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【ミキちゃんちのインキュバス2!(第78話)】「セルフクロスオーバー第三弾!! ミキちゃん湯けむり紀行@ジョッカー温泉(前編)」
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5月のGWフィーバーに沸き立つ日本、N県某所の山道。
「砂岡様、この度は土井中温泉(どいなかおんせん)のご利用ありがとうございます」
戦前は多くの湯治客で賑わっていたものの、令和の現在ではあまりにも山奥にありすぎるが故によっぽどの温泉マニアでも利用に二の足を踏んでしまう事で有名(?)なN県山奥にある土井中温泉。
そんな温泉地で唯一営業している温泉宿、情嘉屋(じょうかや)のお迎えマイクロバスを運転するおじいさんは東京から予約でいらした10人の老若男女な団体客にあいさつする。
「いえいえ、私たちこそお世話になります」
ギンコさんとの週末デートの際におもちゃ屋オババから土井中温泉と情嘉屋の話を聞き、人の世を忍ぶ仮の姿たる派遣社員OL・砂岡蓮美名義でいつもお世話になっているみんなとのGW小旅行を計画したサキュバス・クイーンのイザベラ・インマは丁寧に返答する。
「世間はごーるでんういーくとは言え我が宿のような場所では常連の方々が多く、新規の団体様は久しぶりでして……至らぬ点がありましたら遠慮なくお申し付けください」
「常連の方がいらっしゃいますの?」
「はい、ご家族旅行でいらしている方が一組いらっしゃいます。みなさまと同じ東京からいらした方でして……よろしくお願いいたします」
こんな山奥の温泉宿に家族旅行だなんてどんな人達なんだろう。
そんな事を考えつつ車窓からの風景を楽しむ蓮美とみんなを乗せたマイクロバスは山道を進んでいく。
「おお、ここが昭和の温泉宿!!」
「すごいですね、 ミキさん!!」
「こんなとこ初めてだよすげえな、オヤジ!!」
残っている事が奇跡レベルな昭和の木造建築を前に大興奮の茶摘とアランに鳥魔。
「砂岡様、ようこそ情嘉屋へ。私は当宿の女将、情嘉(じょうか)でございます」
「いらっしゃいませ!!」
サナトリウム文学のヒロインや着物の似合う長逗留中の文豪が出てきても驚かないような隠れ家宿の前で10人を出迎えるのは黒ぶちメガネに着物姿の女将・情嘉と中居一同である。
「これより皆様をお部屋にご案内いたしますのでどうぞ……」
女将と中居一同は一行を宿屋内に案内する。
それからしばらくして……男湯。
「おお、これが日本の露天風呂……はじめてですよ!!」
「ひゃっほうう!! 温泉なんて久しぶりだぜ!!」
戦前から今に続く情嘉屋名物の露天風呂を前に大興奮の鳥魔魔界刑事&死神族の割木鎌雄。
「魔界刑事さん!! 死神さん!! まずは軽くお湯をかけてから入らないと」
すぐにでも飛び込みそうな2人を前に尻尾&耳を隠して長い銀髪をヘアゴムで縛ったギンコさんはアランと茶摘と共に手桶で体にお湯をかけつつ注意する。
「そんなに気にしなくてもいいですよ、皆さん!! どうぞお入りください!!」
後から来た賑やかな5人に声をかけるのは小学生ぐらいの男の子と共にゆっくりとお湯を楽しむ男性だ。
「あっ、はじめまして……もしかして運転手さんが仰っていた家族旅行のお客様ですか?」 「ははは、そうですね。私、会社員の九郎大志(くろうおおし)です。
この子は息子の九郎妙雄(くろうたえお)、小学5年生です……ほら、お兄さん達にあいさつしなさい」
「はじめまして……」
お風呂に浮かべていたアヒル隊長をそっと隠しつつ立ち上がった少年は5人に頭を下げる。
「なるほど、知り合いの知り合いの紹介でここを見つけて東京からいらしたんですか……いい隠れ家宿を共有できて私も嬉しいです!!」
温泉にゆったりとつかりつつ各々の自己紹介を終え、必然的にどこでこんな山奥の超マィナー温泉宿を見つけてわざわざ来たのかと言う話題になった2人と5人。
