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第三章:『闇乃宮弐ノ闘戯場/水獣アオネコ』
【第10話】
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「エミ、どうした……!! タケル!! やめろ、やめるんだ!!」
眼下の円盤上で雄叫びを上げながら無抵抗の敵に岩頭突きしまくるタケルとそれを遠巻きに見る事しか出来ない須田丸とカゼノミヤ。
敵が敵だとは言え野獣のような無茶苦茶をするばかりのタケルに父にして偉大なるもののふの声は届かない。
「須田丸君!! どうすればいいんだ?」
「しらねぇよ、ゴブガミ!!」
タケルが一足飛びで首刈りに来た超スピードタイプの敵の動きを封じたのはさておき、このまま双方共に大ダメージを受ける自滅攻撃を続けさせるわけにはいかない。
だがマヨイガエレメント使いとしてフレンドリーファイアが適用されるとはいえ、自分達の強力過ぎるエレメント物理攻撃で敵とタケルを引き剥がそうものなら彼も大ダメージを受ける事は明らか。
須田丸とゴブガミはどうにか平和的に2人を引き剥がす方法が無いか模索する。
『ボウヤ……気は済んだかニャ?』
「なにっ!?」
力任せな岩頭突きをノーガードで何十発も食らったにもかかわらず、無傷の顔を上げて余裕の笑みを浮かべるアオネコ。
『スプラッシュボム!!』
「うわっ!!」
敵が口から吹き付けてきたシャボン玉の破裂音にタケルは思わず耳を塞ぐ。
「タケルくん!!」
「しっかりしろ!!」
何が起こったのかはわからないが、日の前で破裂シャボン玉を食らって敵を逃したタケルに2人は駆け寄る。
『安心するニャ……それはただの音がうるさいシャボン玉。死ぬほどのもじゃないニャ』
サポートスキルでタケルを回復しようとする須田丸達の背後に距離を取って立つアオネコ。
「なるほど、あれだけの物理攻撃を食らって無傷とは……何かあるね、キミ」
その間に立ったゴブガミは大戦扇を広げて2人の目隠し兼盾にしつつ対峙する。
『ええまあ色々ありましてニャ……それよリキミの神技は見せてくれんのかニャ?』
「ふぶっ、セクシーグラマーなケモ娘さんのヒミツと交換ならいいよ?」
あの感触だと神技発動の詠唱に欠かせない九字切りよりも早く敵は斬りかかれる。
タケルはとっさに発動させたオリジナル感知系マヨイガエレメント技『ヒートセンス』で受け流して反撃に繋げることが出来たが戦況と武器を鑑みて自分は100%ではない事を分かっているゴブガミは敵の挑発を瓢々と受け流す。
『嬉しい事言ってくれる伊達男だにゃ!! ああん、こんな素敵なオトコさんと愛の巣であんなことやこんなことなんて……ゾクゾクしちゃうにゃぁん』
ゴブガミのイケメンっぷりと付随する妄想のあまり大興奮し、鼻血ブーのまま舌を出してハァハァしながら腰をくねらせるアオネコ。
『マヨイガ神技:昇風牢(しょうふうろう)!!』
『うにゃっ!?』
突如突き上げるような上昇気流に襲われる第二闘戯場内。
ゴブガミが既に九字切り含めた神技の発動準備を整えていてタイミングを待っていた事にようやく気が付いたアオネコはそのまま上空に吹き上げられる。
『おっ、降りられないにゃ! !』
ゴブガミが風の力で作り出した細いコップをひっくり返したような形の下降気流と突き上げる上昇気流の渦巻で密閉された空間に閉じ込められ、中空状態からなすすべもないアオネコ。
「タケル君に須田丸君!!」
「はいっ!!」
ヘヴィ級タンクもののふの須田丸に大技専門の武神ゴブガミ、そしてその動きを見切れるものの与ダメージ手段に欠ける若きタケル。
決して3人が弱いというわけでは無いのだが、全員にとって相性最悪のスピード特化型の敵の動きを止め捕えた今がチャンス。
父や母、3人の大先輩様達が得意とした『相手の動きを止めて大技で仕留める』連携戦法を察して背中の槍を抜いたタケルはすぐさま第二闘戯場に踊り出る。
『パワード!!』『エレメントプラス・クインテット!!』
タケルのオリジナル技で水以外のマヨイガエレメントプラスを同時付与された槍の穂先は付着した石で尖りつつ大型化し、それを覆うように火と雷を帯びた旋風が巻き付く。
『ロングドウエポン!!』
頭上高所の敵に向けて構えられたそれが長柄武器専用サポートスキルをかけられた瞬間、タケルの背丈と同じぐらいだったそれは一気に高跳び棒サイズまで伸大化。
『あついたビリビリやめてぇえぇ!!』
風の中の羽のようにくるくる横回転させられるアオネコは全身をランダムに襲う穂先の熱雷旋風乱れ突きに悲鳴を上げる。
「お兄ちゃんすごい、やるぅ!!」
「須田丸君!! あんたも後輩に負けちゃいかん!! ええとこ見せるんや!!」
「わかってるよ姉ちゃん!! シルバーデストロイメイル、 トランスフォーム!!」
須田丸の全身を覆う堅牢な愛鎧・シルバーデストロイメイルは詠唱を受けて溶解し、一時的に須田丸の体を離れて水銀液球化。
「合体ぃぃぃ!!」
「ええっ!?」
男の浪漫そのものな蓑田おじさんの詠唱。
