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No.07

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「あー明里。弁慶を見限るなら、今だぞ?」



弁慶のそんな姿を見て九郎さんはそう言ってくる。



弁慶が、ムッとした顔をさせる。



「弁慶を見限ったりしませんよ!」
「もし、見限っても、俺は離さないけどね」
「弁慶……」



九郎さんはあきれながら聞いていた。



そして明け方。
亜稀殿がようやく戻ってきた。



私たちは亜稀殿に案内され、奥州へと足を入れる。



「こちらをお使い下さい」



そして。
1つの家を与えられた。
家というか屋敷?みたいな家だった。


「明里。眠いでしょ?」
「でも……」
「俺や九郎は大丈夫ですよ」
「そうだ。俺たちは大丈夫だから休んでろ」



私は2人の好意に甘え休むことにした。
九郎さんはすぐ部屋から出ていき、安心したからか私はそのまま眠りについた。




「お休み、明里」



弁慶のそんな声が聞こえた。



「おはよう」



目を覚ますと弁慶がいた。



「おはようございます」



えーとここどこ?
確か亜稀殿に1つの屋敷を与えられて……。



「寝ぼけてる?」



弁慶は私にそう言いながらからかっていた。



「あ、奥州に着いたんだった。あれ、九郎さんとかは?」
「九郎は御館(みたち)に挨拶しに行ってますよ」
「御館?」
「あぁ。秀衡殿のことですよ」
「私も挨拶しに行った方がいいですか?」
「九郎が行ったからいいですよ!」



そして。
弁慶と寛いでいるといきなり亜稀殿がやってきた。



「弁慶殿ー!」
「わっ!あ、亜稀殿!?」
「女。気安く弁慶殿に近づくな!」
「え……」



何、この人。
何で私がこんなに言われなきゃいけないわけ!?


「亜稀。キミは言い度胸してますね?」
「べ、弁慶殿?」
「この子は俺の大切な女性ですよ」
「っ……」
「ですからこの子を傷つけたら許しませんよ?」



亜稀殿は青い顔して仕事へ戻っていく。
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