あとから来た5人が約1名を除いて異世界から来た魔界人と神様であるとはつゆにもおもわない九郎パパさんは納得の表情と共に領く。
「九郎さんはどこでここをお知りになったんですか?」
「ええ、私は10年ぐらいまえに職場の社員旅行でここに来まして……とある事件を経て今の妻と職場結婚したんです」
「おお……」
息子がいる時点で既婚者なのは分かっていたが、まさかののろけ話展開に思わず感嘆の声を上げる魔界人達。
「父さん、またその話? 僕もう聞き飽きたよ」
愛用のアヒル隊長が露天風呂をプカプカ泳ぐ様を鳥魔兄ちゃんと共に眺めていた妙雄少年はうんざりな表情を浮かべる。
「まあまあ、そう言わずにアヒル隊長共々聞いとけ。いつかお前に彼女が出来て同じような緊急事態に巻き込まれた時に役立つかもしれんぞ?」
九郎パパはワクワクテカテカな期待の眼を向ける魔界人達の前でゆっくりと話し始める。
一方、竹垣で隔てられた男湯隣の露天風呂。
「うふふ、大志さんったらまたあの話をしてるのね 」
女湯で娘と共に日々の疲れを癒していた会社員女性にして一男一女の母である九郎奈子(くろうなこ)は男湯から聞こえる会話に耳を傾けつつ微笑む。
「どうしましたの、奈子さん?」
そんな彼女に話しかけるのはインド人と日本人のハーフだと言う金髪褐色肌のピチピチ天然黒ギャルのキアラだ。
「ええ、先ほど話しました職場結婚した夫なんですけど……多分向こうでいつもの話をしているんだなって」
(あれが本物の大人のお姉さん……ママなんて比較にならないぐらいすごいなあ)
いつもなら『ママまた、その話? もうシオリ聞き飽きたわ!!』 と突っ込むマンネリ展開なのだが、キアラちゃんとミキお姉さまのご立派すぎる美デカメロン4玉がお湯に浮く様に眼が釘付けの九郎詩織(くろうしおり)、 小学3年生は突っ込むタイミングを完全に逃す。
「いまから10年前ぐらい、私がまだ20代だったころなんですけど……」
奈子ママは娘が黙っているのをいいことにここでかつてあったかもしれない不思議な夢物語を話しはじめる。
【後編につづく】
「砂岡様、この度は土井中温泉(どいなかおんせん)のご利用ありがとうございます」
戦前は多くの湯治客で賑わっていたものの、令和の現在ではあまりにも山奥にありすぎるが故によっぽどの温泉マニアでも利用に二の足を踏んでしまう事で有名(?)なN県山奥にある土井中温泉。
そんな温泉地で唯一営業している温泉宿、情嘉屋(じょうかや)のお迎えマイクロバスを運転するおじいさんは東京から予約でいらした10人の老若男女な団体客にあいさつする。
「いえいえ、私たちこそお世話になります」
ギンコさんとの週末デートの際におもちゃ屋オババから土井中温泉と情嘉屋の話を聞き、人の世を忍ぶ仮の姿たる派遣社員OL・砂岡蓮美名義でいつもお世話になっているみんなとのGW小旅行を計画したサキュバス・クイーンのイザベラ・インマは丁寧に返答する。
「世間はごーるでんういーくとは言え我が宿のような場所では常連の方々が多く、新規の団体様は久しぶりでして……至らぬ点がありましたら遠慮なくお申し付けください」
「常連の方がいらっしゃいますの?」
「はい、ご家族旅行でいらしている方が一組いらっしゃいます。みなさまと同じ東京からいらした方でして……よろしくお願いいたします」
こんな山奥の温泉宿に家族旅行だなんてどんな人達なんだろう。
そんな事を考えつつ車窓からの風景を楽しむ蓮美とみんなを乗せたマイクロバスは山道を進んでいく。
「おお、ここが昭和の温泉宿!!」
「すごいですね、 ミキさん!!」
「こんなとこ初めてだよすげえな、オヤジ!!」
残っている事が奇跡レベルな昭和の木造建築を前に大興奮の茶摘とアランに鳥魔。
「砂岡様、ようこそ情嘉屋へ。私は当宿の女将、情嘉(じょうか)でございます」
「いらっしゃいませ!!」
