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スピードホース
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太陽が上に昇り日差しが気持ちいいがエムルがウルサイ。
だが対応してはいけない。
ご褒美を与える事になりかねない。
怒って相手をコントロールしようとする者の言う通りにしていい結果は得られない。そう、得られないのだ。
エムルの人格を矯正すべきだ。
「ルナ、各国の状況を教えて欲しい」
「アーサー王国ですが、デイブックからの人口流入が加速していますわ。デイブックの住みにくさを感じていた人間は多いようです」
「あの国は寛容さが無いからな。一部の何もしない人間の声が大きくて、ぎすぎすしている感じが居心地悪い。会社は軍隊のようだけどその割に効率は悪い」
「そうですわね。デイブックはまじめな人間が多いですが、アーサー王国に来て表情が柔らかくなった者は多いようですわ」
「アーサー王国に来てデイブックのギスギス感を異常に感じている人は多いだろうな」
「アーサー王国で暮らして幸せを感じている人は多いわ。一旦デイブックに帰ってアーサー王国の良さを伝える人が増えたのが大きいわね」
「アーサー王国は以上ですわね。次にディアブロ王国ですが、エムルの急速な改革でアーサー王国並みに法が整いましたわ。ただ、エムルが稀に変な法案を挟み込んできますわ」
「結婚した女性を奴隷化する奴か」
「それだけじゃないわ。ドM団体を作ろうとしたり、Mの教本を作ろうとしたり、裏でも動いているわね」
「後はデイブック民主国ですが、ウォールの斥候の結果、どうやらゴブリンキングバグズがデイブックを攻めようとしているようですわ。ただ、まだ確証が無い様ですわ。その件についてアーサー王と魔王様で会議を行いようですわ」
「そうか」
恐らく、バグズがデイブックを攻めるなら両国は揃って無視する事になるだろう。
デイブックはディアブロを敵国扱いして不満のはけ口にした。
しかもアーサー王国にバグズとドラゴンをなすりつけて大量の死者を出した。
両国の国民を敵に回しすぎたんだ。
更に助ける為にもし軍を出そうものなら魔物をなすりつけられるリスクを負う事になる。
アーサー王国にデイブックの人が入ってきた事で、デイブックの異常性は噂で広まっているだろうが、デイブックは調べず決めつけて批判する層が居るからな。
「そんな所か?」
「そうですわね。今開拓の力仕事や物流の足が不足していますわ。スピードホースのテイムは正しい判断だと思いますわ」
「そうか。ま、テイムだけなら気が楽だ」
そして俺達はスピードホースの縄張りに向かった。
◇
「思ったより多いわ」
草原を見渡すとスピードホースの群れがいくつも居た。
「そうだな……3000ってとこか、ちょっと行ってくる」
テイムを試した経験が無い。
テイムしてしまうと育成が面倒なんだよな。
魔物をいたぶって弱らせてからテイムを使わないとテイムできない。
テイム自体も手間ではある。
俺はスピードホースを殴ってテイムしていく。
「テイム!テイム!テイム!テイム!テイム!」
……成功率は20%ってとこか。
テイムの成功率は魅力的な者の方が高いらしい。
「ルナ、テイムしてみて欲しい」
「やってみますわ。テイム!テイム!テイム!」
テイムされた3体のスピードホースがルナにすり寄る。
ルナは100%テイムを成功したのか。
「おかしい」
「うふふふふ、くすぐったいですわ。可愛いですわね」
スピードホース3体がルナにすりすりしている。
俺には来ない。
俺は回り込んでテイムしたスピードホースの前に立ったがプイっと顔を背けられた。
個体差なのか?
「ま、まだ2体しかテイムしていない。もっとテイムしてみようテイムテイムテイムテイムテイムテイムテイム」
俺は10回以上テイムを使った。
テイム率が、20%も無い、だと!
「ルナ!使えるだけテイムを使ってみて欲しい!俺はスピードホースを攻撃して弱らせる!」
「分かりましたわ」
俺はスピードホースを弱らせつつちらちらとルナを見た。
ルナは100%テイムしている……だと!
ルナの魅力か!魅力なのか!
