Δ 爪痕を残して

黒野すごろく

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奇妙な首輪とエルフ

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単調な攻撃ではあるものの、速度が異様に早い。リヒトだから避けられているのだろう
(鎖…!……あの眼帯のエルフが出してるのか…!でも…もう1人は……)
「おっと…逃げんのか?」
エルフ片目のの声が聞こえた。後ろ向きに抱えられているので対峙している状況が分からない。
察して分かる事といえば2対1で挟み撃ちになっている。そして俺は彼に守られているだけ
「……リヒト…俺を、離して…」
「…!出来ない……」
彼の抱える腕が、強くなった。
「…離すんだ」
不利になっている事くらい俺にも分かる。俺の存在が、重荷となっている事も
「早く!」
リヒトは、迷ってくれたんだろう。それでも俺を、離してくれた。
それと同時に片目のエルフに対して攻撃を繰り出す音が後ろからする。愉快なエルフの声と不快な武器の弾く音が響き始めた。

俺はその場で立ち上がり、護身用に渡された短剣を鞘から引き抜いた。
眼帯のエルフがこちらへゆっくり歩いて来ていた。完全に、舐められている。
「……警戒するな、と言っても無理だろうけど。あの首輪を持って行ってくれればいいだけなのに」
「絶対に、嫌だ……呪われているっていう、証明が出来てない」
ふうん、と呆れるような視線を向けられた。鎖が砂と擦れるような音に気付いたが遅かった。俺を中心に、四方から手首足首を縛るように鎖が絡まった。
「選択肢をやろう、1つ目は首輪を持ち帰る。2つ目はお前もあの亜人も死ぬ。さて、どちらがいいかな」
俺は口をつぐみ、ぎゅっと短剣を握った。あくまで反抗する姿勢を取る様子を見て、さらに鎖が締め付けてきた。
「あ、ぐぅうっ…!」
血が通わなくなりつつあった。体中がうるさいくらいに脈打ち、はっきりと俺に伝わってくる。
「首輪を取ればこんな痛い思いしないぞ」
「…だから、…呪われてるかどうかっ……分からないじゃん…判明したら、考えるよ…!」
やはり異様なくらいに首輪を持って行かせる事に執着しているようだった。検索サーチした時に詳しく知れたら良かったのだが
もしかしたらリヒトはこの首輪がどういう物なのか勘づいていたのかもしれない
「仕方ない、それなら力づくでお前の首にでも括り付けてやろう」


攻撃は、しっかり見切れている。この片目のエルフの動きは十分に早い、だがそれだけではダメだ
繰り出す拳を受け流し、直後に出てきた足を避けてから鎌で上空を薙ぎ払った。
「……これ以上、お前の髪を切るのは飽きた…」
「っ…髪……!?」
無駄な動作なんてする訳ない、俺が無闇に鎌を振るっていたとでも思ったのだろうか
慌てるようにして片目のエルフは髪を指で梳かすと、指に絡まりハラハラと散った。
「おまッ…!俺の…!!」
「…ボスを愚弄した事、お前の首で我慢してもいい……」
ボスだと…?とエルフは青筋を浮かべて答えた。ボスを馬鹿にした事すら忘れる奴に、情けなんて不要だろう
「ハッ!俺に夢中になってくれるのは嬉しいけどよ、あの人間はヤバそうだぞ?武器持ってんのに扱い方も分かんねーのか」
「……その手には乗らない」
「そうだ、ついでにイイ事教えといてやる。あの人間に付いてる加護は働いてねーぞ」
鎌を持つ手に、汗を感じた。仮にそれが本当だとして、加護が働いていない事に今まで気付かなかったなんて
そんな訳はない、それならすぐ気付く。俺を油断させたいなら、もっとまともな嘘をつくべきだ
(…ボス……!)


鎖で無理矢理に枯れ木の元まで引きずられていた。精一杯の抵抗はしたが、体は限界に近く手足の感覚が無くなってきていた。
眼帯のエルフは引っ掛かっていた首輪を取ってこちらに近付いてきた。そして目の前でしゃがみ込み、俺の首を固定するように支えてきた。
「っ…やめ、……!」
拒み体を捻るが、鎖に阻まれて上手く動けない。感覚のない手足が頼りない、俺が少しでも戦えていたらどんなに良かったか

『ノヴァに祝福を』

確かにそう呟いてから首輪を、強引に付けられた。短剣を握っていなかった手でなんとか取ろうと試みるが、無駄だと告げられる。
「例外はあるが…それはエルフにしか解けない、あの亜人でも無駄だ。でも心配することはない」
「…なんでっ、こんな!大体、これ…対エルフの罠って…!」
「そんなのデタラメに決まっているだろう。ああでも、ある意味そうとも言えるかもしれないな」
1人納得しているエルフをよそに、俺は震える手で首輪を外そうと試みる。
付けられたのだから外せる手段だってあるはず、それなら外せない訳ない
「さて、まずはお前を――――」
「え……」
影が生まれ顎に両手を添えられた。少し荒い息遣いで、相手の顔が迫って来た。
避けないと、なんで、こんなことに。シャリ、と鎖が鳴って動ける範囲の限界を俺に知らせた。
心臓が、警鐘のように響く。そこから逃げろと。何しようと、して。俺の、唇に。
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