最後の仕事は見て行動を起こす事。

さんまぐ

文字の大きさ
11 / 12

第11話 怨みとダイヤモンド03/04。

しおりを挟む
翌日、やってきた兵士は言われたものをキチンと用意してきた。

サンスリーはそれを見て、「お前は荷物持ちをしろ。シスター、あなたは、この男が呼びにくるまで、この陣地で鉱山に向けて祈りを捧げてくれ。意味も分からず突然鉱山の中で死んでしまい、出口もわからない哀れな霊達を天の国に導いて欲しい」と指示を出す。

シスターは「はい。お任せください」と言い、兵士は「何!?荷物持ち!?私もか!?」と慌てるが、サンスリーは「早くしろ、奴らの段階が上がると、この装備では手に負えなくなる。王都が動くぞ?」と言いながら鉱山へと向かっていく。

他の冒険者や賞金稼ぎ達には「数は減らす。だが奴らの狙いは俺達とシスターになる。瘴気が消えるまでシスターを守れ。そう待たせはしない。時間がかかったとしたら、現場監督が嘘をついていた場合だ」と言いながら向かってきた雌オークを一刀両断すると、兵士に「いくぞ」と言った。

「荷物持ちで両手が塞がっているから剣は無理だな。守ってやる」と言いながら、サンスリーは剣を振るって魔法を放つ。
サンスリーの規格外に、兵士は「圧倒的じゃないかゲイザー」と感嘆の声をあげる。

初めこそ泣き言を言っていた兵士だったが、根が真面目なのだろう。すぐに協力的に「ゲイザー!右だ!」と言って、あまり意味はないが役に立とうとする。

その姿には好感を覚えた。
鉱山に突入すると聞こえてくる赤ん坊の声に兵士は泣きそうな顔をして、「すまない」と呟く。

地図も間違えておらず、現場監督も嘘をついていない。
枯れてダイヤモンドが採れなくなった方に向かうと、瘴気は更に濃くなり、赤ん坊の泣き声だけではなく、子供達の悲鳴や泣き声まで聞こえてきて、兵士は頭がおかしくなりそうだった。

念入りに奥にされたせいで突入は厄介だったが、奥に着くと血まみれで木っ端微塵になった木箱の残骸の周りに赤紫色の塊があった。

「怨み玉だ。俺なら倒す事も出来るが、下手に倒すと、今回の場合は雌の魔物達が暴走するし、魔物達の死に感化されると怨み玉が強化されてしまう。俺が時間稼ぎをするから、お前はミルク粥を皿に盛り付けて置くことを始めにやれ。その後で持ってきた聖木に火をつけることをすぐにやるんだ。その後は俺の合図で撤退だ」

サンスリーは前に出ると、「そこで泣いていても救われん。先に少し遊ぼう」と声をかけて、体術で怨み玉の相手をする。

「ドルテ、出てくるな。キチンと状況を見極めろ」

サンスリーは先に警告をすると、怨み玉の攻撃を交わしてカウンターで蹴りを放つ。

「ギャァァァッ!」
「痛いぃィィッ!」

怨み玉の絶叫に、サンスリーは「痛かったか、済まなかったな。次は気をつけよう」と言うと、体術による時間稼ぎを再開した。

兵士がミルク粥を設置すると、サンスリーは坑道内を光魔法で眩しくして、兵士と自身を一度後退させる。

怨み玉は視力が戻るとサンスリーを探したが、見つからない代わりにミルク粥を見つける。

全身で皿に飛び込んでミルク粥を食べる姿を見てサンスリーは「よし、腹は膨れたな。人間や魔物なんかより美味いだろ?今外に連れていく」と言いながら前に出て、再度怨み玉の相手をして時間稼ぎを始めると、兵士はまた奥に行って持ってきた聖木に火を放つ。

「ゲイザー!」
「よし、俺が囮になる。お前はそのまま怨み玉が後退しないように、その場に聖水を撒いて清めてから着いてこい」

サンスリーは風魔法で聖木から出る煙を怨み玉にぶつけて、そのまま出口の方に煙を送る。

怨み玉はミルク粥でやや穏やかになっていて、鳴き声ではなく人の言葉を話していて、「ついて行こう」、「怖いよ」、「でも帰りたい」、「行ってみて、ダメなら戻ってきて、お母さんとお父さんが迎えにきてくれるのを待とう」と言っている。

この中には赤ん坊も居るが、赤ん坊は怨み玉になり、他の存在と混ざる事で、知能を得ていて会話が可能になっている。

そう、ダメなら戻る。
それをさせない為にも聖水で清めてしまって、この場所との繋がりを断つ必要があった。

今、怨み玉には聖木の煙が出口への通り道に見えていた。
なぜか怖くない道の上を子供達が手を繋いで歩いている。

サンスリーは「成功だ!お前は先に出て魔物の討伐に参加をしろ!シスターを入り口まで呼ぶんだ!奴らは弱体化している筈だ!無理なら声を張れ!出口の目前で参加する!」と指示を出して兵士を先に戻させる。

サンスリーの言葉通り、鉱山の出口には魔物が大挙していたが、雇った連中が機能していて、既に陣地を出ていたシスターが祈りを捧げてくれていた。

サンスリーの力を借りずに無事に魔物を排除すると、兵士が「ゲイザー!こっちは終わった!」とサンスリーを呼ぶ。

「やるじゃないか」と言ったサンスリーが怨み玉と共に外に出ると、日差しとシスターの祈りのおかげで怨み玉は成仏し、鉱山は瘴気を放たなくなり、サンスリーの任務は終わった。

精算は雇われた順に行われていく。
サンスリーが来て、危険な事もせずに、そこそこの報酬が貰えた冒険者や傭兵達は「また頼むぜ」なんて兵士に言って街に帰っていく。

最後はシスターとサンスリーで、サンスリーは少しだけお節介をしたくなっていた。

「名前は?」と聞くと兵士はリャントーと名乗った。

「リャントー、家族は?」
「妻と子供がいる」

だからこそ、怨み玉の出自に吐いて、怨み玉をなんとかしようと奮起していた。

サンスリーはなんとなく納得をすると、「そうか、報告を終えたら、誰にも何も言わずに、暇を貰い旅に出ろ。理由は長時間瘴気を浴びた事と、怨み玉の声を長時間聞いた事で、俺とシスターから精神汚染されていると言われたと言えば、そこそこの知識のある奴なら理解される。騎士のお前はそのままだと、魔物化した時に反転騎士になる」と説明をして、シスターにも「あなたも精神汚染の兆候が見えたと俺に言われた事にして、王都の大聖堂に巡礼してくるといい。コイツから路銀は貰えるだろう?」と説明をして、報酬を受け取ると旅立ってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...