「打倒してしまっても構わんのだろう?」と魔王城へと向かい、逃げ帰ってきた勇者に追放された俺、その後英雄となり、美女たちと幸せライフを送る

ぐうのすけ

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ヤマトの当主とキュウビ

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 俺とベリーはタケルの元を訪れる。
 ベリーには首輪を装着してもらい、周りの者には正体を隠した。

「何の要件じゃ?」
「人払いをして話をしたい」
「そうか、ついてくるのじゃ」

 俺はあっさり許可をもらい、茶の間に案内される。



「それで?」
「ベリーの秘密についてだ」
「ベリーがきつね族だった、かの?」

 俺とベリーは驚愕する。
「な!なぜわかった!」
「大したことではない。ベリーの動きはきつね族特有の尻尾や耳を気にした動きでの、そこからピンと来たわけじゃ」
 大したことではないと言いつつタケルはどや顔をしている。

「それだけかの?」
「それだけって、いいのか?」
「わしは気にせんわい。ただの、周りには見せるでないぞ。ベリーを殺しに来る者も居るかもしれん」

「もう一つ言っておく事があるの、私気づいたらきつね族の集落に居て、それより前の記憶が無いの」

「うーむ、思い出したことがあるんじゃがの」
「なんだ?」
「キュウビとオロチじゃが、ヨウザン、北島の領主が何か言っておったのう。何と言っておったか思い出せん」
「その情報が欲しい」
「うむ、手紙を出そう。ベリーよ」


「何?」
「苦労をかけたのう」
 タケルが唐突に頭を下げてきた。

「きつね族の事?」
「きつね族が苦労しとることもそうじゃし、ベリーの不幸もそうじゃ」
 タケルは短くそう言ったが、恐らくその短い言葉の中には多くの苦悩を抱えている。
 そう思った。

 周りの反対を押し切って食料を与えるが、きつね族を防壁の内側の城下町に住まわせることは出来ていない。
 色々な葛藤と向きあって来たんだろう。

「ワシはのう、キュウビとオロチを何とかしたい。それさえ出来れば内政は安定する」
 協力しよう。
 そう決めた。
 タケルの事は信頼できると思った。

「俺も戦う。いつ行く?」
「今と言ったらどうする?」
「すぐに出発しよう」
「お主とは気が合うのかもしれんのう」




 俺達は3日かけてキュウビの縄張りの近くにたどり着いた。
 俺・ベリー・タケルの他に53人のタケルの部下を引き連れていたが、ベリーを怖がるものは1人も居なかった。

「おりゃ!」
 3体のきつねの魔物を斬り倒す。

「うむ、見事なもんじゃのう」
「タケルも出来るだろ。所で、この狐がキュウビの生み出した魔物か?」
「そうじゃのう。放置するだけで増えていく。時期を見てきつね狩りが必要じゃ」
 
「ん?強い反応がある」
「キュウビかの?」
「分からない」

 少しベリーの反応と似ている。
 これは言わない方が良いだろう。

 俺は走って反応のあった地点に迫った。
 ベリーとタケルもついてくる。

 そこにはベリーに似た、というより、ベリーと同じ顔をしたキュウビが居た。
 キュウビは尻尾が9本ある。
 そして着物を着ている。

 だがそれ以外のすべてが首輪を外したベリーと同じ姿だ。
 髪の色、瞳の色、背丈、全部同じ。

「私と、同じ見た目」
「キュウビに気づかれる」
 俺はベリーの口を押えた。

 キュウビがこちらを振り向き、逃げるように走り去った。
「逃げた!」

 しばらくすると大量のきつねの魔物が集まって来る。
「これじゃ、キュウビは見つかるとすぐに逃げおる。そしてきつねの魔物をけしかけてくる」
「今はきつねを倒す!」



 戦闘が終わるとキュウビには逃げられていた。
 キュウビ、厄介だな。
 ひたすらきつねの魔物を生み出して本体は逃げ続ける、か。
 これは討伐しにくい。

「やはり、地道にきつねを狩っていくしかないのかのう?骨が折れそうじゃ」
「そうだな。10日くらいかかると思う」
「ウイン、10日で討伐できると言ったかの?」

「討伐できるかどうかは分からないが、取り巻きのきつねを減らすだけなら行けると思う」
「無理じゃろ」
「行けると思うわ」

「俺のスキルは回復力が常時アップするんだ。連戦が可能だ。きつねの経験値は結構高い。レベルを上げられるかもな」
「俺とベリーは前に出て戦って来る」
「うむ、そういう事ならお願いしようかの」

