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第7話「本腰のラーニャ2」
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もう一時間ほど振ったところで、自然と手から木刀が離れた。
「こら! 誰が離せといった」
「い、いえ……」
握力が入らない。
手が握れない。
ラーニャは木刀を拾おうとしたが、なかなかうまくいかない。
「今日は終いだな」
男が去っていこうとする。
「ま、待って! ください!」
男が振り向くと、ラーニャは木刀を握っていた。
「まだやれます」
「ふむ……」
男は再び定位置に戻る。庭には入ってこない。玄関先、庭の隅でこちらを見て、たまに怒号を発するだけだが、彼がいなければ、ラーニャは自らの限界を試そうとしなかった。
「剣は、小指の方に力を入れて持て」
男はボソッと、そういった。
「……えっと」
「わかったら振れ」
「はいっ」
一回。また一回と、サンドバッグに木刀を叩きつける。
口の中が渇いた。唇が乾いた。
汗だか涙だかわからないものが頬を伝い。
激痛を伴って、腕を振る。振り上げる。
「二時間経った。あと十回、全力で木刀を振れ」
男が、タイムアップと、最後の試練を知らせる。
「あああッ」
十回。
腹の底から声を出し、最後の十回を全力で行う。
「よし、合格」
ラーニャの地獄の二時間は終わりを告げ、地面に座り込む。
「儂はジャークアパートの一号室に住んどる。またいつかここに来るから、それが待てぬようだったら儂の自宅まで来い」
そして、と、男。
「儂の名前はジャークじゃ。ジャークアパートの大家じゃよ」
「こら! 誰が離せといった」
「い、いえ……」
握力が入らない。
手が握れない。
ラーニャは木刀を拾おうとしたが、なかなかうまくいかない。
「今日は終いだな」
男が去っていこうとする。
「ま、待って! ください!」
男が振り向くと、ラーニャは木刀を握っていた。
「まだやれます」
「ふむ……」
男は再び定位置に戻る。庭には入ってこない。玄関先、庭の隅でこちらを見て、たまに怒号を発するだけだが、彼がいなければ、ラーニャは自らの限界を試そうとしなかった。
「剣は、小指の方に力を入れて持て」
男はボソッと、そういった。
「……えっと」
「わかったら振れ」
「はいっ」
一回。また一回と、サンドバッグに木刀を叩きつける。
口の中が渇いた。唇が乾いた。
汗だか涙だかわからないものが頬を伝い。
激痛を伴って、腕を振る。振り上げる。
「二時間経った。あと十回、全力で木刀を振れ」
男が、タイムアップと、最後の試練を知らせる。
「あああッ」
十回。
腹の底から声を出し、最後の十回を全力で行う。
「よし、合格」
ラーニャの地獄の二時間は終わりを告げ、地面に座り込む。
「儂はジャークアパートの一号室に住んどる。またいつかここに来るから、それが待てぬようだったら儂の自宅まで来い」
そして、と、男。
「儂の名前はジャークじゃ。ジャークアパートの大家じゃよ」
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