そう言うのが恥ずかしい男の子なお年頃故に父母や妹にばれないようにニチアサ戦隊モノやロボットアニメをこっそり見ているタケルはその激熱鉄板展開に思わず注視する。
【第11話に続く】
眼下の円盤上で雄叫びを上げながら無抵抗の敵に岩頭突きしまくるタケルとそれを遠巻きに見る事しか出来ない須田丸とカゼノミヤ。
敵が敵だとは言え野獣のような無茶苦茶をするばかりのタケルに父にして偉大なるもののふの声は届かない。
「須田丸君!! どうすればいいんだ?」
「しらねぇよ、ゴブガミ!!」
タケルが一足飛びで首刈りに来た超スピードタイプの敵の動きを封じたのはさておき、このまま双方共に大ダメージを受ける自滅攻撃を続けさせるわけにはいかない。
だがマヨイガエレメント使いとしてフレンドリーファイアが適用されるとはいえ、自分達の強力過ぎるエレメント物理攻撃で敵とタケルを引き剥がそうものなら彼も大ダメージを受ける事は明らか。
須田丸とゴブガミはどうにか平和的に2人を引き剥がす方法が無いか模索する。
『ボウヤ……気は済んだかニャ?』
「なにっ!?」
力任せな岩頭突きをノーガードで何十発も食らったにもかかわらず、無傷の顔を上げて余裕の笑みを浮かべるアオネコ。
『スプラッシュボム!!』
「うわっ!!」
敵が口から吹き付けてきたシャボン玉の破裂音にタケルは思わず耳を塞ぐ。
「タケルくん!!」
「しっかりしろ!!」
何が起こったのかはわからないが、日の前で破裂シャボン玉を食らって敵を逃したタケルに2人は駆け寄る。
『安心するニャ……それはただの音がうるさいシャボン玉。死ぬほどのもじゃないニャ』
サポートスキルでタケルを回復しようとする須田丸達の背後に距離を取って立つアオネコ。
「なるほど、あれだけの物理攻撃を食らって無傷とは……何かあるね、キミ」
その間に立ったゴブガミは大戦扇を広げて2人の目隠し兼盾にしつつ対峙する。
『ええまあ色々ありましてニャ……それよリキミの神技は見せてくれんのかニャ?』
「ふぶっ、セクシーグラマーなケモ娘さんのヒミツと交換ならいいよ?」
あの感触だと神技発動の詠唱に欠かせない九字切りよりも早く敵は斬りかかれる。
タケルはとっさに発動させたオリジナル感知系マヨイガエレメント技『ヒートセンス』で受け流して反撃に繋げることが出来たが戦況と武器を鑑みて自分は100%ではない事を分かっているゴブガミは敵の挑発を瓢々と受け流す。
『嬉しい事言ってくれる伊達男だにゃ!! ああん、こんな素敵なオトコさんと愛の巣であんなことやこんなことなんて……ゾクゾクしちゃうにゃぁん』
ゴブガミのイケメンっぷりと付随する妄想のあまり大興奮し、鼻血ブーのまま舌を出してハァハァしながら腰をくねらせるアオネコ。
『マヨイガ神技:昇風牢(しょうふうろう)!!』
『うにゃっ!?』
突如突き上げるような上昇気流に襲われる第二闘戯場内。
ゴブガミが既に九字切り含めた神技の発動準備を整えていてタイミングを待っていた事にようやく気が付いたアオネコはそのまま上空に吹き上げられる。
『おっ、降りられないにゃ! !』
ゴブガミが風の力で作り出した細いコップをひっくり返したような形の下降気流と突き上げる上昇気流の渦巻で密閉された空間に閉じ込められ、中空状態からなすすべもないアオネコ。
「タケル君に須田丸君!!」
「はいっ!!」
ヘヴィ級タンクもののふの須田丸に大技専門の武神ゴブガミ、そしてその動きを見切れるものの与ダメージ手段に欠ける若きタケル。
決して3人が弱いというわけでは無いのだが、全員にとって相性最悪のスピード特化型の敵の動きを止め捕えた今がチャンス。
父や母、3人の大先輩様達が得意とした『相手の動きを止めて大技で仕留める』連携戦法を察して背中の槍を抜いたタケルはすぐさま第二闘戯場に踊り出る。
『パワード!!』『エレメントプラス・クインテット!!』
タケルのオリジナル技で水以外のマヨイガエレメントプラスを同時付与された槍の穂先は付着した石で尖りつつ大型化し、それを覆うように火と雷を帯びた旋風が巻き付く。
『ロングドウエポン!!』
頭上高所の敵に向けて構えられたそれが長柄武器専用サポートスキルをかけられた瞬間、タケルの背丈と同じぐらいだったそれは一気に高跳び棒サイズまで伸大化。
『あついたビリビリやめてぇえぇ!!』
風の中の羽のようにくるくる横回転させられるアオネコは全身をランダムに襲う穂先の熱雷旋風乱れ突きに悲鳴を上げる。
「お兄ちゃんすごい、やるぅ!!」
「須田丸君!! あんたも後輩に負けちゃいかん!! ええとこ見せるんや!!」
「わかってるよ姉ちゃん!! シルバーデストロイメイル、 トランスフォーム!!」
須田丸の全身を覆う堅牢な愛鎧・シルバーデストロイメイルは詠唱を受けて溶解し、一時的に須田丸の体を離れて水銀液球化。
「合体ぃぃぃ!!」
「ええっ!?」
男の浪漫そのものな蓑田おじさんの詠唱。
そう言うのが恥ずかしい男の子なお年頃故に父母や妹にばれないようにニチアサ戦隊モノやロボットアニメをこっそり見ているタケルはその激熱鉄板展開に思わず注視する。
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