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第一夜
七
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扉を開けると、少し変わった部屋に出た。ドアを入ってすぐ、木製のついたてが置かれている。ついたての奥は暗くて見えない。
そして、部屋の一部が鉄の壁と柵で仕切られていた。柵には扉が設けられていて、その奥にもう一つの木の扉が見える。
柵の内鍵を開けようとしてみたのに、固くて手応えが返ってくるだけで開かなかった。鍵がかかっている。
柵の中には石造りの机も見える。石の机は二つ机が向かい合わせにくっつけた感じで、鉄の壁を突き抜けて置かれていた。柵のこちら側とあちら側で共有する形なのだろう。
牢屋じゃないみたいだけど……なんの部屋?柵の向こうへ行くには、この内扉を通るしかないのかしら。ついたての奥から回れるようになってないかな……。
そっと、ついたての裏を覗く。中は暗い。入り口のランプの光はついたてに遮られ、奥まで届かない。思いきって踏み出そうとした時、ついたての奥からごそっと物音がした。
「!!」
続いて、ずずずっという何か重いものを引きずる音。
入り口に置いてあったランプを台からひったくると、闇に突きつけた。慌てすぎたのだろう。突き出した手がついたてにぶつかり、バランスを崩した。一緒にひっくり返る。私とついたての倒れる音に、投げ出されたランプが割れる音と重なった。煙のように土埃が舞い上がる。
「痛……」
起きあがろうとした私の目に、銀色の十字架が飛び込んできた。いけない、落っことしちゃーー。
「!?」
十字架のその向こうに見えたのはーー光を失った人間の目だ。後ろで割れたランプが、床に広がるオイルを糧に燃え上がっていく。青白い頰、紫の唇がてらてらと光る。息ができない。これ以上見たらダメ。そう思うのに、私の視線は憑かれたように上がっていく。のけぞる喉をねぶる、赤くてぐねぐねしたものを辿ってーー。
そこには『私』がいた。
全身赤黒いぼろを纏った『私』が、私の顔をした何かが、女性に覆い被さってその長い長い舌を喉に伸ばしている。舌は赤くぬめって、びくんびくんと脈打つ。声がでない。
瞬き一つできないで、ただ『私』を見つめていた。『私』の目がこちらを捉える。赤い口がニッと吊り上がった。突然、甲高い声で笑う。
いいえ、私が悲鳴を上げた?わからない。
私の記憶はそこでプツンと途切れた。
そして、部屋の一部が鉄の壁と柵で仕切られていた。柵には扉が設けられていて、その奥にもう一つの木の扉が見える。
柵の内鍵を開けようとしてみたのに、固くて手応えが返ってくるだけで開かなかった。鍵がかかっている。
柵の中には石造りの机も見える。石の机は二つ机が向かい合わせにくっつけた感じで、鉄の壁を突き抜けて置かれていた。柵のこちら側とあちら側で共有する形なのだろう。
牢屋じゃないみたいだけど……なんの部屋?柵の向こうへ行くには、この内扉を通るしかないのかしら。ついたての奥から回れるようになってないかな……。
そっと、ついたての裏を覗く。中は暗い。入り口のランプの光はついたてに遮られ、奥まで届かない。思いきって踏み出そうとした時、ついたての奥からごそっと物音がした。
「!!」
続いて、ずずずっという何か重いものを引きずる音。
入り口に置いてあったランプを台からひったくると、闇に突きつけた。慌てすぎたのだろう。突き出した手がついたてにぶつかり、バランスを崩した。一緒にひっくり返る。私とついたての倒れる音に、投げ出されたランプが割れる音と重なった。煙のように土埃が舞い上がる。
「痛……」
起きあがろうとした私の目に、銀色の十字架が飛び込んできた。いけない、落っことしちゃーー。
「!?」
十字架のその向こうに見えたのはーー光を失った人間の目だ。後ろで割れたランプが、床に広がるオイルを糧に燃え上がっていく。青白い頰、紫の唇がてらてらと光る。息ができない。これ以上見たらダメ。そう思うのに、私の視線は憑かれたように上がっていく。のけぞる喉をねぶる、赤くてぐねぐねしたものを辿ってーー。
そこには『私』がいた。
全身赤黒いぼろを纏った『私』が、私の顔をした何かが、女性に覆い被さってその長い長い舌を喉に伸ばしている。舌は赤くぬめって、びくんびくんと脈打つ。声がでない。
瞬き一つできないで、ただ『私』を見つめていた。『私』の目がこちらを捉える。赤い口がニッと吊り上がった。突然、甲高い声で笑う。
いいえ、私が悲鳴を上げた?わからない。
私の記憶はそこでプツンと途切れた。
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