「なあ、スピードホースって男だとテイムしにくいとかなんかあるのか?」
「聞いたことがありませんわね」
「聞いた事が無いよ」
「分からないわ」
「そ、そうか」
「ルナにテイムは任せよう」
「もう、魔力が足りませんわ」
「口移しで俺の魔力を補給しよう。魔力ポーションを大量に装備してくれ」
「はあ、はあ、ぼ、僕が」
「エムルうるさい!」
エムルは俺に怒鳴られると赤くなっておとなしくなった。
く、ご褒美を与えてしまったか。
魔力ポーションを飲んでも少しずつしか魔力は回復しないが口移しならポーションより早く魔力を回復できる。
ルナが髪を整える。
「わ、分かりましたわ」
ルナとキスをして魔力を供給するが、エムルとベリーが俺達を凝視していた。
結局俺の魔力が尽きると、何故か俺がベリーやエムルとキスをして魔力を回復してからルナとキスをして魔力を供給する事になった。
ルナは「エムルとベリーにお世話になりましたわ。わたくしのご褒美はその形にしたいのですわ」と言っていた。
俺達は全員レベル200越えだ。
超効率でスピードホースをテイムしていく。
「さ、さすがに疲れますわ」
「ぼ、僕は余裕だよ!」
ベリーは赤くなって何も答えない。
「今日は休もう、スピードホース!こっちに来てくれ!……」
動きが無い、だと!
「ルナ、スピードホースを呼んでくれないか?」
「わたくしがやっても同じですわ」
「いや、やってみて欲しい」
「わ、分かりましたわ。みんな、帰って休みますわよ」
スピードホースはまるで軍隊のように隊列を組み、ルナに従った。
……おかしい。
俺は絶望に打ちひしがれたまま、キャンプハウスのスキルで家を出した。
諦めきれない。
俺はスピードホースにニンジンを持って行った。
「ほら、たべ」
言い終わる前にスピードホースはプイっと顔を背けた。
……
「ルナ!ちょっと来てくれ!」
「どうしましたの?」
「このニンジンをスピードホースに食べさせて欲しい」
「分かりましたわ」
スピードホースは嬉しそうにニンジンを食べ、しかも食べ終わるとルナにすりすりしていた。
「ベリー!ちょっと来てくれ!」
俺の予想ではベリーにも懐く。
スピードホースはベリーにも懐いていた。
対応がルナと変わらない。
スピードホースは幸せそうにルナとベリーにすりすりしている。
俺は最悪のケースを想定した。
ルナとベリーはまあいいだろう。
魅力がある。
問題はエムルだ。
奴の見た目はともかくとして、性格はあれだ。
あれなエムルにも懐いてしまうのか?
俺に懐かず、エムルに懐いてしまったら、俺は生涯にわたって心の傷を負ったまま生きていく事になるだろう。
だがもう一人の俺が訴えかけてくる。
エムルにそっぽを向いて安心したいと、心が囁いてくる。
俺は決断した。
「エムル!スピードホースにニンジンを、ニンジンを食べさせてくれ!!」
俺は心のもやもやを吐き出すように言った。
「もっと命令するように」
「いいからやれやボケがあ!!!!」
くう、俺は追い詰められている。
思わず怒鳴ってしまった。
俺はエムルを見つめる。
エムルの持ったニンジンをスピードホースがおいしそうに食べ、エムルにすりすりしていた。
懐いた!
懐きやがっただと!
俺はスピードホースに裏切られた。
俺は敗北した。
打ちのめされたのだ。
動悸が激しい。
「お、俺は休んでくる」
絞り出すように言ってその場を離れた。
そしてベッドで泣いた。
こんな屈辱を受けたのは勇者パーティーに追い出された時以来だ!
お、俺は、自分で走った方が速いし。
俺の方がスタミナあるし!
