリンに殺された!お前が死ねばよかったんだ!」
「私は恋人を殺された!人殺しいい!」
 非難お声が大きくなり誰が何を言っているか分からなくなる。
 
 分かる事はブレイブとガーディーに対する皆の敵意。
 ブレイブとガーディーの顔を見て確信した。
 こいつら、自分がどう思われているか今知ったんだ。

 デイブックの新聞では情報が管理されこの国の実情が伝わっていなかった。
 ブレイブとガーディーは怒鳴りながら周りに向かって何かを叫ぶが、何を言っているか聞こえない。
 ブレイブ・ガーディー、そして俺に魔道カメラがカシャカシャと音を立てて光が点滅する。
 10分ほどその状態が続いた。


 ホープ大臣が魔道マイクを構える。
「皆の気持ちはよく分かります!しかし、英雄ウインは弱った者を一方的に嬲り殺すような卑劣な真似を許さないでしょう!そこで3日間勇者ブレイブと聖騎士ガーディーに十分な休息と食事を摂らせ、その上で3日後にバトルコロシアムの開始をする事を宣言いたします!!!!」

 いや?ブレイブとガーディーなら今から殴ってもいいぞ?
 クズにまともな対応をしても駄目だ。
 悪にはまともな対応は無意味だと学んだ。

 まあ、殴らないけど。
 ブレイブはプライドが高い。
 大勢の前で倒れるブレイブは見ものだ。
 ブレイブのプライドをバッキバキにへし折る。
 ホープ大臣の思惑に乗ろう。
 

 歓声が鳴り響き鳴り止まない。


「お静かに!!」
 大臣の声で皆静かになるが、ブレイブだけはうるさい。

「俺はこいつなんかに負けない!簡単に倒せる!!」
「どうやらブレイブは噂通りの異常者のようです。話を続けます。コロシアムへの入場料の設定はまだ未定ですが、コロシアムの前ではバトル祭りの屋台やその他のイベントも同時開催されます。開催日までに皆働き、お金を貯め、そして多くの者で参加しましょう。恐らく1万人分の座席だけでは足りず、立ち見のお客様も出るかと思います。皆さん、3日後の祭りを存分に楽しんでスカッとしましょう。以上です」

 そう言ってホープ大臣は後ろに控えた文官に指示を飛ばしつつ王城に戻って行った。

 ブレイブとガーディーは兵士に案内され、宿屋に向かう。
 2人とも何か言っていたが聞き取れない。
 罵倒していたんだろう。

 国民から激励が送られるが何を言っているか分からない。
 俺達は門の外に出る。

 騎士と兵士がにこにこしながら俺に声をかけてくる。
「ウイン殿の活躍、楽しみにしています」
「みたいなー。俺もコロシアムに行きたい!」

 俺は手を振って魔物狩りに戻るが、更に兵士と騎士は話し込む。
「俺バトルの日に仕事なんだ!見たいな~」
「はははは!俺はばっちり休みだ!10万ゴールドまでなら出す!特等席に座るぜ!」
「バトルマニアめ、だがブレイブが地面とキスをする瞬間は見たい」

「それは新聞で見れるだろ?」
「ここ3日間の新聞のチェックは必須だよな」
「新聞は7日分は必須だろ」
「うおっほん!そろそろ仕事に戻ろうか!」
 上司が手を叩いて話を切り上げている。
 クモの子を散らすように皆が仕事に戻っていった。


「静かになった」
「ウイン、大変ね。人前に出るの、好きじゃないわよね?」
「ベリー、何を言っているんだ?俺とベリーVSブレイブ・ガーディーの戦いだ。ベリーも出るんだが?」

 ベリーが固まった。
 ベリーの頬をつんつんするがしばらく動きが止まっている。

 その日魔物狩りに戻った俺達だが、バトルの日までベリーの元気は無かった。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...