最後の仕事は見て行動を起こす事。

さんまぐ

文字の大きさ
6 / 12

第6話 家族と領地戦03/05。

しおりを挟む
部隊長が来たのは夜になってからだった。
それも、噂で敵側が全滅したと聞いて、コソコソと見に来て戦場の真ん中でテントを張って、宴会をするサンスリーとドルテを見て、目を丸くして「どうなっている!?」なんて聞いてきた。

「どうもない。あのくらい何の問題もない。何日抑え込めば勝ちになる?」
「あ…後3日だ」

「なら夜にだけ見に来い。水と食料を持ってきてくれ」
「兵舎に戻らないのか?」
「居心地が悪い。別にドルテが働いてくれていれば2人でいられる」

部隊長は「わかった」とだけ言うと、何も言わずに帰って行く。

サンスリーはドルテに「帰りたかったか?」と聞くと、「やだよ。これからもゲイザーと居る」と言われて、サンスリーは「これからも…か」と笑っていた。

「ずっと一緒にいられたらいいね」
「ずっと一緒だよサンスリー」
「これからはずっと一緒」

耳に残る少女の声。
サンスリーは頭痛にうめくと、ドルテが「平気?疲れたよね?」と声をかける。

「いや、問題ない」
「あるって!身体拭いてあげるから寝ようよ!」

結局サンスリーは1人でできると言ったのに、ドルテは甲斐甲斐しく世話を焼いてしまうし、寝袋で同衾まで求められてしまっていた。

2日目以降も問題はない。
レンズと呼ばれた光の精度も上がり、だいぶ姿が見えなくなってきていた。

問題は夜だった。

ドルテはサンスリーの話を聞きたがり、サンスリーに抱いて欲しいと願う。

「何故そうなる?」
「私は初めてもその後も、全部自分の意思なんてなかったの。初めてゲイザーに抱かれたいって思えたんだよ。お願い。抱いてよ。使われるんじゃなくて、抱き合いたいよ」

そう言われても困る。
気持ちはわからなくもない。
だが、サンスリーが抱く理由にはならない。

その時、ドルテが「お願い。私の秘密を話すから。私の残り少ない命を無駄にさせないで?」と言った。

「秘密?」

見た感じ病気はない。
発作や何かに苦しむ事もない。
食事も摂れている。

本人の思い過ごしの類い、よくある手口だとしたら、戦闘奴隷にした奴が、洗脳魔法で「命が残り少ないから、生きた結果を残せ」と言う事くらいだろう。

洗脳魔法なら、この場での解除は無理でも、緩和ならできる。
解除はかけた奴を殺せばいい。

サンスリーが安心させようとした時、「私もあの光の魔法が使えるの。ゲイザーと一緒。ゲイザーも、もう死ぬんだよね?だから戦場に来たんだよね?」とドルテは言った。

最悪だった。
もうドルテの死は確定している。
今知りたいのは、何回使ったかと、いつ覚えたかだった。

「スレイブ…。いつ覚えて何回使った?」
「うん。そうだよ。教えさせられたのは、領主戦が始まる時に、使ったのは一度だけ」

今から10年…。一度で1年。
あと9年の命。

それでも最長で、この先使わない保証はない。

「2度と使うな。そうすれば9年は生きられる」
「うん。ゲイザーといられるなら守るよ。ゲイザーはあと何年?」

サンスリーは言葉に詰まる。
言いたくなかった。
だが言わねばならなかった。

「俺のはスレイブではない。ファミリアだ」
「ファミリア?」

サンスリーはドルテに何と言って説明するかを悩んでいた。

そもそもファミリアは、高位魔法に位置していて、使えるようになる事も難しく、ファミリアを得る条件も厳しい。

スレイブは下位互換、簡易版に位置していて、修得も何も簡単だが命を浪費してしまう。
覚えた段階で寿命の浪費が始まり、最長でも10年。
そして一度スレイブを使うだけで1年の浪費がある。

恐らくドルテは試運転で使わされた。
生殺与奪すら権力者が決める世界。
もう懲り懲りだった。

「ああ、ファミリアはスレイブの上位版、使用者の命は縮まらない」
「……なんで?なんなの?」

真っ青な顔で聞き返すドルテ。
サンスリーは最悪の気分だった。

言い訳のように、「その代わり、厳しい条件は付く」と言って、青くなったドルテを抱きしめる。

「条件って何?」
「心通わせた者を殺して、ファミリアに作り変える」

「じゃあ…ゲイザーは、心を通わせた人を殺したの?」
「ああ、それが仕事だったからな」

「…嫌じゃなかったの?」
「嫌だったさ。だが、仕事で…やるしか無かった」

「最初は?」
「子供の頃、14で殺した」

「その人は家族?」
「家族同然の友だ」

その時、サンスリーの中には、幼いメイドの姿があって「ずっと一緒だよサンスリー」と微笑んでいた。

「泣いていい?」
「泣けばいい」

暫くサンスリーの胸で泣いたドルテは、「やっぱり使われる穴じゃなくて、抱いてもらって死にたいよ。ゲイザー、抱いて?」と言ってサンスリーを見つめた。

断ろうと思えば出来た。
だがサンスリーは受け入れてドルテを抱いた。
散々仕込まれた性知識と性技術を、全て使ってドルテを抱くと、ドルテは泣いて喜び、「使われる穴じゃない。抱き合うって凄いよゲイザー。痛くなくて、気持ち悪くなくて、胸の奥が熱くなるよ」と言うと、何遍もサンスリーを求めて、サンスリーはそれに応えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...