俺は心に一生消えない傷を残してスピードホースのテイムを終わらせた。
◇
【魔王視点】
セイラが笑顔で書類を手渡してきた。
「最近平和です。ずっと続いて欲しいものですね」
「うむ、そうだな」
セイラには苦労をかけた。
エムルとセイラは相性が悪い。
無理に無理を重ねさせた。
エムルがいなくてもいいようにと最近文官のレベルが上がった。
恐怖は人を突き動かす、か。
エムルという恐怖が文官を成長させたか。
「少し休憩にしましょう」
文官がコーヒーを持って来た。
「助かる」
コーヒーを啜り、体の力を抜く。
最近は内政が安定し、こうした余裕も出て来た。
常に気を張って頑張り続ける事は不可能。
こうした安らぎも必要なのだ。
「た、大変です!街の外に!」
「エムルか!エムル以外の問題か!」
「そ、それが、3000ほどのスピードホースがこの地に一直線で迫ってきます!先頭には!エムル様!ベリー様!ルナ様!3名がスピードホースに乗って走っています」
エムルの言葉を聞いた瞬間文官の作業が中断された。
まずい!文官のやる気が落ちている!
エムルに植え付けられた心の傷は深いのだ!
「まだ最悪の事態とは言えない!心を穏やかにするのだ!」
全員が私を見ている。
私が取り乱してはいけない。
私が威厳を示す必要がある。
パニックを起こしてはいけない。
「私が前に出て状況を確認してこよう。皆はいつも通りにしているのだ!」
私は急いで現場に向かった。
3000のスピードホースが砂煙を上げ、足音を打ち鳴らす。
私の前でスピードホースが整列した。
この短期間でこれだけの数をテイムしたというのか!
ん?ウインはどこだ?
ウインは少し遅れて走って私の近くに来た。
顔色が悪い。
エムルを押し付けたせいか。
私はウインの肩を叩いた。
「苦労をかけた。ゆっくり、休んでくれ」
「……そうだな」
ウイン、すまない。
エムルを抑えられるのはもうウインしかいないのだ。
エムルのレベルが上がり、下手をすれば私が力で負ける可能性もある。
「魔王、折角スピードホースが到着したんだ。乗ってみないか?」
「いいのか?」
「ああ、俺は、休む」
スピードホースを見渡し、1体を選ぶ。
近くによると顔を擦りつけてくる。
はははは、可愛い奴だ。
スピードホースに乗ると張り切って駆け出した。
何故かウインは私を見て目を見開いていた。
「ははははははは!やはり馬はいい!特にスピードホースは最高だ!」
こうしてしばらくスピードホースに乗って楽しんだ。
2時間ほどスピードホースと戯れていたようだ。
遅れて政務に戻るとセイラから注意を受けた。
だが対応してはいけない。
ご褒美を与える事になりかねない。
怒って相手をコントロールしようとする者の言う通りにしていい結果は得られない。そう、得られないのだ。
エムルの人格を矯正すべきだ。
「ルナ、各国の状況を教えて欲しい」
「アーサー王国ですが、デイブックからの人口流入が加速していますわ。デイブックの住みにくさを感じていた人間は多いようです」
「あの国は寛容さが無いからな。一部の何もしない人間の声が大きくて、ぎすぎすしている感じが居心地悪い。会社は軍隊のようだけどその割に効率は悪い」
「そうですわね。デイブックはまじめな人間が多いですが、アーサー王国に来て表情が柔らかくなった者は多いようですわ」
「アーサー王国に来てデイブックのギスギス感を異常に感じている人は多いだろうな」
「アーサー王国で暮らして幸せを感じている人は多いわ。一旦デイブックに帰ってアーサー王国の良さを伝える人が増えたのが大きいわね」
「アーサー王国は以上ですわね。次にディアブロ王国ですが、エムルの急速な改革でアーサー王国並みに法が整いましたわ。ただ、エムルが稀に変な法案を挟み込んできますわ」
「結婚した女性を奴隷化する奴か」
「それだけじゃないわ。ドM団体を作ろうとしたり、Mの教本を作ろうとしたり、裏でも動いているわね」
「後はデイブック民主国ですが、ウォールの斥候の結果、どうやらゴブリンキングバグズがデイブックを攻めようとしているようですわ。ただ、まだ確証が無い様ですわ。その件についてアーサー王と魔王様で会議を行いようですわ」
「そうか」
恐らく、バグズがデイブックを攻めるなら両国は揃って無視する事になるだろう。
デイブックはディアブロを敵国扱いして不満のはけ口にした。
しかもアーサー王国にバグズとドラゴンをなすりつけて大量の死者を出した。
両国の国民を敵に回しすぎたんだ。
