池尻産婦人科

ユヅキ

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九話

二つの命

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亜矢の元に一人の患者が診察に来た。

『えっ••!双子ですか?』『エコー検査で二卵性と判明しました。私もびっくりで•••!』彼女自身も初めての事だった。患者は早田恵子。
31歳で待望の妊娠が判明。『初めての子供が双子••嬉しい••!』もともと子供が好きだった彼女にとって自分に子供ができたことは夢の様だった。
この日の帰り際、夫にメールを送った。
『ついに•••出来たみたい••!』その事を知った悟は喜びを隠しきれずにいた。『ついにやったなぁ••良かった••良かった••!』喜びの一方、ある心配が見えてきた。翌月の検診の時だった。『双子の妊娠•出産はとてもリスクが大きいです。多胎児の六割弱が早産児、七割強が低体重児です。』恵子の目の前に『リスク』という大きな壁が立ちはだかった。『あの••双子のどちらかが亡くなってしまうこともあるんでしょうか••』『その可能性も低くはありません。』『出産方法は?』『基本的には帝王切開が多いですが、うまく条件が合えば自然分娩も可能性です。』さらに心配が大きくなった。双子の母親に
なる責任感。
命を守れるのか••
この大きな壁を乗り越えられるのか••
家に帰ると恵子はある本を取り出した。
それは双子のママになる為の専門雑誌だった。
『自分って、本当にこんなママになれるのかな?』
『どうしたんだ?』
心配した悟が声をかけた。
『私本当になれるのかな••立派なママに••』
『なれるよ。いつ目明るく乗り越えている恵子なら元気で優しいお母さんになれるさ!』
『本当••?』
『うん!先生達を信じてみないか?』
『そうだよね。
暗く考えたらダメだよね••!』

月日が経つにつれお腹もドンドン大きくなり、赤ちゃんも順調に育っていった。
『二人とも元気で
今の所何も異常は見られませんでした。』
『良かった.赤ちゃんも元気に育っているんですね。私、だんだん母親として自信が持てる様になりました。』
恵子の顔は徐々に不安から明るい顔に変わっていった。
予定日まで残り四日。恵子は一足早く入院することに。

いよいよその日が来た。
陣痛が始まり分娩室に移った恵子と悟。双子は通常に比べ陣痛が2回来る。その為相当な体力が消耗される。
『恵子••頑張れ••!』痛みに耐える彼女の顔をタオルで拭いた。その瞬間が来た。
『よし、もう少しだ!』
『もうすぐ一人目が生まれます。保育器用意してください。』『はい!』数分後••
一人目の産声が部屋中に響き渡った。
『一人目生まれました!』恵子が安心したのも束の間。もう一人の出産と向き合っていた。
『二人目もうすぐ生まれるぞ。』『早田さん、もう一息です!』そしてついに••
二人目の産声が響いた。『生まれた••私の赤ちゃん••!』恵子の目から涙が溢れた。
生まれたのは女の子と男の子。
母子共に健康だ。
『はーい。
おめでとうございまーす。』
赤ちゃん達が恵子の元へ来た。
『やっと私の夢が叶った••ママになれたんだ••』
悟は彼女の頭を優しく撫でた。
『恵子。僕のために頑張ってくれてありがとう••!』『僕もパパになれて嬉しいよ••!』
『いやぁ、双子の出産なんて当院では初めてです。誇りを持って育ててくださいね。』
『ありがとうございます。』

双子が生まれる瞬間••二つの命が一丸となって生まれてくる瞬間。亜矢達はそんな仕事を誇りに持っていた。
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