妹、異世界にて最強

海鷂魚

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四十一話

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「お前ら。先に言っておくが、俺はお前らと和解する気は無い。俺の国、俺の大切な奴ら全員殺したんだからな。だが、お前ら——とくにそこの男と緑髪の女が疑問に思ってることを説明してやるだけだ。
「おっと、他の三名は俺を殺したそうだが、殺したかったらそうしろ。まあ、この戦争の闇は隠されたまま、本当の闇に葬られることになるがな。だが、俺も殺されるだけで終わりになるつもりはねえぜ? 全力で戦ってやるが、今は答え合わせパートだっつってんだよ。四十話も続けばそろそろ読者諸氏もこの世界がどうなってんのか気になって気になって仕方がねえ頃だろう。
「え? 何を言ってんのかわからないって? わからなくていいぜ。別に。
「……よし、俺の話を聞く気になったみてえだな。話を始めるか。
「まず、アルハとシュバルハの関係からだ。このノロジーのほとんどは、シュバルハ種という人類が闊歩していた。アルハ種の人間は希少でな。それもなぜだが説明してやる。
「ああ、お前らは俺らのことを魔物だの何だのというから、俺たちも俺たちで魔物を名乗ってるだけだ。正確にはアルハ種という種類の人間なんだぜ、俺ら。だからこうしてお前らと言葉もかわせるし、お前らが殺してきた魔物は全員、二足歩行ができたはずだ。なにせ人間なんだからな。
「そして、そのアルハ種が希少な理由。それは千年の時をかけて、シュバルハ種とアルハ種の人間同士で戦争をし続け、シュバルハ種の人間がアルハ種を滅ぼしかけてたのが理由だ。ひでえ話だよな。当然、政としては、シュバルハ側はシュバルハ側で、アルハを悪者みたいに扱った教育をされてるもんだから、そんなこと知らねえだろうけれどな。
「あ? 別に俺の言葉に猜疑心を覚えるなら信じなくていいぜ。あくまでアルハ視点の話だからな。
「ってなわけで、アルハは滅ぼされかけて、国も横断するのに一週間かからねえくらいちっこくなったし、人口もめちゃくちゃ減ったわけよ。
「しかし、千年も経てば、種族が違えど仲良くできるもんだな。千年のうちに少しずつ和平交渉が進んで、ついに六十年前、戦争は和解とした終結を迎えた。
「アルハはアルハで滅ぼされかけた恨みはあるけど、もう戦争では勝てないことはわかってたしな。アルハ種の人間は筋力こそあれ、魔力と知力はゴミカスみてえなもんだったから、魔法と知的な戦略を組み合わせて戦ってくるシュバルハには勝てっこねえって話さ。あ、俺は魔王だから魔力半端ねえけどな。アルハ種全体で見たら、魔力なんてちんけなもんよ。
「てなわけで、戦争は終わった。
「はずだった。
「一ヶ月前、アルハのある村が滅ぼされた。明らかに魔法を使った形跡が残ってるし、犯人はシュバルハで間違いねえって結論が出たわけだが、シュバルハはそれを認めなかった。知らねえとしらを切ってたわけだ。だが不可解な点は、二個目の村が襲撃されて一晩で滅ぼされた時だ。
「その村は王都の隣にあってな。結構でかい村だった。だからアルハの奥地にある。
「しかし、1回目の時もそうだったんだが、襲撃された時の目撃情報が一個も出ねえんだ。一個目の村は小さいし、めっちゃ強い魔法使いが一人で滅ぼしたんだろうと踏んでいたが、二個目の村はでかい上にアルハの奥地にある。軍隊を使わないと一晩で滅ぼすなんて無理だし、軍隊を使えば目撃情報が出たはずだ。だが出ない。
「そんなこんなで戦争が始まっ——
「てない。
「戦争はしなかった。証拠がねえのにシュバルハに戦争を仕掛けてもしょうがねえだろ。
「村襲撃事件は未解決のまま、いくつもの村が滅ぼされた。もうみんな王都に逃げ込んで、怯えてた。
「そこでニュースが一つ。
「アルハとシュバルハの王都を結ぶ道が、しかもかなりでかい大通りが、あったんだよ。
「すげえわかりやすいところに、謎の道があった。舗装された道だ。しかも敵国(仮)の王都と王都をつなぐ道だ。お前らが通ってきたあの道だよ。
「そんで、そんな道があったら気づかねえわけねえだろ? しかしどの歴史書にもこの道に関する記述はない。事実、千年のあいだ、アルハはこのめちゃくちゃわかりやすくてでかい道に気づかなかったんだ。
「これもシュバルハ側の魔法だと思った。そして俺は軍隊を結成し、その道にバリケードを作りまくって待機してた。何かくるに違いねえって。
「あ? シュバルハの村が襲われてただ? そんなの知らねえよ。命令に出してねえ。ただ、ある魔物に、シュバルハにお使いに行かせたんだ。
「今から厳重体制でアルハにバリケード作るんで、シュバルハの人たちは来ないでくださいね~って、魔物を王都に派遣させようとした。
「あ? なにそっちで話が繋がったみたいな顔してんだよ。あ! もしかしてお使いに行かせた魔物を殺したのお前らだろ。シュバルハに入ったあたりで通信が途切れたから何かあったのかと思ったらお前らが犯人だったのか!
「あ? 正確には僕たちじゃない? まあいいよ、そんなこと。そんでお使いに行かせた魔物すら死ぬもんだからやべえことになってきたなと思ったら、お前らが三日で七十二個のバリケードを突破して、殺害された魔物の数は二百六十五人だ。お前ら鬼かよ。魔物より悪魔的だわ! あー腹立ってきた。そんなこんなで王都付近のバリケードが突破されて、今夜あたり襲撃されると思ったら、イマココだよ! 襲撃っつうか爆撃? 瓦礫も残らねえほどの衝撃波で何もかもを壊しやがった。
「さっき緑髪の女がこの戦争はどうなってるって言ってたよな? 正確には、戦争なんて起こってねえ! てめえらの一方的な殺戮でこっちがもう滅亡に瀕してるんだよ!
「それがこの惨状の、アルハ視点だ!」
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