更に助ける為にもし軍を出そうものなら魔物をなすりつけられるリスクを負う事になる。
アーサー王国にデイブックの人が入ってきた事で、デイブックの異常性は噂で広まっているだろうが、デイブックは調べず決めつけて批判する層が居るからな。
「そんな所か?」
「そうですわね。今開拓の力仕事や物流の足が不足していますわ。スピードホースのテイムは正しい判断だと思いますわ」
「そうか。ま、テイムだけなら気が楽だ」
そして俺達はスピードホースの縄張りに向かった。
◇
「思ったより多いわ」
草原を見渡すとスピードホースの群れがいくつも居た。
「そうだな……3000ってとこか、ちょっと行ってくる」
テイムを試した経験が無い。
テイムしてしまうと育成が面倒なんだよな。
魔物をいたぶって弱らせてからテイムを使わないとテイムできない。
テイム自体も手間ではある。
俺はスピードホースを殴ってテイムしていく。
「テイム!テイム!テイム!テイム!テイム!」
……成功率は20%ってとこか。
テイムの成功率は魅力的な者の方が高いらしい。
「ルナ、テイムしてみて欲しい」
「やってみますわ。テイム!テイム!テイム!」
テイムされた3体のスピードホースがルナにすり寄る。
ルナは100%テイムを成功したのか。
「おかしい」
「うふふふふ、くすぐったいですわ。可愛いですわね」
スピードホース3体がルナにすりすりしている。
俺には来ない。
俺は回り込んでテイムしたスピードホースの前に立ったがプイっと顔を背けられた。
個体差なのか?
「ま、まだ2体しかテイムしていない。もっとテイムしてみようテイムテイムテイムテイムテイムテイムテイム」
俺は10回以上テイムを使った。
テイム率が、20%も無い、だと!
「ルナ!使えるだけテイムを使ってみて欲しい!俺はスピードホースを攻撃して弱らせる!」
「分かりましたわ」
俺はスピードホースを弱らせつつちらちらとルナを見た。
ルナは100%テイムしている……だと!
ルナの魅力か!魅力なのか!
「なあ、スピードホースって男だとテイムしにくいとかなんかあるのか?」
「聞いたことがありませんわね」
「聞いた事が無いよ」
「分からないわ」
「そ、そうか」
「ルナにテイムは任せよう」
「もう、魔力が足りませんわ」
「口移しで俺の魔力を補給しよう。魔力ポーションを大量に装備してくれ」
「はあ、はあ、ぼ、僕が」
「エムルうるさい!」
エムルは俺に怒鳴られると赤くなっておとなしくなった。
く、ご褒美を与えてしまったか。
魔力ポーションを飲んでも少しずつしか魔力は回復しないが口移しならポーションより早く魔力を回復できる。
ルナが髪を整える。
「わ、分かりましたわ」
ルナとキスをして魔力を供給するが、エムルとベリーが俺達を凝視していた。
結局俺の魔力が尽きると、何故か俺がベリーやエムルとキスをして魔力を回復してからルナとキスをして魔力を供給する事になった。
ルナは「エムルとベリーにお世話になりましたわ。わたくしのご褒美はその形にしたいのですわ」と言っていた。
俺達は全員レベル200越えだ。
超効率でスピードホースをテイムしていく。
「さ、さすがに疲れますわ」
「ぼ、僕は余裕だよ!」
ベリーは赤くなって何も答えない。
「今日は休もう、スピードホース!こっちに来てくれ!……」
動きが無い、だと!
「ルナ、スピードホースを呼んでくれないか?」
「わたくしがやっても同じですわ」
「いや、やってみて欲しい」
「わ、分かりましたわ。みんな、帰って休みますわよ」
スピードホースはまるで軍隊のように隊列を組み、ルナに従った。
……おかしい。
俺は絶望に打ちひしがれたまま、キャンプハウスのスキルで家を出した。
諦めきれない。
俺はスピードホースにニンジンを持って行った。
「ほら、たべ」
言い終わる前にスピードホースはプイっと顔を背けた。
……
「ルナ!ちょっと来てくれ!」
「どうしましたの?」
「このニンジンをスピードホースに食べさせて欲しい」
「分かりましたわ」
スピードホースは嬉しそうにニンジンを食べ、しかも食べ終わるとルナにすりすりしていた。
「ベリー!ちょっと来てくれ!」
俺の予想ではベリーにも懐く。
スピードホースはベリーにも懐いていた。
対応がルナと変わらない。
スピードホースは幸せそうにルナとベリーにすりすりしている。
俺は最悪のケースを想定した。
ルナとベリーはまあいいだろう。
魅力がある。
問題はエムルだ。
奴の見た目はともかくとして、性格はあれだ。
あれなエムルにも懐いてしまうのか?
