小さな狼

KS

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思い

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黒を基調としたシックな雰囲気のお店に、真っ赤なドレスを着た女の人

バー…って言うのかな?

来た事無い所に僕は一人連れて来られた

カウンターに座らされ、お茶を出してもらい料理を出してくれた

白いご飯に鳥肉の缶詰、鳥肉がすごく柔らかくて美味しかった

『それで?何に落ち込んでたの?』

『………ふられました…』

『………それから?』

『それだけです………』

今さら誰かに言ったって変わりっこないのに…

何故だかお姉さんには話してしまった

『なぁんだ、ふられただけなんだ』

『まぁ…』

腰に手を当てながら下を向く

『ふふ、若いって良いわね』

ニコって笑ってお酒を飲む姿がすごく色っぽい

一口飲んで片手に持ったまま手を組んだ

『坊や名前は?』

『夕凪です…』

『下の名前は?』

『秀吉の秀に、狼でヒロです』

『かっこいい名前じゃない』

ニコって笑いながらグラスを置いた

『ヒロ君は、その子の事が好き?』

『大好きです!背が高くて、料理も美味しくて、綺麗で………』

僕は桜木さんの好きな所やまだまだ少ない思い出をいっぱい話した

お姉さんも真面目に聞いてくれた

『…でも………ふられたんです…』

『そっかぁ…』

俯いてる僕の隣にお姉さんが座った

『良い?ヒロくん』

『なんですか…?』

『ヒロ君の愛はすごいわかったわ、でもね?自分の思いって伝わらない物でしかないの。でもね?その愛が恋愛に変わった時、あなたの思いが通じたって思いなさい。あなたがそんなに思ってるんだもの。きっとその心は通じているわ』

『お姉さん…』

『たぶん、今もいっぱい探し回ってるんじゃないかな。その子は』

グラスに入ってるお酒を飲み干してニコッと笑ってみせる

『まぁ若いんだし次があるよ、次がね』

『………はいっ!』

何故だか出なかった涙が溢れ出て、手の甲に落ちる

こんな気持ちになったのは久しぶりだった

お姉さんが頭を撫でてくれた時、桜木さんに撫でられてるのと同じ感じがした

『さぁ男の子でしょ?シャッきっとしなさい』

背中を叩くその行為に、すごく勇気をもらえた



 
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