 

 山の奥に走っていくウインとベリーをタケルは見送る。
「キュウビを前にしてレベル上げか。恐ろしいまでの強さじゃ」



 俺とベリーは走ってみんなから離れる。
「ベリー、大丈夫か?」
「大丈夫、でもキュウビの姿は私と同じだったわ」
 大丈夫じゃないか。
 ベリーの大丈夫は大丈夫じゃない時の言い方だ。

 確かにベリーと姿が似ていた。
 いや、双子のように似ている。
 ヤマトの本土に魔道カメラの現像施設が無くてよかった。
 あの施設はそれなりに金がかかる。
 デイブックやアーサー王国のようにキュウビの写真が出回っていたらベリーはひどい目に会っていただろう。

「なあ、キュウビを見て思ったんだけど、あれは名前持ちの魔物と質が違うように思う」

「どう違うの?」
「うまくは言えないけど、悪意、いや、殺意だな。殺意を感じない。ただ怖がって逃げているだけに見えた」

「でも、きつねが襲い掛かってきたわ」
「あれは、怖がった子犬が噛みついているようなもんだ。そう感じる」

「私に気を使っていない?」
「違う」
「私が怖くないの?」
「怖くない」
 ベリーは最近色々あった。
 精神が不安定になっている。

 ベリーには腹を割って話した方が良いだろう。
「俺はベリーの事が前から可愛いと思っていた」
「え?な、何の話?」
「昔勇者パーティーで一緒に組むことになって初めて会った時からだ。俺はベリーの事が、好きまで考えていたか微妙だけど、でも、いつもベリーを目で追っていた」

「今ならはっきり言える。俺はベリーが好きだ。ベリー。俺の目を見てくれ。俺が嘘を言っているか目を見ればわかるだろう」

 俺はベリーにどんどん近づいていく。
 ベリーは俺の目を覆って顔を見られないようにする。

 そこにタケルが現れる。
「おぬしら、何をやってるんじゃ」

「タケルか、すまない。今大事な事を言っているんだ」
「うむ」
 そう言ってタケルは見学し続ける。

「見ないで!恥ずかしいわ!」
「いや、思いを伝える。勇者パーティーを抜けてまた再開した時、ベリーが更に美人になっていて驚いた」

 俺は続ける。
 ベリーがどんなに恥ずかしがっても構わない。
 思いを伝える。
 口で言わなければ伝わらない事もある。
 だから何度でも言う。

 ベリーの不安を取り除く!
 決して楽しいからやっているわけではない!
 ベリーの不安を取り除きたいんだ。

「ベリーと初めて添い寝した時俺は恥ずかしくて何もできなかった」
「も、もうわかったわ。もう平気、平気だから!」

「ふぉふぉふぉ」 
 タケルがにやにやと笑いだす。

「ベリーの大丈夫は大丈夫じゃない。俺にはわかる!無理しなくていいんだ!話を続ける。でも最近勇気をもってベリーと一緒にいられるようになったんだ!ヤマトの旅館に初めて泊って一緒に露天風呂に入った時も」
「もうやめて!!」
 ベリーは俺の口を押えようとするが、ベリーの手を避ける。

「もうやめて!恥ずかしいから!もうやめてよお!」
「ウイン、もうやめておけ。こんなに真っ赤になった者を初めて見たわい」

「だが、ベリーの大丈夫は大丈夫じゃ」
「もう大丈夫!大丈夫だから!だからやめて!」

「ウイン、恥じらうおなごをそこまでいじめるのはやめてくのじゃ」
「ウインは意地悪よ!」

「そこまでじゃないと思うぞ」
「えええ!!」
 ベリーが信じられないという顔をして驚く。

「ウインは筋金入りのドSじゃの」

 その後ベリーの機嫌が違う意味で悪くなったが、不安な顔は見せなくなった。
 俺の事をドSと言うけど、俺は違うと思う。






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