サナトリウム文学のヒロインや着物の似合う長逗留中の文豪が出てきても驚かないような隠れ家宿の前で10人を出迎えるのは黒ぶちメガネに着物姿の女将・情嘉と中居一同である。
「これより皆様をお部屋にご案内いたしますのでどうぞ……」
女将と中居一同は一行を宿屋内に案内する。
それからしばらくして……男湯。
「おお、これが日本の露天風呂……はじめてですよ!!」
「ひゃっほうう!! 温泉なんて久しぶりだぜ!!」
戦前から今に続く情嘉屋名物の露天風呂を前に大興奮の鳥魔魔界刑事&死神族の割木鎌雄。
「魔界刑事さん!! 死神さん!! まずは軽くお湯をかけてから入らないと」
すぐにでも飛び込みそうな2人を前に尻尾&耳を隠して長い銀髪をヘアゴムで縛ったギンコさんはアランと茶摘と共に手桶で体にお湯をかけつつ注意する。
「そんなに気にしなくてもいいですよ、皆さん!! どうぞお入りください!!」
後から来た賑やかな5人に声をかけるのは小学生ぐらいの男の子と共にゆっくりとお湯を楽しむ男性だ。
「あっ、はじめまして……もしかして運転手さんが仰っていた家族旅行のお客様ですか?」 「ははは、そうですね。私、会社員の九郎大志(くろうおおし)です。
この子は息子の九郎妙雄(くろうたえお)、小学5年生です……ほら、お兄さん達にあいさつしなさい」
「はじめまして……」
お風呂に浮かべていたアヒル隊長をそっと隠しつつ立ち上がった少年は5人に頭を下げる。
「なるほど、知り合いの知り合いの紹介でここを見つけて東京からいらしたんですか……いい隠れ家宿を共有できて私も嬉しいです!!」
温泉にゆったりとつかりつつ各々の自己紹介を終え、必然的にどこでこんな山奥の超マィナー温泉宿を見つけてわざわざ来たのかと言う話題になった2人と5人。
あとから来た5人が約1名を除いて異世界から来た魔界人と神様であるとはつゆにもおもわない九郎パパさんは納得の表情と共に領く。
「九郎さんはどこでここをお知りになったんですか?」
「ええ、私は10年ぐらいまえに職場の社員旅行でここに来まして……とある事件を経て今の妻と職場結婚したんです」
「おお……」
息子がいる時点で既婚者なのは分かっていたが、まさかののろけ話展開に思わず感嘆の声を上げる魔界人達。
「父さん、またその話? 僕もう聞き飽きたよ」
愛用のアヒル隊長が露天風呂をプカプカ泳ぐ様を鳥魔兄ちゃんと共に眺めていた妙雄少年はうんざりな表情を浮かべる。
「まあまあ、そう言わずにアヒル隊長共々聞いとけ。いつかお前に彼女が出来て同じような緊急事態に巻き込まれた時に役立つかもしれんぞ?」
九郎パパはワクワクテカテカな期待の眼を向ける魔界人達の前でゆっくりと話し始める。
一方、竹垣で隔てられた男湯隣の露天風呂。
「うふふ、大志さんったらまたあの話をしてるのね 」
女湯で娘と共に日々の疲れを癒していた会社員女性にして一男一女の母である九郎奈子(くろうなこ)は男湯から聞こえる会話に耳を傾けつつ微笑む。
「どうしましたの、奈子さん?」
そんな彼女に話しかけるのはインド人と日本人のハーフだと言う金髪褐色肌のピチピチ天然黒ギャルのキアラだ。
「ええ、先ほど話しました職場結婚した夫なんですけど……多分向こうでいつもの話をしているんだなって」
(あれが本物の大人のお姉さん……ママなんて比較にならないぐらいすごいなあ)
いつもなら『ママまた、その話? もうシオリ聞き飽きたわ!!』 と突っ込むマンネリ展開なのだが、キアラちゃんとミキお姉さまのご立派すぎる美デカメロン4玉がお湯に浮く様に眼が釘付けの九郎詩織(くろうしおり)、 小学3年生は突っ込むタイミングを完全に逃す。
「いまから10年前ぐらい、私がまだ20代だったころなんですけど……」
奈子ママは娘が黙っているのをいいことにここでかつてあったかもしれない不思議な夢物語を話しはじめる。
【後編につづく】
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