俺に懐かず、エムルに懐いてしまったら、俺は生涯にわたって心の傷を負ったまま生きていく事になるだろう。
だがもう一人の俺が訴えかけてくる。
エムルにそっぽを向いて安心したいと、心が囁いてくる。
俺は決断した。
「エムル!スピードホースにニンジンを、ニンジンを食べさせてくれ!!」
俺は心のもやもやを吐き出すように言った。
「もっと命令するように」
「いいからやれやボケがあ!!!!」
くう、俺は追い詰められている。
思わず怒鳴ってしまった。
俺はエムルを見つめる。
エムルの持ったニンジンをスピードホースがおいしそうに食べ、エムルにすりすりしていた。
懐いた!
懐きやがっただと!
俺はスピードホースに裏切られた。
俺は敗北した。
打ちのめされたのだ。
動悸が激しい。
「お、俺は休んでくる」
絞り出すように言ってその場を離れた。
そしてベッドで泣いた。
こんな屈辱を受けたのは勇者パーティーに追い出された時以来だ!
お、俺は、自分で走った方が速いし。
俺の方がスタミナあるし!
俺は心に一生消えない傷を残してスピードホースのテイムを終わらせた。
◇
【魔王視点】
セイラが笑顔で書類を手渡してきた。
「最近平和です。ずっと続いて欲しいものですね」
「うむ、そうだな」
セイラには苦労をかけた。
エムルとセイラは相性が悪い。
無理に無理を重ねさせた。
エムルがいなくてもいいようにと最近文官のレベルが上がった。
恐怖は人を突き動かす、か。
エムルという恐怖が文官を成長させたか。
「少し休憩にしましょう」
文官がコーヒーを持って来た。
「助かる」
コーヒーを啜り、体の力を抜く。
最近は内政が安定し、こうした余裕も出て来た。
常に気を張って頑張り続ける事は不可能。
こうした安らぎも必要なのだ。
「た、大変です!街の外に!」
「エムルか!エムル以外の問題か!」
「そ、それが、3000ほどのスピードホースがこの地に一直線で迫ってきます!先頭には!エムル様!ベリー様!ルナ様!3名がスピードホースに乗って走っています」
エムルの言葉を聞いた瞬間文官の作業が中断された。
まずい!文官のやる気が落ちている!
エムルに植え付けられた心の傷は深いのだ!
「まだ最悪の事態とは言えない!心を穏やかにするのだ!」
全員が私を見ている。
私が取り乱してはいけない。
私が威厳を示す必要がある。
パニックを起こしてはいけない。
「私が前に出て状況を確認してこよう。皆はいつも通りにしているのだ!」
私は急いで現場に向かった。
3000のスピードホースが砂煙を上げ、足音を打ち鳴らす。
私の前でスピードホースが整列した。
この短期間でこれだけの数をテイムしたというのか!
ん?ウインはどこだ?
ウインは少し遅れて走って私の近くに来た。
顔色が悪い。
エムルを押し付けたせいか。
私はウインの肩を叩いた。
「苦労をかけた。ゆっくり、休んでくれ」
「……そうだな」
ウイン、すまない。
エムルを抑えられるのはもうウインしかいないのだ。
エムルのレベルが上がり、下手をすれば私が力で負ける可能性もある。
「魔王、折角スピードホースが到着したんだ。乗ってみないか?」
「いいのか?」
「ああ、俺は、休む」
スピードホースを見渡し、1体を選ぶ。
近くによると顔を擦りつけてくる。
はははは、可愛い奴だ。
スピードホースに乗ると張り切って駆け出した。
何故かウインは私を見て目を見開いていた。
「ははははははは!やはり馬はいい!特にスピードホースは最高だ!」
こうしてしばらくスピードホースに乗って楽しんだ。
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