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三章〜願いを叶えて〜

十三(※)

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 俺が再度手で目を隠そうとしたとき、渉が少し距離を置く音と座る音がした。何だろうとそちらを見れば、彼がすぐそばの壁にもたれてこちらに手招きしている。

「今度はなに?」
「こっちきて、俺の前に座って」

 嫌な予感しかしないのはもう知っていたので、渉に言われるまま余韻の残った状態ではいはいして近寄る。股の間に正面から座ろうとすれば、背中を向けるようにと要求される。従わない理由もないので、言われるまま背中を向けた。
 渉の胸に背中が密着すれば、その人肌にまたも身を固くする。背後から耳元にかかる息が、一度イったことによる感度良好のためか、ぞくぞくとした何かが背中をつたった。

「渉……?」
「股……開いて」

 要求しておきながら、彼が俺の股間に両手を添わせる。またも俺のオスをにぎって、今度は手で執拗にすってくる。一度射精したはずなのに、すぐに元気になってしまう。

 俺は見ていられなくてすぐ後ろにいる彼の首筋に、顔をうずめた。ねちねちと光輝き、渉の唾液と俺の精液が混じった体液が手を汚していく。

「それ……ちょ、やめ……」

 渉の愛撫はその性格からなのか分からないほど、ねちっこくて気持ちいい。すぐに魂をねこそぎもっていかれそうで、またも唇を噛んで耐えようとした。が、彼はそれを邪魔するように深いキスをする。

 口内を蹂躙されながら、その隙間からくぐもった嬌声がもれていく。しかも、それが全て二人の間で唯一繋がっている部分で行われているのだから興奮しないはずがない。

 股間に新たな刺激を与えられれば、俺はキスにしがみつきながら愛撫を受け入れる。渉もつられて喰らいつき、さきほどのフェラとは違うやや荒い手つきにさえ鼓動が荒くなる。

 背中から聞こえる渉の心音に、切羽詰まったような雰囲気が感じられた。愛撫が止まった時には、やはりという確信をもった。

 一度動きが止まってしまえば俺の尻にあたる渉のオスが限界だと、押し付けられる。そして、すぐ近くにある唇が言葉を紡いだ。

「鳴海さん……これから、気持ちよくないかも……」
「……あの、まさかとは思うけどさ……いれるの?」

 彼が上気した顔で、軽く頷いた。
 いれるんだ、男同士でも……それが第一の感想。いれるといってもどうやってと考えていれば、渉はそばに置かれていた救急箱を引き寄せ中を探り始める。何を出すのかと見ていれば、小さな入れ物に入った軟膏を手にした。

「それ使うのか?」
「うん。本当はそっち系の奴でもいいんだけど、さすがに今日は持ってないから。まぁ使わないよりは数倍マシ」
「あ、そう」

 なんでそんなこと知ってんだよとは、怖くて聞けるはずがない。次に何をするかの指示を待っていれば、四つん這いになってと言ってきた。さすがにその格好はどうだよと眉を寄せたが、それが一番楽だからと催促されしぶしぶ四つん這いになる。

 もうチンコを見られて舐められ触られた時点で、恥も外聞もないと思っていた。しかしやっぱり恥も外聞も充分残っていて、尻を向けたは良いがやはり恥ずかしくて渉をふりかえる。

「見るの?」
「もうチンコも見せたんだから、往生際が悪い。上半身はさげていいから、お尻上げて」

 軟膏の蓋をとって、白い中身を手に取りそれが俺の尻穴に充てられる。「ひぃ」と息をのんだつかの間、その指が穴にまで侵入してくる。痛さもあったが、それ以上にかつて味わったことのない異物に対する不快感と恐怖心が心を満たす。

 またも涙が頬をつたって、先ほどまで渉に刺激されて勃っていた股間もその感覚にへたってしまった。それでも止まることなくかきまわされる内部に、うめき声しか出せない。SEXって、もっと気持ち良くあんあんするもんだと思っていた……。

「鳴海さん、痛い?」
「……うん」
「ごめんね、もう少しだけ我慢して」

 もう少しって、あと何分!?
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